彼が恋した華の名は:3

亜衣藍

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後日談

Eternal-25

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 そんな聖を前に、史郎は思わず声に出して笑っていた。

「ハハハハ、本音が出たな」

「――そもそもオレは、野郎とスルのはそんなに好きじゃない」

 不機嫌そうに言う聖に、史郎は同意するように頷き返した。

「ああそうだな。オレも、野郎なんざ冗談じゃねーよ。ベッドの相手にするなら、もちろん女がいい」

『それなら、どうしてオレを欲しがる』

 そう言い掛けた聖であるが、瞳に深い色を浮かべて自分を見下ろしている史郎に気付き、時が止まったように動きを止めた。

 奇妙な静寂のなかで、史郎は本心を告げる。

「……お前は、別格だ。付いているモンは確かにオレと同じはずなのに、何もかもが全然違う」

「――そんな事は……」

「謙遜は無意味だぞ。お前は、誰よりも綺麗だ。野郎のクセに、傾国の美女なんて二つ名がまかり通るのも頷ける」

 通常ならばクサイ台詞も、スラスラと口から出て来る。

 史郎が知る全ての賛美を総動員しても足りない程に、この男は本当に美しいから。

 その聖から、カタギになるのを理由に別れを告げられた時は、漢らしく潔く受け入れようと思った史郎だ。

 散々苦しめて泣かせた自覚があるだけに、一度は本気で、聖を諦めようと心に誓った。

 手練手管に長けた玄人から人妻、素人まで、あらゆる女を抱いて聖を忘れようと思った。

――――だが、どんなに努力しても、聖を忘れる事など不可能で。

「……お前の事を考えると、いつでも、出会った瞬間に戻っちまう。何処の誰の目にも触れさせたくなくて、自分だけのモノにしようと力づくで攫おうとした、あの頃に」

 僅かな沈黙のあと、聖は答えを返した。

「あんたとオレは違う」

「……」

「今のオレには、守らなければならないものが増えた。あんたの執心は――迷惑だ」

 しかし、史郎が何処かで見守っている事を確信して、悪党の待ち構えている根城へと乗り込んだのも事実だ。
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