MAN OF THE FULL BLOOM

最終章

最終章-4

　自分は日陰の方が居心地がいいのだと、そう言った時の聖の顔は、今でも覚えている。
　スポットライト浴びて輝いている息子ユウを見ている方が幸せなんだと。

　晁生は、勿論美しい容姿をした聖が好きだが、聖のそんな純粋で無垢な優しさこそが一番好きだった。

「……なぁ、聖」
「ん？」
「日本へ着いたら、一度抱かせてくれないか」
「唐突だな。直ぐに会社へ行くんじゃなかったのか？」

　呆れたように言う聖に、晁生は苦笑いを返す。

「だって、クイーンダイヤモンドではPV用のセックスをしただけだったし。君だって、あんなものお遊戯では消化不良だろ？」
「AV男優の真似事に徹して、不満なのはお前の方だろう」

　聖の揶揄に、晁生はあっさりと頷いた。

「そりゃあね。撮影用の芝居を演じたようなもんだったからね。それは君だって、同じだろう？」
「……オレは、船で顎を使い過ぎて疲れてんだが」

　そう言いながら、白い指を唇に当ててペロっと舌を出す聖は、異様にエロティックだ。

　船室に軟禁されていた筈の聖が、あっさり脱出できた方法が何なのか、深く考えなくてもそれだけで解ってしまう。

　クイーンダイヤモンドから下船する時に、やたらと大仰に嘆き悲しみながら再会を念押ししていた三人組の若い船員達を思い出し、晁生はまた苦笑いを浮かべる。

「そんなに、若い男がお好みかい？」
「時と場合による」

　即答する聖に、晁生は降参だと溜め息をついた。

「全く君には、ボク如きでは一生釣り合いそうもないよ」

　嘆き節を漏らす晁生を横目にしながら、聖は妖艶に微笑んだ。

「そんなの、当たり前だろう」

　　　END