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「――――その、本当に……ゴメンなさい…………」
「オレが! どうして浮気をしたって思ったんだよ!? 」
頬を紅潮させて、怒りの声を上げるユウである。
これには当然、訳がある。
そう、ナモ・コレで異変があるらしいと、碇から知らされたユウは、急いでバックステージに向かった。
しかし何と、その後ろを二人の男達が追いかけて来て――――あろう事か、背後からユウを羽交い絞めにしてきたのである!
驚き、一瞬動きが固まったユウであったが……次に、猛然と抵抗した。
しかし驚き過ぎて、声の方は全く出ない。
バックステージ前の通路。その薄暗い中、ジタバタと無言で暴れるユウであるが、二人の男達は互いに競うように抱き付いてきて、
「ああ、間違いない! この抱き心地――忘れるものか! 」
「何と芳しい。君を再びこの手に抱けるなら、私はここで死んでも構わない!! 」
何だか、最初からハイテンションで盛り上がる二人に抱えられ揉みくちゃにされ、ユウは目が回りそうになった。
(な、なんだ!? こいつら何者だ!? )
「君を諦められるワケがない! やはり私は君を愛しているんだ! 」
「僕の方が、君をずっと愛している! 世界中の誰よりも愛している!! 今こそ言おう! 僕と――――」
「「結婚してくれ」」
二人の男達は、二人揃っていきなりそう告白してきた。
ただもう、ユウはパニックになるばかりだ。
全然知らない外人に抱き付かれ、結婚してくれと言われるなんて青天霹靂もいいところだろう。
「お、オレは――」
しかし、忘れかけていたPTSDの症状が表面化してきそうで、怖くて息が止まる。
こんな所で恐慌状態に陥って卒倒でもしたら、絶対に零にも迷惑が掛かる。
「……は、離せっ」
ユウは何とか意識を保ち、再び抵抗を開始する。
しかしそれは、盛り上がるだけ盛り上がって、完全に自分に酔っている二人の男には通じない。
ユウの抵抗で益々火が付いたのか、余計にギュッと抱き付いて来る。
「は――離せって! 」
ジタバタしていたら、恋人の危機に第六感でも働いたが、零がひょっこりとバックステージから顔を出した。
そして、零の目は驚愕に見開かれる。
なんと、恋人である筈のユウが、薄暗い通路上で、二人の外人とベタベタと抱き合っているではないか!?
(――――ユウさんが浮気しているっ!? )
一瞬で頭に血が上った零は、拳を振り上げて突進し、その二人をぶっ飛ばした。
周囲にはSPやスタッフもいたようだが、何せ暗いし通路は狭いしで、この零の行動を止められるものは誰もいなかった。
しかし、兎にも角にもユウにとっては、自分の危機を救ってくれた頼もしいナイトだ。
感動と感謝で目を潤ませるユウであったが、そのユウに向かい、零は滂沱の涙を流しながら言ってしまったのである。
「ヒドイじゃないですか! オレという者がありながら、なんで浮気なんてするんです!? 」
「はぁ!! 」
ユウは、思いもしなかったこのセリフに、素っ頓狂な声を上げた。
その直後に、たった今座っていた会場の方向から、目を焼くような閃光と爆竹のような音。
そして、物凄い煙が一気に上がり…………時間を置き、今に至る。
警察の発表では、ナモ・コレの騒ぎは、どうやら不満分子の起こしたテロ未遂事件らしい。
テレビでは、サイエンという偉そうな男が、さっきから何度も王子と侯爵の不手際を糾弾している姿が映っている。
ユウに抱き付いていた外人二人が、その王子と侯爵だと知らされた時は青くなってしまった。零は、彼等をぶっ飛ばしたのだから。
しかし今は、こっちが大変だ。
「オレが! どうして浮気をしたって思ったんだよ!? 」
頬を紅潮させて、怒りの声を上げるユウである。
これには当然、訳がある。
そう、ナモ・コレで異変があるらしいと、碇から知らされたユウは、急いでバックステージに向かった。
しかし何と、その後ろを二人の男達が追いかけて来て――――あろう事か、背後からユウを羽交い絞めにしてきたのである!
驚き、一瞬動きが固まったユウであったが……次に、猛然と抵抗した。
しかし驚き過ぎて、声の方は全く出ない。
バックステージ前の通路。その薄暗い中、ジタバタと無言で暴れるユウであるが、二人の男達は互いに競うように抱き付いてきて、
「ああ、間違いない! この抱き心地――忘れるものか! 」
「何と芳しい。君を再びこの手に抱けるなら、私はここで死んでも構わない!! 」
何だか、最初からハイテンションで盛り上がる二人に抱えられ揉みくちゃにされ、ユウは目が回りそうになった。
(な、なんだ!? こいつら何者だ!? )
「君を諦められるワケがない! やはり私は君を愛しているんだ! 」
「僕の方が、君をずっと愛している! 世界中の誰よりも愛している!! 今こそ言おう! 僕と――――」
「「結婚してくれ」」
二人の男達は、二人揃っていきなりそう告白してきた。
ただもう、ユウはパニックになるばかりだ。
全然知らない外人に抱き付かれ、結婚してくれと言われるなんて青天霹靂もいいところだろう。
「お、オレは――」
しかし、忘れかけていたPTSDの症状が表面化してきそうで、怖くて息が止まる。
こんな所で恐慌状態に陥って卒倒でもしたら、絶対に零にも迷惑が掛かる。
「……は、離せっ」
ユウは何とか意識を保ち、再び抵抗を開始する。
しかしそれは、盛り上がるだけ盛り上がって、完全に自分に酔っている二人の男には通じない。
ユウの抵抗で益々火が付いたのか、余計にギュッと抱き付いて来る。
「は――離せって! 」
ジタバタしていたら、恋人の危機に第六感でも働いたが、零がひょっこりとバックステージから顔を出した。
そして、零の目は驚愕に見開かれる。
なんと、恋人である筈のユウが、薄暗い通路上で、二人の外人とベタベタと抱き合っているではないか!?
(――――ユウさんが浮気しているっ!? )
一瞬で頭に血が上った零は、拳を振り上げて突進し、その二人をぶっ飛ばした。
周囲にはSPやスタッフもいたようだが、何せ暗いし通路は狭いしで、この零の行動を止められるものは誰もいなかった。
しかし、兎にも角にもユウにとっては、自分の危機を救ってくれた頼もしいナイトだ。
感動と感謝で目を潤ませるユウであったが、そのユウに向かい、零は滂沱の涙を流しながら言ってしまったのである。
「ヒドイじゃないですか! オレという者がありながら、なんで浮気なんてするんです!? 」
「はぁ!! 」
ユウは、思いもしなかったこのセリフに、素っ頓狂な声を上げた。
その直後に、たった今座っていた会場の方向から、目を焼くような閃光と爆竹のような音。
そして、物凄い煙が一気に上がり…………時間を置き、今に至る。
警察の発表では、ナモ・コレの騒ぎは、どうやら不満分子の起こしたテロ未遂事件らしい。
テレビでは、サイエンという偉そうな男が、さっきから何度も王子と侯爵の不手際を糾弾している姿が映っている。
ユウに抱き付いていた外人二人が、その王子と侯爵だと知らされた時は青くなってしまった。零は、彼等をぶっ飛ばしたのだから。
しかし今は、こっちが大変だ。
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