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第2章 ダンジョン攻略編
第22話 七つの美徳
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「……美徳因子を、私が“食べれば”殺さないで済む」
静かに、だが確信を持った声でそう告げた私に、目の前の少女───《純潔》の美徳を冠するマリサ・クラーネットは目を細めて言った。
「そんなことは不可能です。美徳因子は───選ばれし者にしか扱えません」
その声は静かだったが、自信と誇りに満ちていた。自分こそが選ばれし者だと信じて疑わない者の声。
「不可能かどうかは、やってみないと分からないでしょ」
私は一歩踏み出す。背に剣はなく、構えるのは己の内に宿る力。
「スキル《大罪》暴食・"因食"」
地面が軋む。空間が捩れる。
スキルが発動した瞬間、世界の色が淡く、黒く滲んだ。
「なっ……なんだその力は……!」
マリサの顔に、初めて恐怖が浮かんだ。
「さては、あなた……“賢人候補”か!?」
「なによそれ。また知らない言葉が出てきたわね……」
“美徳”、“原初候補”……意味のわからない単語が次々と押し寄せ、頭が混乱しそうになる。だが、今は迷っている時間などない。
私はマリサへと手を伸ばす───
「あなたの因子、いただきます」
叫ぶようにして、因子を引き剥がす。
その瞬間、眩い光とともにマリサの身体から、白く輝く粒子が溢れ出した。
「くっ……この私が、こんなあっさり……」
意識を失い、膝から崩れ落ちるマリサ。
彼女の“因子”は、完全に私の中へと取り込まれていた。
* * *
「サティさん、終わったんですか?」
ティナの不安げな声が耳に届く。
「えぇ……もう少しで、目を覚ますはずよ。死んではいないわ」
「そうですか……良かったです」
私はマリサをそっと背負い、仲間たちと共にダンジョンの奥から地上へと戻る。
* * *
ギルドに戻った私たちは、探索と討伐の報告を済ませた後、町内のレストランへと足を運んだ。長い戦いのあとの、束の間の安らぎ。4人での食事は、どこか温かく、心地良い時間だった。
その最中───ティナが切り出した。
「サティさん。私たちで、正式にパーティを組みませんか?」
エミリも、ユリアも、真剣な顔でこちらを見ている。
私は少し考え、微笑みながら首を振った。
「誘ってくれるのは嬉しいけど……最近、ちょっと忙しくてね。今は難しいかな」
今日のマリサは“七つの美徳”の一柱だと言っていた。
ということは、少なくとも、あと六柱がこの世界にいる。
彼女たちにこれ以上、命のやりとりに巻き込みたくない。
「……分かりました。じゃあ、もっと成長してから改めて勧誘しますね」
「うん。楽しみにしてるよ」
その夜、私たちは笑顔で食事を終え、それぞれの帰路についた。
外の空気は、少し肌寒くて、どこか現実を突きつけてくるようだった。
だが───
私の中には、確かに“力”が宿っていた。
《大罪》と《美徳》、交わってはならぬ二つの存在。
その渦中に、私は今、立っている。
静かに、だが確信を持った声でそう告げた私に、目の前の少女───《純潔》の美徳を冠するマリサ・クラーネットは目を細めて言った。
「そんなことは不可能です。美徳因子は───選ばれし者にしか扱えません」
その声は静かだったが、自信と誇りに満ちていた。自分こそが選ばれし者だと信じて疑わない者の声。
「不可能かどうかは、やってみないと分からないでしょ」
私は一歩踏み出す。背に剣はなく、構えるのは己の内に宿る力。
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地面が軋む。空間が捩れる。
スキルが発動した瞬間、世界の色が淡く、黒く滲んだ。
「なっ……なんだその力は……!」
マリサの顔に、初めて恐怖が浮かんだ。
「さては、あなた……“賢人候補”か!?」
「なによそれ。また知らない言葉が出てきたわね……」
“美徳”、“原初候補”……意味のわからない単語が次々と押し寄せ、頭が混乱しそうになる。だが、今は迷っている時間などない。
私はマリサへと手を伸ばす───
「あなたの因子、いただきます」
叫ぶようにして、因子を引き剥がす。
その瞬間、眩い光とともにマリサの身体から、白く輝く粒子が溢れ出した。
「くっ……この私が、こんなあっさり……」
意識を失い、膝から崩れ落ちるマリサ。
彼女の“因子”は、完全に私の中へと取り込まれていた。
* * *
「サティさん、終わったんですか?」
ティナの不安げな声が耳に届く。
「えぇ……もう少しで、目を覚ますはずよ。死んではいないわ」
「そうですか……良かったです」
私はマリサをそっと背負い、仲間たちと共にダンジョンの奥から地上へと戻る。
* * *
ギルドに戻った私たちは、探索と討伐の報告を済ませた後、町内のレストランへと足を運んだ。長い戦いのあとの、束の間の安らぎ。4人での食事は、どこか温かく、心地良い時間だった。
その最中───ティナが切り出した。
「サティさん。私たちで、正式にパーティを組みませんか?」
エミリも、ユリアも、真剣な顔でこちらを見ている。
私は少し考え、微笑みながら首を振った。
「誘ってくれるのは嬉しいけど……最近、ちょっと忙しくてね。今は難しいかな」
今日のマリサは“七つの美徳”の一柱だと言っていた。
ということは、少なくとも、あと六柱がこの世界にいる。
彼女たちにこれ以上、命のやりとりに巻き込みたくない。
「……分かりました。じゃあ、もっと成長してから改めて勧誘しますね」
「うん。楽しみにしてるよ」
その夜、私たちは笑顔で食事を終え、それぞれの帰路についた。
外の空気は、少し肌寒くて、どこか現実を突きつけてくるようだった。
だが───
私の中には、確かに“力”が宿っていた。
《大罪》と《美徳》、交わってはならぬ二つの存在。
その渦中に、私は今、立っている。
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