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第4話 放課後ラーメン探訪
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放課後、校門を出たところで遠野が突然立ち止まった。
私はそのまま歩き続けようとしたが後ろから聞こえた勢いのある声に足を止める。
「田所さん! 今日はラーメン食べに行こう!」
「ラーメン?」
「そう、ラーメン! 昨日有名なユートゥーバーが学校の近くのお店が紹介してたんだ! もうお腹ペコペコで死にそう!」
いつものことながら彼女には呆れてばかりだ。
「昼にあんなに食べてたのに?」
「いやいや、あれは別腹ってやつ!」
私は一瞬、彼女の胃袋の構造が気になったが深く考えても無駄だろう。
遠野はそういう生き物なのだ。
「で、どこにあるの?」
「駅前の商店街の奥の方!」
地図もなにも見ずに断言する遠野に一抹の不安を感じつつも私は彼女に引っ張られるように歩き出した。
商店街を抜けた先の小さな路地にその店はあった。
暖簾がかかった昔ながらの雰囲気でラーメンの香りがすでに漂っている。
カウンター席しかない狭い店内だが遠野はそんなこと気にも留めず、勢いよく暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!」という威勢のいい声が店内に響く。
私たちはカウンターの端に並んで腰を下ろした。
「醤油ラーメンにしようかな~、でも塩もいいし……悩む!」
「そんなに悩むなら全部頼めば?」
「さすがにそれは無理だよ!」
笑いながら、結局遠野は味噌ラーメンを選んだ。
私もメニューをざっと眺める。
「田所さんは?」
「塩ラーメンでいいかな」
私たちは口頭でラーメンを頼んで水を一口飲む。
遠野は店内の壁に貼られたメニューを興味深そうに眺めている。
「こういう店ってさ……唐揚げとか餃子とかサイドメニューもおいしそうだよねぇ」
「いやラーメン一杯で十分でしょ」
「え~、それじゃ物足りない!」
案の定、遠野は餃子まで追加注文した。
隣で楽しそうにしている姿に思わず肩をすくめる。
やれやれ、こうなると思っていたけど。
しばらくして、湯気が立ち上る丼が目の前に運ばれてきた。
透明なスープにネギが散らされた塩ラーメンは見た目からしてあっさりしていて食欲をそそる。
遠野の味噌ラーメンは対照的に濃厚な香りを漂わせていた。
「いただきまーす!」
遠野はさっそく麺をズルズルと啜り始めた。
その勢いの良さに店主も思わず微笑んでいる。
私はレンゲでスープをすくい、一口飲んだ。
あっさりとしながらも深みのある味わいで、麺にちょうどいい塩加減だ。
「うん……おいしい」
「でしょ! こういうお店って外れないよね!」
遠野はすでに半分くらい食べ終えている。
餃子まで平行して手をつけているのに、その食べっぷりは見ていて気持ちがいいほどだ。
「田所さん、もっとテンション上げて食べなよー!」
「私には無理」
「なんでー?」
「遠野みたいに毎回全力で食べてたらすぐにお腹壊すから」
「えぇー、私は全力じゃないと食べた気がしないんだよね!」
そんな会話を交わしながらも私はマイペースに麺を啜る。
遠野が餃子を口に放り込んでいるのを見ていると少しだけその勢いに引っ張られそうになるが、私は最後まで自分のペースを崩さなかった。
「ありゃりゃしたーッ!」
食べ終わって店を出るころには外は薄暗くなっていた。
遠野はお腹をさすりながら満足げな顔で私を見上げる。
「いやー、やっぱりラーメンは正義だね!」
「満足した?」
「うん! 田所さんもまた付き合ってね!」
「まぁ、機会があればね」
遠野と一緒にいると、こうやって食べ物に引っ張られることが多い。
でも悪い気はしない。
むしろ、今日もこうして楽しく過ごせたことに少しだけ感謝している自分がいる。
二人で言い合いながら、夜の道を帰っていく。
私はそのまま歩き続けようとしたが後ろから聞こえた勢いのある声に足を止める。
「田所さん! 今日はラーメン食べに行こう!」
「ラーメン?」
「そう、ラーメン! 昨日有名なユートゥーバーが学校の近くのお店が紹介してたんだ! もうお腹ペコペコで死にそう!」
いつものことながら彼女には呆れてばかりだ。
「昼にあんなに食べてたのに?」
「いやいや、あれは別腹ってやつ!」
私は一瞬、彼女の胃袋の構造が気になったが深く考えても無駄だろう。
遠野はそういう生き物なのだ。
「で、どこにあるの?」
「駅前の商店街の奥の方!」
地図もなにも見ずに断言する遠野に一抹の不安を感じつつも私は彼女に引っ張られるように歩き出した。
商店街を抜けた先の小さな路地にその店はあった。
暖簾がかかった昔ながらの雰囲気でラーメンの香りがすでに漂っている。
カウンター席しかない狭い店内だが遠野はそんなこと気にも留めず、勢いよく暖簾をくぐる。
「いらっしゃい!」という威勢のいい声が店内に響く。
私たちはカウンターの端に並んで腰を下ろした。
「醤油ラーメンにしようかな~、でも塩もいいし……悩む!」
「そんなに悩むなら全部頼めば?」
「さすがにそれは無理だよ!」
笑いながら、結局遠野は味噌ラーメンを選んだ。
私もメニューをざっと眺める。
「田所さんは?」
「塩ラーメンでいいかな」
私たちは口頭でラーメンを頼んで水を一口飲む。
遠野は店内の壁に貼られたメニューを興味深そうに眺めている。
「こういう店ってさ……唐揚げとか餃子とかサイドメニューもおいしそうだよねぇ」
「いやラーメン一杯で十分でしょ」
「え~、それじゃ物足りない!」
案の定、遠野は餃子まで追加注文した。
隣で楽しそうにしている姿に思わず肩をすくめる。
やれやれ、こうなると思っていたけど。
しばらくして、湯気が立ち上る丼が目の前に運ばれてきた。
透明なスープにネギが散らされた塩ラーメンは見た目からしてあっさりしていて食欲をそそる。
遠野の味噌ラーメンは対照的に濃厚な香りを漂わせていた。
「いただきまーす!」
遠野はさっそく麺をズルズルと啜り始めた。
その勢いの良さに店主も思わず微笑んでいる。
私はレンゲでスープをすくい、一口飲んだ。
あっさりとしながらも深みのある味わいで、麺にちょうどいい塩加減だ。
「うん……おいしい」
「でしょ! こういうお店って外れないよね!」
遠野はすでに半分くらい食べ終えている。
餃子まで平行して手をつけているのに、その食べっぷりは見ていて気持ちがいいほどだ。
「田所さん、もっとテンション上げて食べなよー!」
「私には無理」
「なんでー?」
「遠野みたいに毎回全力で食べてたらすぐにお腹壊すから」
「えぇー、私は全力じゃないと食べた気がしないんだよね!」
そんな会話を交わしながらも私はマイペースに麺を啜る。
遠野が餃子を口に放り込んでいるのを見ていると少しだけその勢いに引っ張られそうになるが、私は最後まで自分のペースを崩さなかった。
「ありゃりゃしたーッ!」
食べ終わって店を出るころには外は薄暗くなっていた。
遠野はお腹をさすりながら満足げな顔で私を見上げる。
「いやー、やっぱりラーメンは正義だね!」
「満足した?」
「うん! 田所さんもまた付き合ってね!」
「まぁ、機会があればね」
遠野と一緒にいると、こうやって食べ物に引っ張られることが多い。
でも悪い気はしない。
むしろ、今日もこうして楽しく過ごせたことに少しだけ感謝している自分がいる。
二人で言い合いながら、夜の道を帰っていく。
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