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悪徳の栄え
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「殺ったのか。あの小僧を」
第一王子は、褐色の姉妹から暗殺成功の報を受けた。
これで、手の内が暴かれることはないだろう。
悪の令嬢フリージアなら、エリンを放ったのが自分だとどっくに気づいているはず。
ただ、証拠がないのであれば陰謀というものは周囲を説得できないのである。
正確に言えば、証拠がないということは不実に目をつぶってもいい理由になる。
第一王子がフリージアの暗殺を企んだという事実が発覚した場合、ギュスターランド公爵家を敵に回さなければならない理由ができる。
誰もそんな面倒なことなどしたくないのだ。
証拠がなければ、動かなくてもいい口実ができる。これが重要だ。
「はい、殿下。ギルドの裏切り者を仕留めております」
「暗殺者ギルドは思った以上に律儀だな。予が王位を継いだら、ギュスターランド公爵家を解体し、その仕事をギルドに回すと約束する」
暗殺者ギルドは不安定な組織だ。
存在自体が許されるものではなく、権力に睨まれれば吹き飛んでしまう。
しかし、国の後ろ盾ができれば、その基盤じゃ補償される。
第一王子に暗殺者ギルドが協力したのも、それが目的である。
「この国は変わらねばならん。権力は集中するのが鉄則だ。いつまでも頭の硬い貴族共をのさばらせてはおけんからな」
王国は、周辺国に発展度で後れを取りつつある。
疲弊して衰退していく国など、継承する利点はない。
現状を改革するためには、王権を強化する必要があった。
その野望の最大の障害がギュスターランド公爵家である。
「ふたりとも、よくやった。情けをくれてやる。伽の支度を」
端正な王子の顔に、欲の影が浮かんだ。
双子の暗殺者は、王子の性の相手として献上されたもの。
閨の技術も、暗殺には必要であり、王子はこれを確かめて満足している。
「……はい」
するりと衣擦れの音がして、双子は裸となった。
王子は、もう少し早く異変に気づくべきだったのだ。
「お前、男か……!?」
そう、アサーラとアーミナの双子姉妹、そ一方はエリンの変装だった。
しなやかな少年の体格であれば、女に化けるのも難しくない。
素早く駆け出したエリンは、隠し持った短刀を王子の首にある気管の窪みに突き立てた。
ただ一撃、極めて正確な急所に。
こうすることで返り血の心配もなく、切断された内頸静脈からの血は肺に溜まり、溺死する。
王子の瞳孔が開ききるのを確認し、エリンは離れる。
「エリン……」
喜色の笑みを浮かべたアサーラが身体を密着させるように抱きついてきた。
今のアサーラは、暗示によるセックスでエリンの虜になっている。
そのくらい徹底して、エリンはアサーラを犯した。犯すしかなかった
人格が変わるまで女をセックス漬けにする、少年ながらそんな体験をしてしまった。
その罪悪感と虚無感――。
背負うには、複雑すぎるものをエリンは抱え込んだのだ。
「帰ろう、アサーラ。気づかれる前に」
第一王子は、褐色の姉妹から暗殺成功の報を受けた。
これで、手の内が暴かれることはないだろう。
悪の令嬢フリージアなら、エリンを放ったのが自分だとどっくに気づいているはず。
ただ、証拠がないのであれば陰謀というものは周囲を説得できないのである。
正確に言えば、証拠がないということは不実に目をつぶってもいい理由になる。
第一王子がフリージアの暗殺を企んだという事実が発覚した場合、ギュスターランド公爵家を敵に回さなければならない理由ができる。
誰もそんな面倒なことなどしたくないのだ。
証拠がなければ、動かなくてもいい口実ができる。これが重要だ。
「はい、殿下。ギルドの裏切り者を仕留めております」
「暗殺者ギルドは思った以上に律儀だな。予が王位を継いだら、ギュスターランド公爵家を解体し、その仕事をギルドに回すと約束する」
暗殺者ギルドは不安定な組織だ。
存在自体が許されるものではなく、権力に睨まれれば吹き飛んでしまう。
しかし、国の後ろ盾ができれば、その基盤じゃ補償される。
第一王子に暗殺者ギルドが協力したのも、それが目的である。
「この国は変わらねばならん。権力は集中するのが鉄則だ。いつまでも頭の硬い貴族共をのさばらせてはおけんからな」
王国は、周辺国に発展度で後れを取りつつある。
疲弊して衰退していく国など、継承する利点はない。
現状を改革するためには、王権を強化する必要があった。
その野望の最大の障害がギュスターランド公爵家である。
「ふたりとも、よくやった。情けをくれてやる。伽の支度を」
端正な王子の顔に、欲の影が浮かんだ。
双子の暗殺者は、王子の性の相手として献上されたもの。
閨の技術も、暗殺には必要であり、王子はこれを確かめて満足している。
「……はい」
するりと衣擦れの音がして、双子は裸となった。
王子は、もう少し早く異変に気づくべきだったのだ。
「お前、男か……!?」
そう、アサーラとアーミナの双子姉妹、そ一方はエリンの変装だった。
しなやかな少年の体格であれば、女に化けるのも難しくない。
素早く駆け出したエリンは、隠し持った短刀を王子の首にある気管の窪みに突き立てた。
ただ一撃、極めて正確な急所に。
こうすることで返り血の心配もなく、切断された内頸静脈からの血は肺に溜まり、溺死する。
王子の瞳孔が開ききるのを確認し、エリンは離れる。
「エリン……」
喜色の笑みを浮かべたアサーラが身体を密着させるように抱きついてきた。
今のアサーラは、暗示によるセックスでエリンの虜になっている。
そのくらい徹底して、エリンはアサーラを犯した。犯すしかなかった
人格が変わるまで女をセックス漬けにする、少年ながらそんな体験をしてしまった。
その罪悪感と虚無感――。
背負うには、複雑すぎるものをエリンは抱え込んだのだ。
「帰ろう、アサーラ。気づかれる前に」
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