60 / 62
悪徳の栄え
60
しおりを挟む
第一王子の暗殺は、第二王子による陰謀と公表された。
後継者候補を同時に失った王国であるが、ここで第三王子クラウスが名乗りを挙げる。
愚か者のふりをしていたのは、野心家の第二王子から身を守るため――そのように説明された。
臣下たちが列席する中で、異母兄の第一王子に弔事を述べ、第二王子の陰謀の証拠を並べ立て糾弾する演説は、若年とは思えぬほど見事なものであった。
続いて病床の父王に対しての慰撫と今後の国策まで献策したとあっては聡明さに口を挟める余地はない。
クラウス王子は、第二王子を幽閉し、彼に連座する廷臣たちを失脚させた。
直後に自身の後見人にして婚約者にギュスターランド公爵令嬢フリージアを指名する。
電撃的なクーデターで、文句のつけようのない手際だった。
そしてその夜――。
「すべてうまくいったわ、あなたのおかげよエリン」
フリージアの豪奢な寝室には、ふたりの少年が招かれている。エリンとクラウス王子だ。
高級な下着姿のフリージアは、クラウス王子を侍らせている。
正妃となる以上、フリージアはクラウス王子の子を孕むことになる。
容姿も整い、聡明な王子が自分の肉体に溺れるのは、フリージアを満足させるものであった。
そして、それを見つめるエリン。
物欲しそうな瞳がよい。
何故王子にそんなことをさせているのかと咎めるような感情が混じっているのも、なおいい。
「…………」
行為を見せつけられ、エリンは自分の子感が隆起していることに屈辱を感じていた。
弄ばれている。
にも関わらず、エリンはフリージアに抱かれたがっている。
散々になぶりものにされ、尊厳を貶められ続けたというのに、フリージアを欲しがっている。
その肉体を凌辱して、復讐したいのだろうか?
いや、やはり恋慕の感情に違いない。
邪悪な令嬢に、悲惨な性体験をさせられたというのに惹かれてしまっている。
しかも、彼女の処女はこれみよがしに侍らせているクラウス王子に捧げているのだ。
「王子、今度はエリンの番になります。そこでご覧になっていてくださいまし」
「僕を嫉妬させたいんだね、フリージアは……」
今度はクラウス王子が嫉妬に駆られる番だった。
彼女が処女を捧げた理由が、策謀によるものだということはよくわかっている。
だが、物心ついた頃より味方もおらず誰からも愛情を注がれず、白痴を演じ続けたクラウスを、肉体そのものでて受け入れてくれたのは、フリージアだけだったのだ。
利用されただけだというのもわかっている。
それでも、腫れ物のように扱われた自分に触れてくれただけでも嬉しかったのだ。
その気持ちを知ってか、頭を撫でてくれた。
「エリン、もうはち切れそうね。乱暴にしてもいいわ。あなたには、そのくらいのことをしてきたのだから」
「くっ……!」
抑えきれない劣情を見透かされている。
それでも、蠱惑的に微笑むフリージアには抗えなかった。
エリンは、寝台に踏み出していった。
後継者候補を同時に失った王国であるが、ここで第三王子クラウスが名乗りを挙げる。
愚か者のふりをしていたのは、野心家の第二王子から身を守るため――そのように説明された。
臣下たちが列席する中で、異母兄の第一王子に弔事を述べ、第二王子の陰謀の証拠を並べ立て糾弾する演説は、若年とは思えぬほど見事なものであった。
続いて病床の父王に対しての慰撫と今後の国策まで献策したとあっては聡明さに口を挟める余地はない。
クラウス王子は、第二王子を幽閉し、彼に連座する廷臣たちを失脚させた。
直後に自身の後見人にして婚約者にギュスターランド公爵令嬢フリージアを指名する。
電撃的なクーデターで、文句のつけようのない手際だった。
そしてその夜――。
「すべてうまくいったわ、あなたのおかげよエリン」
フリージアの豪奢な寝室には、ふたりの少年が招かれている。エリンとクラウス王子だ。
高級な下着姿のフリージアは、クラウス王子を侍らせている。
正妃となる以上、フリージアはクラウス王子の子を孕むことになる。
容姿も整い、聡明な王子が自分の肉体に溺れるのは、フリージアを満足させるものであった。
そして、それを見つめるエリン。
物欲しそうな瞳がよい。
何故王子にそんなことをさせているのかと咎めるような感情が混じっているのも、なおいい。
「…………」
行為を見せつけられ、エリンは自分の子感が隆起していることに屈辱を感じていた。
弄ばれている。
にも関わらず、エリンはフリージアに抱かれたがっている。
散々になぶりものにされ、尊厳を貶められ続けたというのに、フリージアを欲しがっている。
その肉体を凌辱して、復讐したいのだろうか?
いや、やはり恋慕の感情に違いない。
邪悪な令嬢に、悲惨な性体験をさせられたというのに惹かれてしまっている。
しかも、彼女の処女はこれみよがしに侍らせているクラウス王子に捧げているのだ。
「王子、今度はエリンの番になります。そこでご覧になっていてくださいまし」
「僕を嫉妬させたいんだね、フリージアは……」
今度はクラウス王子が嫉妬に駆られる番だった。
彼女が処女を捧げた理由が、策謀によるものだということはよくわかっている。
だが、物心ついた頃より味方もおらず誰からも愛情を注がれず、白痴を演じ続けたクラウスを、肉体そのものでて受け入れてくれたのは、フリージアだけだったのだ。
利用されただけだというのもわかっている。
それでも、腫れ物のように扱われた自分に触れてくれただけでも嬉しかったのだ。
その気持ちを知ってか、頭を撫でてくれた。
「エリン、もうはち切れそうね。乱暴にしてもいいわ。あなたには、そのくらいのことをしてきたのだから」
「くっ……!」
抑えきれない劣情を見透かされている。
それでも、蠱惑的に微笑むフリージアには抗えなかった。
エリンは、寝台に踏み出していった。
0
あなたにおすすめの小説
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
【完結】異世界に転移しましたら、四人の夫に溺愛されることになりました(笑)
かのん
恋愛
気が付けば、喧騒など全く聞こえない、鳥のさえずりが穏やかに聞こえる森にいました。
わぁ、こんな静かなところ初めて~なんて、のんびりしていたら、目の前に麗しの美形達が現れて・・・
これは、女性が少ない世界に転移した二十九歳独身女性が、あれよあれよという間に精霊の愛し子として囲われ、いつのまにか四人の男性と結婚し、あれよあれよという間に溺愛される物語。
あっさりめのお話です。それでもよろしければどうぞ!
本日だけ、二話更新。毎日朝10時に更新します。
完結しておりますので、安心してお読みください。
極上イケメン先生が秘密の溺愛教育に熱心です
朝陽七彩
恋愛
私は。
「夕鶴、こっちにおいで」
現役の高校生だけど。
「ずっと夕鶴とこうしていたい」
担任の先生と。
「夕鶴を誰にも渡したくない」
付き合っています。
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
神城夕鶴(かみしろ ゆづる)
軽音楽部の絶対的エース
飛鷹隼理(ひだか しゅんり)
アイドル的存在の超イケメン先生
♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡-♡
彼の名前は飛鷹隼理くん。
隼理くんは。
「夕鶴にこうしていいのは俺だけ」
そう言って……。
「そんなにも可愛い声を出されたら……俺、止められないよ」
そして隼理くんは……。
……‼
しゅっ……隼理くん……っ。
そんなことをされたら……。
隼理くんと過ごす日々はドキドキとわくわくの連続。
……だけど……。
え……。
誰……?
誰なの……?
その人はいったい誰なの、隼理くん。
ドキドキとわくわくの連続だった私に突如現れた隼理くんへの疑惑。
その疑惑は次第に大きくなり、私の心の中を不安でいっぱいにさせる。
でも。
でも訊けない。
隼理くんに直接訊くことなんて。
私にはできない。
私は。
私は、これから先、一体どうすればいいの……?
大丈夫のその先は…
水姫
恋愛
実来はシングルマザーの母が再婚すると聞いた。母が嬉しそうにしているのを見るとこれまで苦労かけた分幸せになって欲しいと思う。
新しくできた父はよりにもよって医者だった。新しくできた兄たちも同様で…。
バレないように、バレないように。
「大丈夫だよ」
すいません。ゆっくりお待ち下さい。m(_ _)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる