運命を殺したい僕、運命を幸せにしたい俺

かりん

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5 知らないところで世界は繋がる。

拒否

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(side夏向)
ふらりと辿りついたバス停でバスを待つ。早朝の早い時間帯だからバスは殆ど来ない。電車に乗ろうとしたけれど、駅が大きすぎて迷って辿り着いたのがバス停だった。
僕の後からまた人が並ぶ……。と思ったけど彼は僕の後ろに並ばずに僕に話しかけた。

「それ、五羽都学園の制服でしょ」
「え?」

小太りの、中年の男性だった。にやり、口の口角を限界まであげて彼は笑った。棚から牡丹餅、思わぬ『餌』。危険だ、と脳が察した瞬間逃げ出そうとして、そしてその僕の手を彼は掴んだ。

「金持ってるんだろ?おじさんちょっと金欠でねぇ」
「いや、持ってないし!」

そうだ。確か僕は今制服で、そしてこの制服は外では狙われる。危機管理能力がない御曹司なんて格好の的だ。なんで忘れてたんだ、僕は。

ズボンのポケットをまさぐられ、財布を取りあげられる。その時、ぽとりと落ちたのは例のアレだった。肌身離さず持ち歩くΩの抑制剤。

「Ωか……?」
「……っ」

抑制剤もひょいとその男性に取り上げられ、訳が分からなくなる。後ろから耳を舐められて、肩に息があたった。

「おじさんαなんだよ。発情期中では無いのかな。でも微かにフェロモンの香りがする」
「ア、α?」
「なんでαがこんな真似してるかと疑問に思った?はは、αでも弱いんだよ。α社会では淘汰される。でもαは、αというだけでβみたいには成れないんだ。……結果私は落ちぶれた。けれど今はこんなチャンスは滅多に巡ってこないね」
「抱きたいの?僕を」

当然だと言うように、彼は僕の首筋に跡を残す。きつく吸われて、肩が跳ねた。項に近くて、身体がゾワゾワする。発情期でも無いし万が一噛まれても大丈夫だと思うけど、つい項を庇うように両手で押さえつける。
なんでだろう。このまま身を委ねてもいい、のに。今更純情ぶってても仕方が無い、のに……。

「やめろ、僕は……嫌だ」

思わず声が出た。
『君をだ。約束してくれ。もう二度とあんな真似はやめてくれ』

そんな光希の身勝手な言葉を、思い出してしまった。
嫌だ。何度も男性の手から逃れようと暴れてみる。けれどもやはり体格差は埋まらない。
嫌だ、嫌なものは嫌だって言えることは、そんなに難しいことでは無い。けれどもかつて僕はずっとそれを諦めていた。仕方が無いことだと理不尽を受け入れていた。Ωに生まれたのはαに搾取されるためだって……

いや、やっぱり今は諦めたく無い。Ωであろうと僕は……僕の体はやっぱり僕のものだ!!
恐怖で身体が震えてくる。訳が分からなくて、ぐちゃぐちゃになって……でも、僕は僕でいたかった。
今更、絶望の海に藻掻いてもどうしようも無いのかもしれないけど。

「たすけて……」

押し倒されて、背中に地面が当たる。もう一度無意識に声が出た。
その時だ。

「その手を離して頂けませんか?公共の場所です」

聞き覚えのあるその声を、僕はどこか遠くに聞いていた。
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