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8 たかが噂で民衆は踊る。
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(side光希)
職員室に夏向は行ってしまった。俺と藍は食堂の個室に残される。俺の怒りともどかしさが顔に出たのだろう。藍が心配して俺に話しかけた。
「ねぇ、みっくん。夏向を離して良かったの~?」
「良くないよ。今でも追いかけたい位。俺のいない間に、知らない男と会うなんて……」
「クラス違うんだし、それはしょうがないよね~。今はテスト期間中だから、束縛出来ているだけだよ」
それは確かにそうだ。
ぐっと手を握りしめ、もう痛いぐらいだ。けれども怒りで震えて、力加減が出来ない。
学園という、システムに縛られて……夏向はやすやすと俺の手から離れてしまう。夏向が心配だけど、俺に社会的な力が無ければ夏向を守れない。
「まあ、確かに……。夏向ったら策士だよね。みっくんがどれだけ夏向を求めても、我慢せざるおえなくなる。わかっててやったんだろうね~アレ」
「追風さんを殺したのは俺だと……真に受けて、嫌われたのかもしれないな」
「殺してない!って言った?」
「言ったけど、詳しくは説明してない。する暇が無かった」
『ああ、そうだったね』と藍は頷いて、頭を抱えた。俺だってそうしたい位だ。
追風さんと、言えば。
「ああ、そうだ。何故か犯人が持っていた七世のナイフだが……そこから犯人が辿れるかもしれない。夏向からいい情報を聞いて、更に個人的に調べてみた」
「どんな情報?」
「月曜日の朝、明里がナイフを勝手に業者に渡したことがわかった。その業者は古くからあるちゃんとした業者だったが……とある職員が勝手にナイフを横流しにしたらしい」
「それは……誰に?」
「恐らく犯人だろう。特定出来て……そして右代との繋がりが分かれば、彼らを追い込める。そして、俺たちは勝てる」
追風さんと打ち合わせをした通り、追風さんはもう七世側の陣営だ。そして、追風さんは確かに誰かに殺された。
俺を犯人に仕立てあげようと表社会に出る前提で、証拠を隠滅せず雑な殺し方をしたようだが……それが仇となるだろう。
既に、表社会に出ているのなら……あとは犯人を特定すればそれで終わる。
当然、父上に頼んで別方向でも攻めるつもりだ。
暫くは忙しくなるだろうし……学園でのこともある。でも、絶対に……どんなに厳しくても夏向を守ってみせるから……。だから夏向、それまで待っていて欲しい。
祈るように、手を重ねて心の中で唱えた。
「僕も……できる限りは協力するよ。でもハトファイのあの記事は知っているんでしょ~?」
「丁度お昼の記事か。君はその記事をみつけ、俺たちに話しかけてきた。そうだろう?」
「れんちゃんが記事について教えてくれてね~。でも夏向がいるから、切り出し方が分からなかったかな」
「知らないなら……知らないままの方がいい」
ぐっと唇を噛み締める。明らかに、夏向や俺たちを陥れる悪意の籠った文面。ただそれだけだと、生徒たちも相手にしないだろうが……『壮一郎を生徒会から脱退させた』という事実が、生徒たちを本気にさせた。
色々悩んでいると、察したらしい藍が、『もうっ』と声を上げた。
「うじうじしない、それでもαか~!!みっくんはそんな程度で全校生徒から嫌われたりしない。僕もいるし~!!」
「そうだな。俺たちの味方はまだいなくなった訳では無い。さっき俺が発信したらまだ何人か答えてくれたよ。夏向たちも彼らに任せよう」
俺が離れた時に何かあっても、彼らが守ってくれるだろう。俺も同時進行で、やらないといけないことがある。
それまでは、なんて思っていると……。
ふと、スマホが鳴って、ハトファイから新着通知が来た。
少し気になって、画面を覗いてみる。
どうやら新着記事は映像だったようだ。
ごくり、と息を飲んだ。
俺が裏でコソコソと動いている間に、向こうも同じように動いていた。当たり前だが、それが表面に浮き出て、じわじわと俺を侵食した。
サムネイルにあの右代春都がいる。
映像を再生する。優しく彼が挨拶した。
『やあ、こんにちは』
あくまで優雅で。それは天使にも似た微笑みだ。
背景で、生徒会室の前だと理解する。笑みを浮かべて、フェロモンが届かない画面越しなのに……その表情だけで滲み出るカリスマ性。
『僕は来週からここに転入する右代春都だよ。知っている人もいるかもしれないけど……僕は右代の跡取りだ。さて……急で申し訳ないし、突然かもしれないけれど……。僕は何度か見学して、この学園の在り方について不満を覚えた。なにより、βを差別する現生徒会長にね』
少しの沈黙。これだけで、察してしまった。
『生徒会長サン』と、昨日彼は最後に俺をそう呼んだ。
俺を物理的に殺すのを後回しにした代わりに取った手段がこれだ。
もしかしたら、あの記事も仕込んだ罠なのかもしれない。
学園での俺の立場を奪う。俺を社会的に殺す。
そのためには新たな支配者が必要だろう。
敵陣の王の駒が、前へと一歩進んだ。
『僕は現生徒会長、七世光希にリコールを唱えよう。僕が生徒会長になった暁には……凪壮一郎を副会長にし、βに優しい学園にすることを誓おう』
これは……俺が築きあげた社会に対する反逆だ。
どうやら、またこの学園内でも、戦争が始まるようだ。
「みっくん、どうするの。……受けるの?」
藍が真剣な表情で俺を見た。もちろん、一方的なリコールは成立しない。現生徒会長がそのリコールを受けるか……過半数の生徒の署名でそれは成立する。俺が蹴ってしまえば現時点ではそれは無意味なものとなる。
「受けるよ。ここで蹴れば不信感を抱く者がいる。『勝つ自信がないから逃げたのか……』余計に俺は生徒会長として相応しくないと思われるだろう。だから受けるのが最善だ。向こうも俺が受けることを分かっているのだろう」
それに、蹴っても次は本当に過半数の署名を集めてくるだろう。
「向こうがこの学園を戦争のステージに選んだのなら、それに答えるべきだ。生徒たちに危害を加えない限りは……ね」
早速ご飯を食べ終わって、行動に出る。
俺は右代春都に直接会う約束を取り付けた。
そうだな、戦うならネット上ではなく……今俺たちがいる現実世界が良いだろう。
さて、夏向はいつ帰ってくるんだろうか。
やっぱり迎えに行こうかな。
職員室に夏向は行ってしまった。俺と藍は食堂の個室に残される。俺の怒りともどかしさが顔に出たのだろう。藍が心配して俺に話しかけた。
「ねぇ、みっくん。夏向を離して良かったの~?」
「良くないよ。今でも追いかけたい位。俺のいない間に、知らない男と会うなんて……」
「クラス違うんだし、それはしょうがないよね~。今はテスト期間中だから、束縛出来ているだけだよ」
それは確かにそうだ。
ぐっと手を握りしめ、もう痛いぐらいだ。けれども怒りで震えて、力加減が出来ない。
学園という、システムに縛られて……夏向はやすやすと俺の手から離れてしまう。夏向が心配だけど、俺に社会的な力が無ければ夏向を守れない。
「まあ、確かに……。夏向ったら策士だよね。みっくんがどれだけ夏向を求めても、我慢せざるおえなくなる。わかっててやったんだろうね~アレ」
「追風さんを殺したのは俺だと……真に受けて、嫌われたのかもしれないな」
「殺してない!って言った?」
「言ったけど、詳しくは説明してない。する暇が無かった」
『ああ、そうだったね』と藍は頷いて、頭を抱えた。俺だってそうしたい位だ。
追風さんと、言えば。
「ああ、そうだ。何故か犯人が持っていた七世のナイフだが……そこから犯人が辿れるかもしれない。夏向からいい情報を聞いて、更に個人的に調べてみた」
「どんな情報?」
「月曜日の朝、明里がナイフを勝手に業者に渡したことがわかった。その業者は古くからあるちゃんとした業者だったが……とある職員が勝手にナイフを横流しにしたらしい」
「それは……誰に?」
「恐らく犯人だろう。特定出来て……そして右代との繋がりが分かれば、彼らを追い込める。そして、俺たちは勝てる」
追風さんと打ち合わせをした通り、追風さんはもう七世側の陣営だ。そして、追風さんは確かに誰かに殺された。
俺を犯人に仕立てあげようと表社会に出る前提で、証拠を隠滅せず雑な殺し方をしたようだが……それが仇となるだろう。
既に、表社会に出ているのなら……あとは犯人を特定すればそれで終わる。
当然、父上に頼んで別方向でも攻めるつもりだ。
暫くは忙しくなるだろうし……学園でのこともある。でも、絶対に……どんなに厳しくても夏向を守ってみせるから……。だから夏向、それまで待っていて欲しい。
祈るように、手を重ねて心の中で唱えた。
「僕も……できる限りは協力するよ。でもハトファイのあの記事は知っているんでしょ~?」
「丁度お昼の記事か。君はその記事をみつけ、俺たちに話しかけてきた。そうだろう?」
「れんちゃんが記事について教えてくれてね~。でも夏向がいるから、切り出し方が分からなかったかな」
「知らないなら……知らないままの方がいい」
ぐっと唇を噛み締める。明らかに、夏向や俺たちを陥れる悪意の籠った文面。ただそれだけだと、生徒たちも相手にしないだろうが……『壮一郎を生徒会から脱退させた』という事実が、生徒たちを本気にさせた。
色々悩んでいると、察したらしい藍が、『もうっ』と声を上げた。
「うじうじしない、それでもαか~!!みっくんはそんな程度で全校生徒から嫌われたりしない。僕もいるし~!!」
「そうだな。俺たちの味方はまだいなくなった訳では無い。さっき俺が発信したらまだ何人か答えてくれたよ。夏向たちも彼らに任せよう」
俺が離れた時に何かあっても、彼らが守ってくれるだろう。俺も同時進行で、やらないといけないことがある。
それまでは、なんて思っていると……。
ふと、スマホが鳴って、ハトファイから新着通知が来た。
少し気になって、画面を覗いてみる。
どうやら新着記事は映像だったようだ。
ごくり、と息を飲んだ。
俺が裏でコソコソと動いている間に、向こうも同じように動いていた。当たり前だが、それが表面に浮き出て、じわじわと俺を侵食した。
サムネイルにあの右代春都がいる。
映像を再生する。優しく彼が挨拶した。
『やあ、こんにちは』
あくまで優雅で。それは天使にも似た微笑みだ。
背景で、生徒会室の前だと理解する。笑みを浮かべて、フェロモンが届かない画面越しなのに……その表情だけで滲み出るカリスマ性。
『僕は来週からここに転入する右代春都だよ。知っている人もいるかもしれないけど……僕は右代の跡取りだ。さて……急で申し訳ないし、突然かもしれないけれど……。僕は何度か見学して、この学園の在り方について不満を覚えた。なにより、βを差別する現生徒会長にね』
少しの沈黙。これだけで、察してしまった。
『生徒会長サン』と、昨日彼は最後に俺をそう呼んだ。
俺を物理的に殺すのを後回しにした代わりに取った手段がこれだ。
もしかしたら、あの記事も仕込んだ罠なのかもしれない。
学園での俺の立場を奪う。俺を社会的に殺す。
そのためには新たな支配者が必要だろう。
敵陣の王の駒が、前へと一歩進んだ。
『僕は現生徒会長、七世光希にリコールを唱えよう。僕が生徒会長になった暁には……凪壮一郎を副会長にし、βに優しい学園にすることを誓おう』
これは……俺が築きあげた社会に対する反逆だ。
どうやら、またこの学園内でも、戦争が始まるようだ。
「みっくん、どうするの。……受けるの?」
藍が真剣な表情で俺を見た。もちろん、一方的なリコールは成立しない。現生徒会長がそのリコールを受けるか……過半数の生徒の署名でそれは成立する。俺が蹴ってしまえば現時点ではそれは無意味なものとなる。
「受けるよ。ここで蹴れば不信感を抱く者がいる。『勝つ自信がないから逃げたのか……』余計に俺は生徒会長として相応しくないと思われるだろう。だから受けるのが最善だ。向こうも俺が受けることを分かっているのだろう」
それに、蹴っても次は本当に過半数の署名を集めてくるだろう。
「向こうがこの学園を戦争のステージに選んだのなら、それに答えるべきだ。生徒たちに危害を加えない限りは……ね」
早速ご飯を食べ終わって、行動に出る。
俺は右代春都に直接会う約束を取り付けた。
そうだな、戦うならネット上ではなく……今俺たちがいる現実世界が良いだろう。
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