運命を殺したい僕、運命を幸せにしたい俺

かりん

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9 凪は昼と夜の狭間。

子供

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(side壮一郎)
『七世光希は僕の宣戦布告を受けた?』
「俺に聞かなくても……知ってるでしょう」
『意地悪しないでよ。僕は壮一郎とコミュニケーションをしたいんだから』

なんて柔らかい声が電話の奥から聞こえてきて、『はいはい』なんて乾いた笑いが俺の口から出てくる。俺は今、ご主人様と電話で会話している。まあ正直、性格は面倒臭いけれど……けれども俺がこうやって生きていけるのはご主人様のおかげだ。
まあ、勿論尊敬もしている。カリスマ性もあって……人心掌握術だって熟知している。
敵にしない方が良いよな。

『兎に角、向こうから『生徒会室で話がしたい』という連絡が来たんだよね。あってる?』
「あってますよ。ていうか、知ってるでしょう。もう」
『壮一郎は今どこにいるんだい?』
「職員室の前の廊下です」

そう、俺は廊下でユイの待ち伏せをしている。というのも、ご主人様の命令だ。
ご主人様が揺さぶった翌日。そろそろユイと生徒会長の関係は歪み始める。
まあ、噂を流したのだから確実だ。そこに俺が追い打ちをかける。
生徒会長がいるとどうしたって守りが強くなるから、ユイがひとりになる弱い時を狙う。
これは全部、ご主人様の作戦だ。

『へえ、あの子はまだ?』
「そ~すね。ユイはまだ職員室ですよ。まあ、反省文に時間かけてるんでしょうね~」
『ユイ……ねぇ。あれ、僕の弟って妹だっけ』

なんてこと言い出すんだ。『多分興味無い』半分の、『分かってて言ってる』半分なんだろうな。
いや、興味無い風を装いながら……実際は気にしてるんだぜ。

「そんな訳無いでしょう。ちゃんと弟ですよ。確かに俺は女の子みたいに呼んでますけど」
『ああ、そっかぁ。まあ女みたいなものだし一緒だよね。むしろ……』
「むしろ?」
『一般の女の子よりΩの方が下だし』
「ええ、世の階層はそうなってますね」

『下』か。まあ、俺もその意見には反対しないけど。
右代春都はΩが嫌いな差別主義者だ。でも嫌いってことは『気になって仕方がない』の裏返し。自分にとって『未知』の存在だから完全に支配したくなる。
要は何より『運命』を恐れてるってこと。Ωのヒートによって、自分が変わるのが怖いんだ。
ある意味、ご主人様は子供で弱虫なのかもしれない。
けれども能力は確かだ。『右代』の実権は、右代の当主であるご主人様の父親では無い。
全部、ご主人様が握ってんだ。ユイを右代家から追い出したのも、全部ご主人様が自分の父親を唆してやったこと。
本当にやり口が楽園の蛇じみている。

「ところでご主人様の方は……今は何処にいるんすか?」
『へ、生徒会室だけど?』
「あの映像から動いてないんですね!?約束は明日ですし、もう帰ってもいいんじゃないですか?」
『でも待てないんだよねぇ。どうしよう』
「生徒会長……いや、七世光希に会うの、そんなに楽しみなんすか?」

翌日が待てないくらいに?ならば約束を今日にして貰えればいいのに。やはり彼の言動は、よく分からない。

『いや、君と一緒に帰るのが楽しみなんだよ。壮一郎。早く帰っておいで』
「……狡く無いっすか?」
『照れてる?』
「照れてますよ。ご主人様に嘘つく気はなれないんで……そのまま言いますけど」

帰る場所……か。ご主人様がいる生徒会室前に行くという意味。
きっと生徒会副会長の役職に帰るという意味も込められているのだろう。
だからこそ早く任務を遂行出来なければならない。
ああ、そうだな。
生徒会副会長。随分長いことその役職についた気でいたけど……実際はそんなに長く無かったっけ。
というのも、俺がこの学園に転校してきたのは、ユイが学園に来る二週間前だからだ。

そう、たった二週間で俺は生徒会副会長の地位まで上り詰めた。
もう数十年たったみたいな、昔に感じてしまう。生徒会長に近づいたのは、勿論俺の監視役の任務を滞りなく遂行するため。
クラスも学年も違う俺が、標的に近づくにはそれが一番手っ取り早かった。
その為なら……俺はどんなことでもした。
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