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2部 光希と夏向のそれから
罠
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(side夏向)
昼休み、生徒会室のパソコンからメールが来た。光希からだ……。いつもはスマホのメッセージアプリなのに、珍しいな。でも過去に一回だけ、光希から生徒会室のパソコンからの光希のメールを受け取ったことがある。
その時は確か……『思ったより遅れそうだから先に帰っておいて』とメールが来たんだ。一緒に帰る予定だったけれど、僕はその言葉に従い先に帰ることにした。
送信した時、光希は生徒会室のパソコンを作動していたのだろう。スマホを取り出すよりはパソコンから送った方が早いから、という理由なのは僕でも容易に推測できた。
今回もパソコンからの送信なのは、前回と同じ理由なんだろうか。
深く考えずに僕はメールを開いた。
『今日の昼休み、研究部の部室で待ってる。部室棟の一階だ』
研究部?そんな部活あったっけ?
でも、そういえば僕は今まで部活に関してはノータッチだ。この学園にそもそもなんの部活があるのかすら知らない。当然僕は帰宅部だし、この学園はなんの部活が強いのか、クラスメートはなんの部活に入ってるのか知らないのだ。
確か光希も生徒会長と七世の事業(親の手伝いとも言う)で忙しいから部活には入っていない。
研究部が光希とどう関わりがあるかは知らないけれど……研究部で何かあったんだろうか。
疑問に思ったけれど、光希からのメールだし、素直に従うことにした。
部室棟の一階。文化部が並ぶ中で一番寂れた廊下の奥に、そこはあった。ステンドガラスが太陽光をカラフルに彩り、床を綺麗なキャンバスにしていく。
埃っぽくて僕はつい咳き込んでしまった。
そんな埃もまた、光の粒子みたいに辺りを飛び交う。
研究部の扉の目の前に来た。
光希に呼び出されただけなのに、僕はすっごく緊張している。思えば随分辺鄙なところに来た。
「光希……?」
扉の外から声をかけてみる。すると内側から扉が開かれた。
しかし、そこに居たのは光希では無い、制服を着ているが知らない人だ。驚いて僕は思わず一歩下がってしまった。
「ああ、ごめん。驚かすつもり無かったんや。……まあ、誘ったんは俺やねんけど」
「誰、ですか?」
警戒の表情を浮かべながら僕は目の前の男に問いかける。
光希よりも高身長で、威圧感を感じてしまう。失礼ながら胡散臭く見えるのは、前髪が長くて目がちゃんと見えないからだろうか。
「ああ、俺は海上紅葉。三年A組で、生徒会役員なんや。七世とは知り合いやから警戒せんでもええよ。番さん」
「生徒会役員……?」
「そうそう、まあでも見たこと無いよなぁ。だって俺引きこもりやし……それに七世が『夏向には会わせない』キリッって言うから……。だから、勝手に会うことにしたんや」
「そう、なんですね」
「そうやねん。会いたかったや。興味くらいあってもええやろ」
ああ、駄目だ。ちょっと我慢してたけど、この人、表情が面白すぎる。つい『ふふふ』と堪えきれなくて笑ってしまった。
「ふふ、『キリッ』まで口で言うんですか。物真似、上手いですね。すみません。笑っちゃって」
「やろやろ、俺の特技やねん。ていうか、ほんま七世って頑固よなぁ」
彼のペースに、そして和やかな西の方の方言に、つい和んで僕はけらけらと笑ってしまった。ちょっとだけだけど、警戒心を解く。そして彼はそんな僕の心情の変化を察して、部室の奥へと手招いた。
「とりあえず、中でお話せぇへんか?」
「はい」
扉のの外から中を覗いて見た。一番奥の乱雑に書類が積み上がっているデスク以外は整っていた。
デスクには書類と、そして大きめのパソコンが鎮座している。その隣には本棚。本がぎっしりと満員電車のように詰め込まれている。
手前にはソファとテーブル、そしてテレビ。綺麗で落ち着いた佇まいは生徒会室を思い出した。
僕が中に入ってソファに座ると、海上先輩は部室の扉を閉めた。
「ほんっと……警戒心の薄いええ子やわぁ」
不意に、背後から聞こえてきた声に僕はゾクッときて振り返った。
そう、僕は光希が守ってくれる安心感で、平和ボケしていたのだ。彼とは初対面で、まだ何も知らない。なんなら、僕は騙されて誘い出された身だ。なのにノコノコと部屋に入るなんて……なんて単純で馬鹿なのだろう。
誘き寄せた獲物をみるように、にやりと海上先輩は笑った。
昼休み、生徒会室のパソコンからメールが来た。光希からだ……。いつもはスマホのメッセージアプリなのに、珍しいな。でも過去に一回だけ、光希から生徒会室のパソコンからの光希のメールを受け取ったことがある。
その時は確か……『思ったより遅れそうだから先に帰っておいて』とメールが来たんだ。一緒に帰る予定だったけれど、僕はその言葉に従い先に帰ることにした。
送信した時、光希は生徒会室のパソコンを作動していたのだろう。スマホを取り出すよりはパソコンから送った方が早いから、という理由なのは僕でも容易に推測できた。
今回もパソコンからの送信なのは、前回と同じ理由なんだろうか。
深く考えずに僕はメールを開いた。
『今日の昼休み、研究部の部室で待ってる。部室棟の一階だ』
研究部?そんな部活あったっけ?
でも、そういえば僕は今まで部活に関してはノータッチだ。この学園にそもそもなんの部活があるのかすら知らない。当然僕は帰宅部だし、この学園はなんの部活が強いのか、クラスメートはなんの部活に入ってるのか知らないのだ。
確か光希も生徒会長と七世の事業(親の手伝いとも言う)で忙しいから部活には入っていない。
研究部が光希とどう関わりがあるかは知らないけれど……研究部で何かあったんだろうか。
疑問に思ったけれど、光希からのメールだし、素直に従うことにした。
部室棟の一階。文化部が並ぶ中で一番寂れた廊下の奥に、そこはあった。ステンドガラスが太陽光をカラフルに彩り、床を綺麗なキャンバスにしていく。
埃っぽくて僕はつい咳き込んでしまった。
そんな埃もまた、光の粒子みたいに辺りを飛び交う。
研究部の扉の目の前に来た。
光希に呼び出されただけなのに、僕はすっごく緊張している。思えば随分辺鄙なところに来た。
「光希……?」
扉の外から声をかけてみる。すると内側から扉が開かれた。
しかし、そこに居たのは光希では無い、制服を着ているが知らない人だ。驚いて僕は思わず一歩下がってしまった。
「ああ、ごめん。驚かすつもり無かったんや。……まあ、誘ったんは俺やねんけど」
「誰、ですか?」
警戒の表情を浮かべながら僕は目の前の男に問いかける。
光希よりも高身長で、威圧感を感じてしまう。失礼ながら胡散臭く見えるのは、前髪が長くて目がちゃんと見えないからだろうか。
「ああ、俺は海上紅葉。三年A組で、生徒会役員なんや。七世とは知り合いやから警戒せんでもええよ。番さん」
「生徒会役員……?」
「そうそう、まあでも見たこと無いよなぁ。だって俺引きこもりやし……それに七世が『夏向には会わせない』キリッって言うから……。だから、勝手に会うことにしたんや」
「そう、なんですね」
「そうやねん。会いたかったや。興味くらいあってもええやろ」
ああ、駄目だ。ちょっと我慢してたけど、この人、表情が面白すぎる。つい『ふふふ』と堪えきれなくて笑ってしまった。
「ふふ、『キリッ』まで口で言うんですか。物真似、上手いですね。すみません。笑っちゃって」
「やろやろ、俺の特技やねん。ていうか、ほんま七世って頑固よなぁ」
彼のペースに、そして和やかな西の方の方言に、つい和んで僕はけらけらと笑ってしまった。ちょっとだけだけど、警戒心を解く。そして彼はそんな僕の心情の変化を察して、部室の奥へと手招いた。
「とりあえず、中でお話せぇへんか?」
「はい」
扉のの外から中を覗いて見た。一番奥の乱雑に書類が積み上がっているデスク以外は整っていた。
デスクには書類と、そして大きめのパソコンが鎮座している。その隣には本棚。本がぎっしりと満員電車のように詰め込まれている。
手前にはソファとテーブル、そしてテレビ。綺麗で落ち着いた佇まいは生徒会室を思い出した。
僕が中に入ってソファに座ると、海上先輩は部室の扉を閉めた。
「ほんっと……警戒心の薄いええ子やわぁ」
不意に、背後から聞こえてきた声に僕はゾクッときて振り返った。
そう、僕は光希が守ってくれる安心感で、平和ボケしていたのだ。彼とは初対面で、まだ何も知らない。なんなら、僕は騙されて誘い出された身だ。なのにノコノコと部屋に入るなんて……なんて単純で馬鹿なのだろう。
誘き寄せた獲物をみるように、にやりと海上先輩は笑った。
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