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2部 光希と夏向のそれから
取引
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(side夏向)
研究部の部室。
初めて会う人間に騙され、僕はのこのこと誘い出された。自分の警戒心の無さに後悔しながら、海上先輩の話を聞く。
「え……そんな」
「なぁ……ええ話やろ?」
海上先輩は口角を釣り上げ笑う。膝に手を置いて、僕を見た。僕は驚きで肩を揺らす。
「でも……悪いです」
「何が悪いんや?」
「だって……」
そう、だって。
「僕に都合が良すぎませんか?その、海上先輩の研究に協力する代わりに学費を全額払ってくれる……なんて」
「そぉか。俺にとってもええ話やで。ここ最近はΩとαについて研究してんねん。運命やったら尚更、情報が足らへん。だからあんたに協力してもらいたいんや……。よぉ考えてみ?番さん」
実は僕と海上先輩は、お互い向かいあわせで座っている。
僕は海上先輩の目をじっくり見ながら、相槌をうった。
「俺が番さんの協力があって研究成果が出るとするやろ?そして世間に論文を発表する。そしてそれが認められて俺は大金持ちや。多分学費以上の金が入るんちゃうか、だからこれは投資やねん」
「投資……」
「それまでに、研究対象が学園辞めてどっか行く方が獲物を逃したみたいで嫌や。あんたら分析したら面白そうやん。『運命の番』なんて、ロマンチックなもん~、って言われてんのに……。それを科学的に証明してこそ、人間は進化すんねん」
「はぁ……」
なんとなく、言ってることは分かる。けれどもそんなに簡単に解決しないと思っていた問題が、こんなにあっさりいくとは思わなかった。
高校卒業までの三年分の学費。端金では無いはずだ。なのに海上先輩はわらって、『出したるわ』なんて言う。勿論、海上先輩の説明から、交換条件であることは分かっているけれど。
初対面の人間に、親切心だけで大金をぽんと出すような聖人君子では無いことは何となくわかった。そして、だからこそαに相応しい、社会に貢献出来るような人物であるということも。
「ちなみに僕は何をすればいいですか?」
「毎日体温測って……俺が開発したアプリに記入すること。そして発情期や体の変化は常に俺に報告すること。とりあえずはそれ位かなぁ。まあまあ面倒いやろ?毎日欠かさず繰り返して欲しいし」
「いえ……」
むしろ、全然。学費に比べたら安いものだ。
「他には?」
「え、他!?ああ、肝心なこと忘れてたわ。発情期にはアプリでフェロモンの計測をして欲しい。スマホのカメラに指翳すだけで勝手に計測してくれるから……」
「他は……」
「それくらいやで」
「そうですか」
海上先輩はスマホのメールを確認する。
突然立ち上がって、僕の横に座った。
「……取引は成立か?」
あんまりにも近くて、僕はたじろいだ。
海上先輩に軽く手を握られて、頭が更に混乱する。
脈拍を計られていると気づいたのは、それから数秒後だった。
そして、僕が口を開こう……と、した時だ。
「夏向!!」
扉が外れそうなくらい勢いよく開かれて、僕はまた驚いて肩が跳ねる。思わず会いたかったと抱きしめたくなるような匂いでくらくらした。
離れている時間はそんなに経ってはいないのに。
先程から海上先輩の柔らかいフェロモンは感じていたけれど、やっぱり光希と比べると違う。
光希のは、やはり僕の根本から覆しそうな匂いだ。
「グッドタイミングやん……♪」
「光希……?」
突然の事で脳みその情報処理速度が追いつく前に光希にキツく抱きしめられる。
僕は、浅はかな行動で光希に心配させてしまったんだ。その心配がどれ程かは、痛いくらいの光希の拘束で思い知った。
研究部の部室。
初めて会う人間に騙され、僕はのこのこと誘い出された。自分の警戒心の無さに後悔しながら、海上先輩の話を聞く。
「え……そんな」
「なぁ……ええ話やろ?」
海上先輩は口角を釣り上げ笑う。膝に手を置いて、僕を見た。僕は驚きで肩を揺らす。
「でも……悪いです」
「何が悪いんや?」
「だって……」
そう、だって。
「僕に都合が良すぎませんか?その、海上先輩の研究に協力する代わりに学費を全額払ってくれる……なんて」
「そぉか。俺にとってもええ話やで。ここ最近はΩとαについて研究してんねん。運命やったら尚更、情報が足らへん。だからあんたに協力してもらいたいんや……。よぉ考えてみ?番さん」
実は僕と海上先輩は、お互い向かいあわせで座っている。
僕は海上先輩の目をじっくり見ながら、相槌をうった。
「俺が番さんの協力があって研究成果が出るとするやろ?そして世間に論文を発表する。そしてそれが認められて俺は大金持ちや。多分学費以上の金が入るんちゃうか、だからこれは投資やねん」
「投資……」
「それまでに、研究対象が学園辞めてどっか行く方が獲物を逃したみたいで嫌や。あんたら分析したら面白そうやん。『運命の番』なんて、ロマンチックなもん~、って言われてんのに……。それを科学的に証明してこそ、人間は進化すんねん」
「はぁ……」
なんとなく、言ってることは分かる。けれどもそんなに簡単に解決しないと思っていた問題が、こんなにあっさりいくとは思わなかった。
高校卒業までの三年分の学費。端金では無いはずだ。なのに海上先輩はわらって、『出したるわ』なんて言う。勿論、海上先輩の説明から、交換条件であることは分かっているけれど。
初対面の人間に、親切心だけで大金をぽんと出すような聖人君子では無いことは何となくわかった。そして、だからこそαに相応しい、社会に貢献出来るような人物であるということも。
「ちなみに僕は何をすればいいですか?」
「毎日体温測って……俺が開発したアプリに記入すること。そして発情期や体の変化は常に俺に報告すること。とりあえずはそれ位かなぁ。まあまあ面倒いやろ?毎日欠かさず繰り返して欲しいし」
「いえ……」
むしろ、全然。学費に比べたら安いものだ。
「他には?」
「え、他!?ああ、肝心なこと忘れてたわ。発情期にはアプリでフェロモンの計測をして欲しい。スマホのカメラに指翳すだけで勝手に計測してくれるから……」
「他は……」
「それくらいやで」
「そうですか」
海上先輩はスマホのメールを確認する。
突然立ち上がって、僕の横に座った。
「……取引は成立か?」
あんまりにも近くて、僕はたじろいだ。
海上先輩に軽く手を握られて、頭が更に混乱する。
脈拍を計られていると気づいたのは、それから数秒後だった。
そして、僕が口を開こう……と、した時だ。
「夏向!!」
扉が外れそうなくらい勢いよく開かれて、僕はまた驚いて肩が跳ねる。思わず会いたかったと抱きしめたくなるような匂いでくらくらした。
離れている時間はそんなに経ってはいないのに。
先程から海上先輩の柔らかいフェロモンは感じていたけれど、やっぱり光希と比べると違う。
光希のは、やはり僕の根本から覆しそうな匂いだ。
「グッドタイミングやん……♪」
「光希……?」
突然の事で脳みその情報処理速度が追いつく前に光希にキツく抱きしめられる。
僕は、浅はかな行動で光希に心配させてしまったんだ。その心配がどれ程かは、痛いくらいの光希の拘束で思い知った。
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