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15 一日目⑪忙しい日の使用人の食卓にジャム

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「よぉ」

 イーデンが既にテーブルで食事をしているのを見て、ダグラスは手を挙げる。

「お先」
「ああ。そっちはどうだ?」

 使用人食堂の大きなテーブルには銘々が好きな時に摂れる様に食事が用意されている。
 温かい、もしくは熱いものが欲しければキッチンへ行ってしばし自分で手を掛けねばならない。
 まあここに居る男達には無用のことだった。
 ダグラスにしろイーデンにしろ、数少ない男手として忙しい。
 何しろ明日は狩りに行くと旦那様のお言いつけである。
 となると、彼等は馬丁や御者と共に、馬の様子をうかがったり、この家に保管されている銃の確認も行わねばならない。

「で、銃はどうなんだ」

 ダグラスは尋ねた。
 すると「んー」とやや困った顔をしつつ、イーデンは椅子に寄りかかり、頭の後ろで腕を組んだ。

「銃はいいんだが、他がなあ……」
「? 弾丸が無いのか?」
「無い訳じゃないけど、少ないんだよ。明日だけならいいけど、この先もそれなりにやっぱり旦那様とウィリアム様は狩りに行かれるだろう? それほどには無いんだよなあ」
「それもなかなか困るな」

 そう言いながら、甘い香りをさせたまだ温かいツボがそこにあるのに気付く。

「何だこりゃ」
「あー、それさっきマーシャが味見して下さいってうるさかった奴だ。って、夜じゃなあ」
「別に今からだっていいだろう?」
「甘いジャムとかは朝がいい。つか、そういうならお前食わないの?」
「俺は甘いものは好きじゃない」

 そう言いながら、パンとチーズ、それにゆで潰したじゃがいもに塩をかけたものを薄い紅茶で流し込む。

「肉が無いってのは困るな」
「それもあっての狩りじゃないのか? 旦那様達のお食事にはできれば鴨を! うずらを!」
「そして俺等にはお残りとしても牛を! 豚を! なんだがな。本当に管理人はどうしたんだ?」

 ふう、とダグラスは眉をひそめた。
 そうこうするうちに、仕事をあらかた終えた女達も入ってくる。

「先に食べていていいの!?」

 エメリーは二人に向かって問いかける。

「仕方ねえだろ? まだ仕事残ってるし、あっちに少し包んでやらねえと」
「あー、厩舎ね」

 納得してエメリーは席につく。
 それに継いで、他の三人もやってくる。

「ガードさんやミセス・エイムスはもう少し気になることがあるから先に、って言ってたわ。……って、それ何」

 エメリーも壺に気付く。

「ああ、さっきキッチンから試しで作ったからって。ここのラズベリーがすげえいい粒しているからって」
「あー、この香り、ラズベリーね。そんなに凄かったのかしら」
「え、ラズベリージャム!?」
「欲しい!」

 チェリア以外のメイドはすぐに飛びついた。

「あんたはいいの?」
「ちょっと今日は馬車に揺られすぎで、お腹が重くって……」
「そうなんだー。でもそんなこと言ってると食べちゃうよ」

 フランシアはパンを手にすると、ジャム壺をメイド達の真ん中へと持ってきた。
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