堤千代の作品に関するおぼえがき

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
1 / 1

殆どは作品のリストですが

しおりを挟む
 ワタシは吉屋信子について結構調べてきた時期があり、その一方で堤千代という、ある限定された期間にのみもの凄く人気があった作家も調べてはいました。
 ですがいかんせんついつい時間の無さとかでうやむやになってしまうので。



 なおこの方に関しては、妹さんの大屋絹子さんの書かれた追想記『オフエリアの薔薇』(私家版)と、『主婦之友』に昭和28年に連載された自伝「ひとすじの道」、それに亡くなった昭和30年辺りに『文藝春秋』に書かれた夫君の手記が手がかりに。
 ただし最後の一つ以外は入手が非常に困難。『オフエリア~』は古書店ネットで見つけないとまず手元には置けない。

 このひとは短篇が基本。ですが長編もそれなりに書いてます。
  吉屋信子が『月から来た男』を最後に昭和18年で抜けた後に終戦近くまで「あと山さき山」(単行本にはならなかったろーなー……書かれた時期が時期だし)連載していたことからすると、このひとは相当読まれていたはずなんですね。

☆「あと山さき山」は炭坑の話どす。
  どうやら義理の弟さん(前述の大屋さん)が九州の炭坑から手紙を送ってきた、ということが自伝にも出ています。
  この話/というかこの人が書いた、という点で興味深いのは、
・炭坑という場所を使って時局に応じたフィクションを書くストーリーテラーとしての才能 → これは戦後の主婦之友20年12月号では「鳩の指環」という「米兵とのちょっといい話」を既に書けてしまうあたりにも。ちなみにこの疎開中にこのひと二階から落ちて大怪我してます。
・作中の朝鮮人の扱い。
  話の中で、朴という旧両班出身の青年が出てくる。彼はこの話の当初は「半島人だから従軍できない」ことを辛く思い、せめて産業戦士として働こうとするという位置。で、最後には「とうとう召集令状がきた」と喜ぶ。
  これを堤千代という、情報を「人から聞くことしかできない」人が書くということが重要。この状態が「普通」であり、また、「主婦之友」で書かれてるということで、「当時の国民に望まれてる」状況だったことを物語ってる。
・何はともかく、この時代に完結できたということが凄い。

 上記つらつら言った理由。
 この人は「寝たきり作家」でした。
 言葉のあやではなく、先天性の心臓弁膜症で本当に病床でうつ伏せで原稿で書いていたという事実があります。
そういう人だからだからと思うけど、ともかく弱者の立場に身を置いた優しい話が多い。病人(戦病兵も含む)率が恐ろしく多い。
 で、男女恋愛は結構心情的に濃厚。
 忘れ去られるには惜しい。

 吉屋と並んでこの時代「フィクション」専門で書いていた作家なのだから。
 それでいて、性質が真逆と言ってもいい人だから。

 *小指
  新潮社

 *再会
  新潮社 昭和16年4月
  ・すみれ人形
  ・小さな靴下の話
  ・再会
  ・妻
  ・影なき人
  ・雛の扇
  ・子供
  ・親

 *夕雀草
  新潮社 昭和16年10月
  ・夕雀草
  ・遠き花
  ・海驢の茶碗
  ・きぬかつぎ
 ・母子草
  ・夢やらひ
 ・母
  ・真実
  ・匂ひ刷毛
  ・晩秋

 *柳の四季
  新潮社 昭和17年7月
  ・柳の四季
  ・京紅(主婦之友 昭和17年6月)
  ・霧晴れ
 ・雪の日
  ・其の日の妻
  ・母娘人形
  ・日本の女の魂
  ・春の毛糸
  ・朝顔
  ・心の日向
  ・空かける幸福

 *我が家の風
  新潮社 昭和18年

 *青い手袋
  新星株式会社出版部 昭和21年12月
  ・遠き花
  ・夕雀草
  ・きぬかつぎ
 ・灯
  ・青い手袋
  ・都わすれ
 ・匂ひ刷毛
  ・真実

 *匂ひ刷毛
  労働文化社 昭和21年

 *ラヴ・レター
 近代社 昭和22年4月
  ・二人で見る月(主婦之友 昭和21年2月号)
  ・鳩の指輪(主婦之友 昭和20年12月号)
  ・私の人形(主婦之友 昭和21年5月号)
  ・絵画・「冬と春」
  ・緑発のポン(主婦之友 昭和21年4月号)
  ・冬を越す日
  ・京紅(再)
  ・春の毛糸
  ・朝顔
  ・はづかしき
 ・ラウ・レター

*我が恋は世に早く
 労働文化社 昭和22年7月
  ・我が恋は世の早く(長編)

 *文鳥
  東西社 昭和22年9月
  ・文鳥(主婦之友 昭和18年1月~19年2月)
  ・再会(再)
  ・桃代

 *白粉帖
  世界社 昭和22年11月
  ・こひごろも
 ・野路の顫音トレモロ
  ・花束
  ・冬を越す日(再)
  ・緑発のポン(再)
  ・私の人形(再)
  ・想夫恋つまごい
  ・おひ羽根
  ・女郎花
  ・千松の恋
  ・カチュウシャどめ
 ・白粉帖

 *小鳥の接吻
  華頂書房 昭和23年9月
  ・小鳥の接吻
  ・雛鳥
  ・わびすけ椿
  ・伊勢の家
  ・紙つぶて
 ・夫婦箸
  ・我が子汝が子
  ・かほよ人の記

 *光は露に宿りて永遠に
 ロマンス社 昭和23年10月
  ・光は露に宿りて永遠に(長編)
  ・白鷺(主婦之友 昭和17年11月)
  ・初かりの野

 *花うばら
 東方社 昭和28年12月
  ・花うばら(長編)
  ・妻
  ・くせ
 ・きぬかつぎ(再)

 *ひなぎく物語
  東方社 昭和29年3月
  ・ひなぎく物語(長編)
  ・父
  ・白いルル
 ・おもい

*るり鳥
  東方社 昭和29年6月
  ・るり鳥(長編)
  ・ハバロフスクは雪
  ・カチュウシャどめ(再)

 *若い瞳
  東方社 昭和29年

 *かた想い
 東方社 昭和29年

 *れい子の道
  東方社 昭和29年

 *ねむの木さけども
 東方社 昭和29年


 *清ら妻
  山田書店 昭和30年2月
  ・清ら妻(長編)
  ・白鷺(再)
  ・初かりの野(再)

 *小紋鳥
  東方社 昭和30年

 *朱い花々
  東方社 昭和30年

 *愛
  東方社 昭和31年1月 東方新書
  ・愛
  ・親
  ・子 

 *花は散れども
 東方社 昭和32年

 *単行本未刊行?
・撫子の記(主婦之友 昭和17年7月)
・一時雨(主婦之友 昭和17年8月)
・麗春花(主婦之友 昭和17年9月)
・ふり鼓(主婦之友 昭和17年10月)
・勿忘草(主婦之友 昭和17年12月)
・あと山さき山(主婦之友 昭和年3月~20年3月)
・春光の下に(主婦之友 昭和20年4月)
・坊やの名前(主婦之友 昭和21年3月)
・くちなし女(オール読物 10巻9号)
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

【1話完結】あなたの恋人は毎夜わたしのベッドで寝てますよ。

ariya
ファンタジー
ソフィア・ラテットは、婚約者アレックスから疎まれていた。 彼の傍らには、いつも愛らしい恋人リリアンヌ。 婚約者の立場として注意しても、アレックスは聞く耳を持たない。 そして迎えた学園卒業パーティー。 ソフィアは公衆の面前で婚約破棄を言い渡される。 ガッツポーズを決めるリリアンヌ。 そのままアレックスに飛び込むかと思いきや―― 彼女が抱きついた先は、ソフィアだった。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

卒業パーティーのその後は

あんど もあ
ファンタジー
乙女ゲームの世界で、ヒロインのサンディに転生してくる人たちをいじめて幸せなエンディングへと導いてきた悪役令嬢のアルテミス。  だが、今回転生してきたサンディには匙を投げた。わがままで身勝手で享楽的、そんな人に私にいじめられる資格は無い。   そんなアルテミスだが、卒業パーティで断罪シーンがやってきて…。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

夫から「用済み」と言われ追い出されましたけれども

神々廻
恋愛
2人でいつも通り朝食をとっていたら、「お前はもう用済みだ。門の前に最低限の荷物をまとめさせた。朝食をとったら出ていけ」 と言われてしまいました。夫とは恋愛結婚だと思っていたのですが違ったようです。 大人しく出ていきますが、後悔しないで下さいね。 文字数が少ないのでサクッと読めます。お気に入り登録、コメントください!

妹の初恋は私の婚約者

あんど もあ
ファンタジー
卒業パーティーで、第一王子から婚約破棄を宣言されたカミーユ。王子が選んだのは、カミーユの妹ジョフロアだった。だが、ジョフロアには王子との婚約が許されない秘密があった。

冤罪で追放した男の末路

菜花
ファンタジー
ディアークは参っていた。仲間の一人がディアークを嫌ってるのか、回復魔法を絶対にかけないのだ。命にかかわる嫌がらせをする女はいらんと追放したが、その後冤罪だったと判明し……。カクヨムでも同じ話を投稿しています。

処理中です...