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47.吉屋信子の戦前長編小説について(4)昭和5年から支那事変までの作品(2)彼女の道

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 続いて「彼女の道」。そのまま主婦之友で連載。

 これは吉屋信子が米国廻りで戻ってきたときのことを参考にして書いている作品ですな。
 ……短編だと「男の無い風景」がこの米国の体験では興味深かったんだけど。ぴかぴかの米国のビルのトイレでずらっとならぶドア、女性の足に感動、的な。「異国点景」っていう旅行記の中に収録されてるんで、短編というか、まあその地で感じたことなんだろうけど。

 で。この話。
 留学していた二十代後半の女性が二人の娘持ちの金持ちと結婚するんだけど~
 すっかり忘れていたけど(笑) 昭和30年代にも再刊されてるんだな。
 まあまだ戦争の影が落ちてない、結構豊かな昭和初期、だったから昭和30年代にはちょうどよかったのかもしれんな。
 ということで人間関係とか。

https://plaza.rakuten.co.jp/edogawab/diary/201806030007/

 いやもうこの時点でヒロインの家族って一体、と思いますわー。
 これは研究しだしてからちゃんと読んだ作品なんで文章あらすじはなし。

 んで。
 個人的にはこのヒロインが、結婚の翌日、実に淡々と日記をつけてるんだよな……
 まあ一応「結婚してもいいや」と思った人とだから、だろうけど、それでも淡々と。
 でも一応初夜の後ですよ!
 そしてそのすぐ後、炭鉱で自分を守ってくれなかった! とすぐに幻滅してしまうとこ。
 夫が自分と結婚した目的が「頭のいい女に子供を生んでほしかった」と知ったらもう「こんな奴!」って感じになったり。
 かと思えば構ってくれないと何か寂しがり。
 んでもって夫が下半身不随になって財産手放した時点で「生きててほしい」とか思うのですが。
 これなー。

 このヒロインは一体何をそもそも期待していたんでしょうか。
 んでもって、そもそも自分をどう扱って欲しかったんでしょうか。

 確かに​「狭いながらも楽しい我が家」的ではあるんだけど、このヒロインの内心の希望である​「そんな希望でこの人の子供なんか産んでやるもんか」​が叶っちゃった形​なんだよなあ……
 「だから」それなりの愛情の対象になった、としたら……
 んでもって(いずれ夫もできる仕事はすると言ってもラストの時点で)自分の稼ぎで家計をきりもりするということになっちゃ…… 
 ちなみにこの時点で家には義娘と弟が居るわけで家事やってくれるわけで……

ということでつづく。
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