〈完結〉暇を持て余す19世紀英国のご婦人方が夫の留守に集まったけどとうとう話題も尽きたので「怖い話」をそれぞれ持ち寄って語り出した結果。

江戸川ばた散歩

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7 郵政省高官トートルズ氏の夫人パメラが語る①

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「その家には、毎日毎日手紙が届くんですって」

 そう郵政省高官トートルズ氏の夫人パメラは切り出した。



 別に私の夫が郵政省勤めだからって言う訳……
 なんでしょうね、やっぱり手紙についての話は結構飛び込んでくるものなのよ。
 別にその相手が何処とか、そういうことは口にする訳ではないの。
 噂話。
 あくまで噂話よ。
 ある裕福な未亡人の家に、毎日毎日手紙が届くんですって。
 それも、とても古い封筒に封印つきで。
 切手は最近のものなのだけどね。
 で、それをまず受け取るのはやはりメイドなのね。
 トレイに乗せて奥様にお届けする毎日。
 ただ、どうしても毎日来る手紙って気になるものでしょう?
 しかも、他の手紙と違って、古めかしい紙、色、模様……
 やっぱり気になる訳よ。
 そこでメイドの方も、さりげなく奥様に尋ねる訳。

「筆まめな方ですね」

 あくまでさりげなく言うのね。
 すると奥様こう、凄く嬉しそうに言うの。

「そうなの、あのひとったら、今でも相変わらず私のこと愛してるって、ほらこんな風に」

 そう言ってメイドにうきうきしながら見せる訳よ。
 自分が見ていいのか? と思いつつ、メイドは渡されるままにそれを見るの。
 すると確かにそういう内容。
 え? 奥様今恋人が密かにいるのかしら? と彼女は思う訳。
 でもそんなこと露骨に言う訳にはいかないから、やっぱりほんのり。

「本当に熱心なお言葉で…… 羨ましくなってしまいますわ」
「本当に、あのひとったら、昔っから言うことが変わらないのね」

 昔、あのひと?
 ひきつった表情を必死で隠してその場から立ち去ったメイドはやっぱりそこで確かめたくなるのよ。
 一つの仮説ね。
 だから、執事にどうしてもとお願いして、亡くなった御主人の書いたものが何か残っていないか、と訊ねる訳。
 まあ別に捨てても居ないし、自分の職務日誌に対する書き付けの様なものくらいなら、と執事もメイドに見せてやる訳。
 するとびっくり。
 と言うか、予想してらしたかもしれないけど、その筆跡が、手紙のものと同じなのよ。
 少なくともメイドにはそう見えたわ。
 何があったのか、と執事はぶるぶる震えるメイドに尋ねたの。 
 だってそうじゃない。
 彼女にしてみたら、古い封筒古い便せん、そこに書かれた筆跡は亡くなった旦那様のもの。
 やっぱりそこでまず考えるのは、旦那様の幽霊が出しているってことよね。
 だからメイドも自分の思ったことをもうそこでまくしたてたって訳よ。
 すると執事は悲しそうな顔になったの。
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