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38 マーリンズ男爵夫人ドロシアが語る②
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私今はマーリンズの家に嫁している訳ですが、結婚話は幾つかあった気がするのですよ。
ですが、誰とだったのか、少しでもお付き合いがあったのか、それとも両親がそれを頭から断ってしまって、なのか……
ともかく私は気付いたらマーリンズの妻となっておりました。
実を言うと、結婚式の記憶も無いのです。
でも、記憶が無いくらいの方が良いのかもしれませんね。
だって結婚式で教会を使ったならば、鐘の音もつきものではないですか。
でも私にはその記憶がありませんもの。
そう、私の記憶は結構あちこち胡乱なことが多くて。
子供も三人、息子一人と娘二人が居るんですが、何か、あと二人くらい産んだ気がするんです。
産んだ、まで行かなくとも、身籠もったという。
だけど実際は三人だけなのですよね。
皆もそう言いますし。
そうそう、胡乱と言えば、親戚関係のこともちょっと。
私小さい頃に遊んだ従兄弟が居るはずなんですが、今両親に聞くと、従姉妹はいたけど従兄弟は居ない、というんですよ。
きっとそれは親戚ではなく、両親の友人の子供と遊んだ時の記憶が混ざっているんだ、と言われたものです。
そう言われればそうなのかもしれません。
従兄弟が居た、子供が居た、という証拠は何処にも無いんですもの。
私の記憶だけだというんなら、私の思い込みや妄想かもしれないし。
ただ、一度元メイドだった女が実家に怒鳴り込んできたことがあったんですって。
何でも、私がそのメイドの夫をたぶらかして、何処かにやってしまったとか何とか。
でも私にはそんな記憶はありませんし。
ある訳がございませんし。
ただ、その女の声が酷く大きかったせいか、その時耳鳴りが酷かったんですよ。
そしてしばらくしてから、父にその女はどうしたのか、と聞いたら「何のことだい?」というのですね。
母も同様です。
実家のメイド達は私が住んでいた頃とはずいぶんと様変わりしてしまったので、その類いの話を聞いても判らない様ですし。
まあ疑問に思ったところで、毎日毎日やることはあるので、とりあえず横に避けておいたのですね。
ただそれが実家だけでなく、婚家の方でも、やがて起こる様になったんですの。
そう、たとえば息子が取ってきて、可愛いから飼おう、と物好きなことを言ったウサギ達。
ある日気付くと、小屋が空っぽになっていたり。
では息子は、というと、いつの間にか寄宿学校に入っていたり。
何だ君一緒に送っていったじゃないか、と夫は言うんですが、やっぱりそんな記憶無いんです。
ぽっかり何か時間が飛んでいる感じで。
そうこうするうちに、夫がやがてうちにあまり帰らない日々が続いたのですね。
そしてある日、女を連れてきたんですの。
住まわせるから、と言って。
綺麗なひとでしたわ。
陳腐な言い方ですが、大輪の真っ赤な薔薇の様な。
私はせいぜい、木香薔薇だと夫は言ってましたわ。
でもその女も、いつのまにか家から姿を消してましたの。
夫は何故か私に優しくなって。
そしてそんな時、耳鳴りがするんですね。
鐘の音の様にも聞こえますし、ほら、今何やらずっと鳴っているあの音にも近い様な。
ねえ、そこの貴女、この音が何なのか、貴女には判るのではなくって?
ですが、誰とだったのか、少しでもお付き合いがあったのか、それとも両親がそれを頭から断ってしまって、なのか……
ともかく私は気付いたらマーリンズの妻となっておりました。
実を言うと、結婚式の記憶も無いのです。
でも、記憶が無いくらいの方が良いのかもしれませんね。
だって結婚式で教会を使ったならば、鐘の音もつきものではないですか。
でも私にはその記憶がありませんもの。
そう、私の記憶は結構あちこち胡乱なことが多くて。
子供も三人、息子一人と娘二人が居るんですが、何か、あと二人くらい産んだ気がするんです。
産んだ、まで行かなくとも、身籠もったという。
だけど実際は三人だけなのですよね。
皆もそう言いますし。
そうそう、胡乱と言えば、親戚関係のこともちょっと。
私小さい頃に遊んだ従兄弟が居るはずなんですが、今両親に聞くと、従姉妹はいたけど従兄弟は居ない、というんですよ。
きっとそれは親戚ではなく、両親の友人の子供と遊んだ時の記憶が混ざっているんだ、と言われたものです。
そう言われればそうなのかもしれません。
従兄弟が居た、子供が居た、という証拠は何処にも無いんですもの。
私の記憶だけだというんなら、私の思い込みや妄想かもしれないし。
ただ、一度元メイドだった女が実家に怒鳴り込んできたことがあったんですって。
何でも、私がそのメイドの夫をたぶらかして、何処かにやってしまったとか何とか。
でも私にはそんな記憶はありませんし。
ある訳がございませんし。
ただ、その女の声が酷く大きかったせいか、その時耳鳴りが酷かったんですよ。
そしてしばらくしてから、父にその女はどうしたのか、と聞いたら「何のことだい?」というのですね。
母も同様です。
実家のメイド達は私が住んでいた頃とはずいぶんと様変わりしてしまったので、その類いの話を聞いても判らない様ですし。
まあ疑問に思ったところで、毎日毎日やることはあるので、とりあえず横に避けておいたのですね。
ただそれが実家だけでなく、婚家の方でも、やがて起こる様になったんですの。
そう、たとえば息子が取ってきて、可愛いから飼おう、と物好きなことを言ったウサギ達。
ある日気付くと、小屋が空っぽになっていたり。
では息子は、というと、いつの間にか寄宿学校に入っていたり。
何だ君一緒に送っていったじゃないか、と夫は言うんですが、やっぱりそんな記憶無いんです。
ぽっかり何か時間が飛んでいる感じで。
そうこうするうちに、夫がやがてうちにあまり帰らない日々が続いたのですね。
そしてある日、女を連れてきたんですの。
住まわせるから、と言って。
綺麗なひとでしたわ。
陳腐な言い方ですが、大輪の真っ赤な薔薇の様な。
私はせいぜい、木香薔薇だと夫は言ってましたわ。
でもその女も、いつのまにか家から姿を消してましたの。
夫は何故か私に優しくなって。
そしてそんな時、耳鳴りがするんですね。
鐘の音の様にも聞こえますし、ほら、今何やらずっと鳴っているあの音にも近い様な。
ねえ、そこの貴女、この音が何なのか、貴女には判るのではなくって?
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