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第4話 あまたの人が住みすぎる三条殿、そして仲忠くんは京極の跡地を訪ねる
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正頼宅の沢山の婿君達はそれぞれ用意された御殿に住みだした。
もっとも、仲忠と藤英以外の彼らには、元々親から譲られたり、自身で手に入れた邸がある。従ってそちらの家にも住みながら、できるだけ通って来るという形を取ることになった。
大概それは広く趣もあり、手回りの道具は勿論、納殿には財宝もある。
さてそうなると、京の都のうち、かなりの部分を正頼の関係者が占める様になってしまった。
一条殿より南、四条より北、壬生二条より東、京極より西には、全くの他人の邸宅というものは無くなってしまったのだ。
その三条殿の今の様子を少し遠くから眺めてみると。
まず東の町。これは大宮三条表にある。
その中の大殿には、女一宮が仲忠と一緒に仲良く暮らしている。
一宮は時々仲忠の前でも琴を弾いたりする様である。
すると「結構上手いじゃないの」と名手である仲忠が軽口を叩く。
一宮はそれに対し「あて宮の側に居たら覚えたのよ」とそれとなくあて宮の名を出してからかったりしている。
東の大殿は、藤壺の御方、あて宮の里となっている。彼女が時々退出する時の御座所である。彼女の生んだ二人の皇子が普段はここで育てられている。
南の大殿は元のまま、仁寿殿女御の里となっている。
北の大殿には大宮と正頼が暮らしている。
次に東南の町。
東の大殿には民部卿実正と、北の方である七の君が住んでいる。
西の大殿には兵部卿宮と、その妻となった十三の君袖宮が。
北東の大殿には左大臣忠雅とその北の方の六の君が。
西南の大殿には大納言忠俊と北の方八の君が。
そして西北の対には、涼と今宮が暮らしている。
ここには仕える人もたいそう多く、また祖父の紀伊守のおかげで実に物も豊富である。
西南の町には、大殿の上腹の子達が住んでいる。
西の隅には中務卿宮と北の方、中の君が。
東の対には平中納言と北の方の十二の君。
また西の隅には頭宰相直正と北の方、三の君。
西北の隅には源中将実頼と北の方、四の君。
東の中の隅には行正と北の方、十一の君。
またあちこちに、大殿の上腹の君達も住んでいる。
その西北の町の一角に、藤英と十四の君・けす宮が暮らしている。
仲忠同様、未だ自邸を持たず、それでいて学者等の訪問者も多い彼にやや広いところを、と宛ったと噂されている。
御帳も立てて、几帳も屏風も新しく整えられたこの辺りは、全ての調度が非常に美しい。
御衣掛には色々の衣が掛かっている。
そんな家に藤英が戻って来る時と言えば、美しい装束に身を包み、車には四十人の供人がついて来る。
大学の衆達は、土に膝をついて彼を迎えるのだ。
彼は集まってくる君達を、宮腹殿腹区別なく、誰にでも漢詩漢文を読ませる。
けす宮との仲はおおむね良好だった。
親子ほどの歳の差はあるのだが、けす宮は歳の割には利発で、そして何と言っても負けず嫌いだった。
そんな彼女に、時々藤英はその日にあったことを話す。
例えば。
「今日は東宮さまの所へ参内したところ、兵衛の君を使いにして、あなたの姉君から御言づてがあったよ。命さえあれば、こんな結構な機会にも恵まれるものだね」
「姉君」。すなわちあて宮からである。
「そんなに嬉しいの?」
無邪気を装ってけす宮は問いかける。
「それは嬉しいでしょう」
「ふーん、じゃあ私はこれから毎日あなたに『あめつち』文字一つづつの文を送ることにしようかしら」
と言ったとか言わなかったとか。
その他、三条殿には仁寿殿女御腹の宮も住んで居る。
四宮は左大臣の大君を妻とし、異腹の男の子が一人居る。
六宮は民部卿の大君を。
三宮――― 弾正宮には未だ妻が居ない。
八宮はまだ子供である。
正頼の子息達もあちこちに住んでいる。
太郎忠純は北の方に源氏の娘を迎え、男三人、女一人の子を持っている。
二郎師純の北の方は平中納言の中君。五人の男子が居る。
三郎祐純の北の方のうち、正妻は一世の源氏で、子は二人。また、他に近江守の娘と橘氏の娘も居る。
四郎連純の北の方は式部卿宮の学士の娘で子が三人居る。
五郎顕純の北の方は民部卿宮の娘。
そして宮あこ君と家あこ君は、同じ歳でまだ子供である。
しかしさすがに、これだけの人々が一緒に住んでいるというのは、なかなか狭苦しいものである。
皆、正頼邸で狭苦しくもそれなりに楽しく過ごしてはいたが、いつか自分の家へ妻を引き取って独立しようという者が大半だった。
*
そんな中、先にも記した通り、仲忠はこの時まだ、自分の家というものを持っていなかった。
その話を女一宮にすると、彼女は首を傾げてこう言った。
「でもあなた、昔うつほ住まいする前は何処に住んでいたの?」
「あ、そっか」
ぽん、と仲忠は手を叩く。言われてみればそうだった。
「忘れちゃったのね。なんて薄情なひと」
「いや、昔の家には、何かあまり記憶が無くって」
「そういうもの?」
「僕が出て行く時、京極の家はもう何もなくて寂れきったところだったから」
でも、と一宮の乳人子が不安気に口を挟む。
「大丈夫なのですか? そこは……」
「大丈夫って」
仲忠はきょとんとして問い返す。
「いくら寂れてしまったとはいえ、そこはまだ仲忠さまと尚侍さまのものなのでしょう? 土地の権利とか、そのまま放っておいて大丈夫なのですか?」
ふむ、と仲忠は持っていた扇を閉じて口に当てる。
「そうだね…… 権利は大丈夫。まだ母上の元にあるらしい。そうだな、また家を建てようかな。僕は持っていないし」
「あらあなた、ここから出るおつもり?」
ずい、と一宮は迫る。
「いや、ここは住み心地がいいし、わいわい皆居て楽しいし。でもいつかその、子供とか出来たら手狭になるかもしれないでしょ? その時のこととか」
あら、と一宮の頬が赤らむ。
「でもあなたと私の家だったら、父上が近場に用意して下さるって言ってるわ。だからその時に、あなたは私とそっちに引っ越しましょ。京極は遠すぎるもの」
「帝が? 一宮、そういう話があるの?」
具体的ではございませんが、と乳人子が口を挟む。
「帝は殊の外、一宮さまをお可愛がりでございましたので、いつか御降嫁の折りには、と考えてらした様でございます」
「そっか」
うんうん、と仲忠はうなづく。
「確かにそれだったら帝のご意志に背く様なことはしない方がいいね」
「あ、嫌ねえ、その言い方」
一宮は大げさに眉をひそめる。
「それじゃあこうしよう。京極には家は作る。でもそれは母上に差し上げるってことで」
「尚侍さまに?」
「うん。元々母上の家な訳だし。あそこは。それにまだ僕自身、母上に尚侍就任のお祝いもしていなかったなあ、と思って」
「それがいいわ。でもあなた、いつまで経っても尚侍さまに会わせてくれないじゃないの。こんなご近所なのに」
ぷう、と一宮はふくれる。
「そうなんだよねえ。母上も一宮に会いたい会いたいって言うんだけど。なかなか僕もあちらも色々御公務とか忙しくて」
ふう、と仲忠はため息をつく。
「だったらさっさとその機会を作ってよ」
「そうだね」
ふふ、と仲忠は笑う。
本当にまあ、とそんな二人の会話を聞いて乳人子は呆れる。
一宮は仲忠には我が儘に徹する、と彼女に言ったが、確かにその様だった。
そしてまた、どうも仲忠はそれを実に楽しんでいる、と。
*
それから少し経ったある日、仲忠は供人を数人だけ連れて、京極へと出向いた。
「仲忠さま、この辺りですか?」
「そのはずだけど」
そういう仲忠の言葉もいまいち心許ない。
かつて住んでいたと思われる場所は、見渡す限り荒れ果てて草、草、草。
周囲には人家もなく、ただぽつんと昔ながらの寝殿が一つ建っているだけだった。
「あれ…… かな」
仲忠のつぶやきに供人達は、あれしか無いのでは、と返しながら、近づいて行く。
「うわ、凄いな」
「すげえ、簀子も廂も格子も無いぜ」
「仲忠さまぁ、塗籠《ぬりごめ》まで丸見えですがぁ…… 本当にここに昔住んでらしたのですか?」
まあね、と仲忠は答える。
「物騒だから、この塗籠の中で暮らしてたはずだよ。昔も確かに簀子は無かったけど、うーん、ここまで寂れてしまうのかぁ」
半ば呆れた様子で、仲忠も足を進める。
人の手の入らない野は、草の丈をも尋常で無い高さにまで伸ばさせる。
冬の野の、乾いた草をがさがさとかき分け、他に何も無いか、と見渡す。
「仲忠さま」
先駆けをしている者が彼に知らせる。
「西北の隅に、頑丈そうな大きな蔵がございます」
「蔵?」
仲忠は首を傾げる。
「そんなものあったかな。母上の敷地の範囲なのかちょっと確かめてみてくれないか」
供人の一人は、周囲を確かめ、大丈夫だ、と報告する。
「よし、あの蔵を調べてみよう」
仲忠は供人達をうながした。
うわ、と先に進んだ供人が不意に尻餅をついた。
「どうしたんだ」
仲忠は問いかける。
「ひ、人の骨が」
「人の?」
仲忠はひっくり返った供人の居る辺りへと足を進める。
かさかさかさ、と草が乾いた音を立てる。
その足の先、草の倒れた向こうに―――あった。
「確かに骨だね」
「仲忠さま! そんな冷静に!」
「だって骨は骨だし。あ、結構あるね」
仲忠さま、と供人達はがさがさとそのまま歩みを進める主人に思わず口を歪めた。それでも何とか主人の踏んだ草の上を獣道の様に進んで行く。
するとそこにはもれなく骨。時にはまだ髪のついている髑髏も落ちている。
供人達が憂鬱な気持ちで進んで行くと、既に仲忠は大きな、頑丈そうな蔵の前に立っていた。
「な、仲忠さま」
「ねえ、ちょっと皆来てくれないか」
主人の仰せとはあらば。だが良く見ると、何処よりも何よりも、蔵の回りに骨が散乱しているのだ。
「な、何でしょう」
「開けたいんだけど、開くかなあ」
主人はのんびりした声で問いかけてくる。
供人達は慌てて駆けつける。大きな蔵に似つかわしく、実にがっちりとした錠がかかっていた。
「錠の上に更に金属で封をしてありますねえ。ずいぶんと厳重だ。おや、仲忠さま、何か文字が」
仲忠はその言葉に錠をのぞき込む。
そこには「俊蔭《としかげ》」と祖父の名が刻まれていた。思わず彼は叫んだ。
「そうか、ここはお祖父さまの文庫だったんだ!」
「文庫ですか? しかし清原俊蔭どのの文庫だったら、それこそ皆落ちぶれたとなったら手の出し放題、だったのでは」
「うん、僕もそう思ってた。代々学者の家だと言うのに、一枚の書物もなかったからね」
「琴についても何かお残しでは」
「別に音楽の家では無かったのに、琴があったのも不思議ではあったけど。琴自体も、十あったと聞くけど、殆ど帝をはじめ、皆さんに差し上げてしまったと聞いてるんだ。だから僕等の手元には殆ど何も残ってなかった」
「しかし全く、というのも不思議なものですな」
「そう、そのあたりを考える暇もなかったし。よし、開けなくちゃ」
仲忠は大きくうなづき、供人達にその用意をする様に命じ始める。
と。
「お止め下され!」
河原の方から、老夫婦が手を上げ、よたよたと進んで来る。
その様子があまりにも必死だったので、仲忠は彼らを供人に連れて来させた。
「お願いでございます、偉いお殿さま。ここを一刻も早くお離れ下さいませ!」
老夫婦はそう言って、涙を流して懇願する。
「何故その様なことを言うのだ」
供人が問う。
「ともかくお離れ下さいませ! その折りに事情を説明致します。この蔵は呪われているのです。多くの人を取り殺した蔵なのです。御覧下さい! この回りに転がった多くの屍を!」
「離れたら事情を説明してくれるのだな」
仲忠は老夫婦に問いかけた。
「ええ、ええ! ともかくお離れ下さい! お早く!」
急かされる様にして、仲忠と供人達は、老夫婦の家のある辺りまで引き上げた。
「では話してくれるな」
仲忠はそこで膝をつく二人の元に、そっとしゃがみ込んで問いかける。勿体ない、とばかりに更に二人は畏まる。
「かつてこの京極の辺りは、人家も多く、繁盛していた所でした。ところがこの様に、人影もなく滅びてしまって三十年近くになります」
そして彼らは仲忠にその間の話を始めた。
「かつてここには、昔、たった一人の子を帝の御命令で唐土《もろこし》に遣わした方の御殿がございました。
しかしその子が帰って来るのを見届けることなく、ご夫婦共々お亡くなりになりました。遣わされた若君が戻ってこられたのは、その後でございます。
その後その若君――― 清原俊蔭さま、というお方でした」
ああ、と供人達は大きくうなづく。それから、と仲忠はうながす。
「はい。俊蔭さまはここに非常に清らかに美しいお屋敷をお作りになって住んでいらっしゃいました。
そのうち、姫さまが一人お生まれになりました。
姫さまが小さな時から、ここではこの世では聴くことの出来ない様な微妙な音声楽の声が始終しておりました。それは素晴らしいものでした」
老人はその時のことを思い出したのだろうか、うっとりとした様に目を伏せる。
「それを聴くと、気分が良くなり、病気の者も治り、老いたものも若返った気持ちになることから、京中の人々がこの京極の家に集まって、その不思議な音声楽を聴きに来たものです」
それはあり得る、と供人達は思う。仲忠の神泉苑での奇跡を彼らは耳にしていた。
「姫さまがお年頃におなりになったので、御門には用心の為か、鎖をして人が通れなくなったのです。
その頃は結婚申し込みの御使いが夜明けになると、家の前にずらりと立ち並んでいたものでした。
しかし文すら受け取ってもらえない者が大半だった様です。その中には帝や皇子、宮、それにあちこちの大臣家からも申し込みがあったと聞いております」
「そんな栄えていた家が一体どうして?」
仲忠はあくまで他人事の様に問いかける。はい、と老夫婦は続ける。
「それは、俊蔭さまご夫婦がお亡くなりになったからでございます」
「それは」
「仲の良いご夫婦だと聞いておりました。
俊蔭さまは奥方さま一人をお守りになり、姫さまと三人、慎ましくも楽しく暮らしてらした様です。
ですがまず奥方さまが病に倒れ、呆気なくお亡くなりになりました。
すると俊蔭さまもそれを追うように…… 哀れなのは姫さまの方でした」
そうか、と供人達もその「姫」が誰であるのか気付く。
「ご両親を亡くされた姫さまは果たして生きていらっしゃるのかどうなのかねそれすらも判らなくなりました。
するとこのお屋敷自体も、誰かが守るということも無く、加茂の河原に家も無く住む者や、近くの里人がすっかり荒らしてしまい、一、二年で今の様な有様に」
当時のことを思い出したのか、媼の方が袖を目に当てる。
「家の中を打ち壊したり、道具類を盗み取ったりした様ですが、やがてもう何も無いとばかりに、そちらへの狼藉は止みました。そして代わりにそういった者達が目をつけたのが、あの蔵でございます」
「では蔵を襲おうとした者は過去には居たのだな」
仲忠は問いかける。はい、と翁が答える。
「きっと宝物がたくさんあるだろう、と様々な者達が近づきました。ですが」
翁は恐ろしそうにぶるっと身体を奮わせた。
「側に寄った者は、皆すぐに倒れて、……大勢の者が死にました」
うわ、と供人が声を立てた。
それで慌てていたのか、と仲忠は納得する。
翁は更に低い声になって続ける。気のせいか、顔色も悪い。
「それだけではございません。夜になると、人の眼には見えない何者かが馬に乗って警戒の弓弦打ちをしながら、蔵の周囲を回るのです……」
「そなた、見たことがあるのか?」
仲忠はそっと問いかける。
「おお、そんな恐ろしいことを!」
「だがずいぶんと見てきたことの様に話してくれたではないか」
「私が見た部分もあります。しかしあの恐ろしい出来事に関しては、もしこの目で見ていたなら、私の命など、とうの昔に尽きていたでしょう。齢百、今の今になるまで生き延びて来られたのは、実にその恐ろしい話を耳にするたびに気を付けてきたからでございます」
「しかし、私をよくぞ止めてくれたな」
「この国ではついぞ見ることができない様な素晴らしく美しい方が、祟りなどのために若いお命を散らしてしまう様なことがあったら何とも悲しいことでしょう。ですからこうしてお伝えした次第でございます」
「ですが年も年。こうしてぐずぐずと歩くこともままならず」
媼が続けて言う。
仲忠は二人の様子を暫く眺めていたが、やがて二人の肩に手を置いた。二人は驚いて顔を上げる。
「そなた達、よくぞ申してくれた。そうか、ではその祟りとやらのせいで、周囲に人も住まなくなったのだな」
「は、はい! 開けようとして倒れた人、どうしても開けてみせる、と意気込んだ者もありましたが、皆駄目でした。いえ、それだけじゃありません。そういう者が出た家は、皆決まって悪いことが起こり、一家全て絶えてしまったのです」
「そうか」
仲忠はつぶやくと、蔵の方を一度見る。そして着ていた袿を一襲脱ぐと、老夫婦に分け与えた。
どういうことか、と二人は驚き、袿と仲忠の顔を交互に見比べた。
「二人に少々頼みがあるのだが」
「は…… はい、何なりと」
「これからも先、開ける者があるかもしれない。できたら、でいいのだが、あの寝殿のそばに居て、この蔵にまた同じ様なことをする者が居るか、見張っていてくれないか?」
「そ、それは……」
「それと、その蔵の辺り、あまりにも凄いことになっているから、汚れたものや死骸は野辺に捨ててくれまいか?」
頼む、と仲忠は笑い掛けた。
*
二人はそのまま住処へと戻ったが、仲忠からもらった袿があまりに素晴らしくて、どうしていいのかさっぱり判らなかった。
何せその袿ときたら、今までに嗅いだことも無い良い香りを放つ、美しい綾の掻練なのである。自分達の手に余る。
どうしたものかと思っている、寺に参詣する人がこの着物を見つけて、多額の金を払って引き取ってくれた。
助かった、と老夫婦は思った。
そこで彼らはその代金を孫達に渡し、仲忠に言われた様に蔵の周囲を綺麗にさせた。
もっとも、仲忠と藤英以外の彼らには、元々親から譲られたり、自身で手に入れた邸がある。従ってそちらの家にも住みながら、できるだけ通って来るという形を取ることになった。
大概それは広く趣もあり、手回りの道具は勿論、納殿には財宝もある。
さてそうなると、京の都のうち、かなりの部分を正頼の関係者が占める様になってしまった。
一条殿より南、四条より北、壬生二条より東、京極より西には、全くの他人の邸宅というものは無くなってしまったのだ。
その三条殿の今の様子を少し遠くから眺めてみると。
まず東の町。これは大宮三条表にある。
その中の大殿には、女一宮が仲忠と一緒に仲良く暮らしている。
一宮は時々仲忠の前でも琴を弾いたりする様である。
すると「結構上手いじゃないの」と名手である仲忠が軽口を叩く。
一宮はそれに対し「あて宮の側に居たら覚えたのよ」とそれとなくあて宮の名を出してからかったりしている。
東の大殿は、藤壺の御方、あて宮の里となっている。彼女が時々退出する時の御座所である。彼女の生んだ二人の皇子が普段はここで育てられている。
南の大殿は元のまま、仁寿殿女御の里となっている。
北の大殿には大宮と正頼が暮らしている。
次に東南の町。
東の大殿には民部卿実正と、北の方である七の君が住んでいる。
西の大殿には兵部卿宮と、その妻となった十三の君袖宮が。
北東の大殿には左大臣忠雅とその北の方の六の君が。
西南の大殿には大納言忠俊と北の方八の君が。
そして西北の対には、涼と今宮が暮らしている。
ここには仕える人もたいそう多く、また祖父の紀伊守のおかげで実に物も豊富である。
西南の町には、大殿の上腹の子達が住んでいる。
西の隅には中務卿宮と北の方、中の君が。
東の対には平中納言と北の方の十二の君。
また西の隅には頭宰相直正と北の方、三の君。
西北の隅には源中将実頼と北の方、四の君。
東の中の隅には行正と北の方、十一の君。
またあちこちに、大殿の上腹の君達も住んでいる。
その西北の町の一角に、藤英と十四の君・けす宮が暮らしている。
仲忠同様、未だ自邸を持たず、それでいて学者等の訪問者も多い彼にやや広いところを、と宛ったと噂されている。
御帳も立てて、几帳も屏風も新しく整えられたこの辺りは、全ての調度が非常に美しい。
御衣掛には色々の衣が掛かっている。
そんな家に藤英が戻って来る時と言えば、美しい装束に身を包み、車には四十人の供人がついて来る。
大学の衆達は、土に膝をついて彼を迎えるのだ。
彼は集まってくる君達を、宮腹殿腹区別なく、誰にでも漢詩漢文を読ませる。
けす宮との仲はおおむね良好だった。
親子ほどの歳の差はあるのだが、けす宮は歳の割には利発で、そして何と言っても負けず嫌いだった。
そんな彼女に、時々藤英はその日にあったことを話す。
例えば。
「今日は東宮さまの所へ参内したところ、兵衛の君を使いにして、あなたの姉君から御言づてがあったよ。命さえあれば、こんな結構な機会にも恵まれるものだね」
「姉君」。すなわちあて宮からである。
「そんなに嬉しいの?」
無邪気を装ってけす宮は問いかける。
「それは嬉しいでしょう」
「ふーん、じゃあ私はこれから毎日あなたに『あめつち』文字一つづつの文を送ることにしようかしら」
と言ったとか言わなかったとか。
その他、三条殿には仁寿殿女御腹の宮も住んで居る。
四宮は左大臣の大君を妻とし、異腹の男の子が一人居る。
六宮は民部卿の大君を。
三宮――― 弾正宮には未だ妻が居ない。
八宮はまだ子供である。
正頼の子息達もあちこちに住んでいる。
太郎忠純は北の方に源氏の娘を迎え、男三人、女一人の子を持っている。
二郎師純の北の方は平中納言の中君。五人の男子が居る。
三郎祐純の北の方のうち、正妻は一世の源氏で、子は二人。また、他に近江守の娘と橘氏の娘も居る。
四郎連純の北の方は式部卿宮の学士の娘で子が三人居る。
五郎顕純の北の方は民部卿宮の娘。
そして宮あこ君と家あこ君は、同じ歳でまだ子供である。
しかしさすがに、これだけの人々が一緒に住んでいるというのは、なかなか狭苦しいものである。
皆、正頼邸で狭苦しくもそれなりに楽しく過ごしてはいたが、いつか自分の家へ妻を引き取って独立しようという者が大半だった。
*
そんな中、先にも記した通り、仲忠はこの時まだ、自分の家というものを持っていなかった。
その話を女一宮にすると、彼女は首を傾げてこう言った。
「でもあなた、昔うつほ住まいする前は何処に住んでいたの?」
「あ、そっか」
ぽん、と仲忠は手を叩く。言われてみればそうだった。
「忘れちゃったのね。なんて薄情なひと」
「いや、昔の家には、何かあまり記憶が無くって」
「そういうもの?」
「僕が出て行く時、京極の家はもう何もなくて寂れきったところだったから」
でも、と一宮の乳人子が不安気に口を挟む。
「大丈夫なのですか? そこは……」
「大丈夫って」
仲忠はきょとんとして問い返す。
「いくら寂れてしまったとはいえ、そこはまだ仲忠さまと尚侍さまのものなのでしょう? 土地の権利とか、そのまま放っておいて大丈夫なのですか?」
ふむ、と仲忠は持っていた扇を閉じて口に当てる。
「そうだね…… 権利は大丈夫。まだ母上の元にあるらしい。そうだな、また家を建てようかな。僕は持っていないし」
「あらあなた、ここから出るおつもり?」
ずい、と一宮は迫る。
「いや、ここは住み心地がいいし、わいわい皆居て楽しいし。でもいつかその、子供とか出来たら手狭になるかもしれないでしょ? その時のこととか」
あら、と一宮の頬が赤らむ。
「でもあなたと私の家だったら、父上が近場に用意して下さるって言ってるわ。だからその時に、あなたは私とそっちに引っ越しましょ。京極は遠すぎるもの」
「帝が? 一宮、そういう話があるの?」
具体的ではございませんが、と乳人子が口を挟む。
「帝は殊の外、一宮さまをお可愛がりでございましたので、いつか御降嫁の折りには、と考えてらした様でございます」
「そっか」
うんうん、と仲忠はうなづく。
「確かにそれだったら帝のご意志に背く様なことはしない方がいいね」
「あ、嫌ねえ、その言い方」
一宮は大げさに眉をひそめる。
「それじゃあこうしよう。京極には家は作る。でもそれは母上に差し上げるってことで」
「尚侍さまに?」
「うん。元々母上の家な訳だし。あそこは。それにまだ僕自身、母上に尚侍就任のお祝いもしていなかったなあ、と思って」
「それがいいわ。でもあなた、いつまで経っても尚侍さまに会わせてくれないじゃないの。こんなご近所なのに」
ぷう、と一宮はふくれる。
「そうなんだよねえ。母上も一宮に会いたい会いたいって言うんだけど。なかなか僕もあちらも色々御公務とか忙しくて」
ふう、と仲忠はため息をつく。
「だったらさっさとその機会を作ってよ」
「そうだね」
ふふ、と仲忠は笑う。
本当にまあ、とそんな二人の会話を聞いて乳人子は呆れる。
一宮は仲忠には我が儘に徹する、と彼女に言ったが、確かにその様だった。
そしてまた、どうも仲忠はそれを実に楽しんでいる、と。
*
それから少し経ったある日、仲忠は供人を数人だけ連れて、京極へと出向いた。
「仲忠さま、この辺りですか?」
「そのはずだけど」
そういう仲忠の言葉もいまいち心許ない。
かつて住んでいたと思われる場所は、見渡す限り荒れ果てて草、草、草。
周囲には人家もなく、ただぽつんと昔ながらの寝殿が一つ建っているだけだった。
「あれ…… かな」
仲忠のつぶやきに供人達は、あれしか無いのでは、と返しながら、近づいて行く。
「うわ、凄いな」
「すげえ、簀子も廂も格子も無いぜ」
「仲忠さまぁ、塗籠《ぬりごめ》まで丸見えですがぁ…… 本当にここに昔住んでらしたのですか?」
まあね、と仲忠は答える。
「物騒だから、この塗籠の中で暮らしてたはずだよ。昔も確かに簀子は無かったけど、うーん、ここまで寂れてしまうのかぁ」
半ば呆れた様子で、仲忠も足を進める。
人の手の入らない野は、草の丈をも尋常で無い高さにまで伸ばさせる。
冬の野の、乾いた草をがさがさとかき分け、他に何も無いか、と見渡す。
「仲忠さま」
先駆けをしている者が彼に知らせる。
「西北の隅に、頑丈そうな大きな蔵がございます」
「蔵?」
仲忠は首を傾げる。
「そんなものあったかな。母上の敷地の範囲なのかちょっと確かめてみてくれないか」
供人の一人は、周囲を確かめ、大丈夫だ、と報告する。
「よし、あの蔵を調べてみよう」
仲忠は供人達をうながした。
うわ、と先に進んだ供人が不意に尻餅をついた。
「どうしたんだ」
仲忠は問いかける。
「ひ、人の骨が」
「人の?」
仲忠はひっくり返った供人の居る辺りへと足を進める。
かさかさかさ、と草が乾いた音を立てる。
その足の先、草の倒れた向こうに―――あった。
「確かに骨だね」
「仲忠さま! そんな冷静に!」
「だって骨は骨だし。あ、結構あるね」
仲忠さま、と供人達はがさがさとそのまま歩みを進める主人に思わず口を歪めた。それでも何とか主人の踏んだ草の上を獣道の様に進んで行く。
するとそこにはもれなく骨。時にはまだ髪のついている髑髏も落ちている。
供人達が憂鬱な気持ちで進んで行くと、既に仲忠は大きな、頑丈そうな蔵の前に立っていた。
「な、仲忠さま」
「ねえ、ちょっと皆来てくれないか」
主人の仰せとはあらば。だが良く見ると、何処よりも何よりも、蔵の回りに骨が散乱しているのだ。
「な、何でしょう」
「開けたいんだけど、開くかなあ」
主人はのんびりした声で問いかけてくる。
供人達は慌てて駆けつける。大きな蔵に似つかわしく、実にがっちりとした錠がかかっていた。
「錠の上に更に金属で封をしてありますねえ。ずいぶんと厳重だ。おや、仲忠さま、何か文字が」
仲忠はその言葉に錠をのぞき込む。
そこには「俊蔭《としかげ》」と祖父の名が刻まれていた。思わず彼は叫んだ。
「そうか、ここはお祖父さまの文庫だったんだ!」
「文庫ですか? しかし清原俊蔭どのの文庫だったら、それこそ皆落ちぶれたとなったら手の出し放題、だったのでは」
「うん、僕もそう思ってた。代々学者の家だと言うのに、一枚の書物もなかったからね」
「琴についても何かお残しでは」
「別に音楽の家では無かったのに、琴があったのも不思議ではあったけど。琴自体も、十あったと聞くけど、殆ど帝をはじめ、皆さんに差し上げてしまったと聞いてるんだ。だから僕等の手元には殆ど何も残ってなかった」
「しかし全く、というのも不思議なものですな」
「そう、そのあたりを考える暇もなかったし。よし、開けなくちゃ」
仲忠は大きくうなづき、供人達にその用意をする様に命じ始める。
と。
「お止め下され!」
河原の方から、老夫婦が手を上げ、よたよたと進んで来る。
その様子があまりにも必死だったので、仲忠は彼らを供人に連れて来させた。
「お願いでございます、偉いお殿さま。ここを一刻も早くお離れ下さいませ!」
老夫婦はそう言って、涙を流して懇願する。
「何故その様なことを言うのだ」
供人が問う。
「ともかくお離れ下さいませ! その折りに事情を説明致します。この蔵は呪われているのです。多くの人を取り殺した蔵なのです。御覧下さい! この回りに転がった多くの屍を!」
「離れたら事情を説明してくれるのだな」
仲忠は老夫婦に問いかけた。
「ええ、ええ! ともかくお離れ下さい! お早く!」
急かされる様にして、仲忠と供人達は、老夫婦の家のある辺りまで引き上げた。
「では話してくれるな」
仲忠はそこで膝をつく二人の元に、そっとしゃがみ込んで問いかける。勿体ない、とばかりに更に二人は畏まる。
「かつてこの京極の辺りは、人家も多く、繁盛していた所でした。ところがこの様に、人影もなく滅びてしまって三十年近くになります」
そして彼らは仲忠にその間の話を始めた。
「かつてここには、昔、たった一人の子を帝の御命令で唐土《もろこし》に遣わした方の御殿がございました。
しかしその子が帰って来るのを見届けることなく、ご夫婦共々お亡くなりになりました。遣わされた若君が戻ってこられたのは、その後でございます。
その後その若君――― 清原俊蔭さま、というお方でした」
ああ、と供人達は大きくうなづく。それから、と仲忠はうながす。
「はい。俊蔭さまはここに非常に清らかに美しいお屋敷をお作りになって住んでいらっしゃいました。
そのうち、姫さまが一人お生まれになりました。
姫さまが小さな時から、ここではこの世では聴くことの出来ない様な微妙な音声楽の声が始終しておりました。それは素晴らしいものでした」
老人はその時のことを思い出したのだろうか、うっとりとした様に目を伏せる。
「それを聴くと、気分が良くなり、病気の者も治り、老いたものも若返った気持ちになることから、京中の人々がこの京極の家に集まって、その不思議な音声楽を聴きに来たものです」
それはあり得る、と供人達は思う。仲忠の神泉苑での奇跡を彼らは耳にしていた。
「姫さまがお年頃におなりになったので、御門には用心の為か、鎖をして人が通れなくなったのです。
その頃は結婚申し込みの御使いが夜明けになると、家の前にずらりと立ち並んでいたものでした。
しかし文すら受け取ってもらえない者が大半だった様です。その中には帝や皇子、宮、それにあちこちの大臣家からも申し込みがあったと聞いております」
「そんな栄えていた家が一体どうして?」
仲忠はあくまで他人事の様に問いかける。はい、と老夫婦は続ける。
「それは、俊蔭さまご夫婦がお亡くなりになったからでございます」
「それは」
「仲の良いご夫婦だと聞いておりました。
俊蔭さまは奥方さま一人をお守りになり、姫さまと三人、慎ましくも楽しく暮らしてらした様です。
ですがまず奥方さまが病に倒れ、呆気なくお亡くなりになりました。
すると俊蔭さまもそれを追うように…… 哀れなのは姫さまの方でした」
そうか、と供人達もその「姫」が誰であるのか気付く。
「ご両親を亡くされた姫さまは果たして生きていらっしゃるのかどうなのかねそれすらも判らなくなりました。
するとこのお屋敷自体も、誰かが守るということも無く、加茂の河原に家も無く住む者や、近くの里人がすっかり荒らしてしまい、一、二年で今の様な有様に」
当時のことを思い出したのか、媼の方が袖を目に当てる。
「家の中を打ち壊したり、道具類を盗み取ったりした様ですが、やがてもう何も無いとばかりに、そちらへの狼藉は止みました。そして代わりにそういった者達が目をつけたのが、あの蔵でございます」
「では蔵を襲おうとした者は過去には居たのだな」
仲忠は問いかける。はい、と翁が答える。
「きっと宝物がたくさんあるだろう、と様々な者達が近づきました。ですが」
翁は恐ろしそうにぶるっと身体を奮わせた。
「側に寄った者は、皆すぐに倒れて、……大勢の者が死にました」
うわ、と供人が声を立てた。
それで慌てていたのか、と仲忠は納得する。
翁は更に低い声になって続ける。気のせいか、顔色も悪い。
「それだけではございません。夜になると、人の眼には見えない何者かが馬に乗って警戒の弓弦打ちをしながら、蔵の周囲を回るのです……」
「そなた、見たことがあるのか?」
仲忠はそっと問いかける。
「おお、そんな恐ろしいことを!」
「だがずいぶんと見てきたことの様に話してくれたではないか」
「私が見た部分もあります。しかしあの恐ろしい出来事に関しては、もしこの目で見ていたなら、私の命など、とうの昔に尽きていたでしょう。齢百、今の今になるまで生き延びて来られたのは、実にその恐ろしい話を耳にするたびに気を付けてきたからでございます」
「しかし、私をよくぞ止めてくれたな」
「この国ではついぞ見ることができない様な素晴らしく美しい方が、祟りなどのために若いお命を散らしてしまう様なことがあったら何とも悲しいことでしょう。ですからこうしてお伝えした次第でございます」
「ですが年も年。こうしてぐずぐずと歩くこともままならず」
媼が続けて言う。
仲忠は二人の様子を暫く眺めていたが、やがて二人の肩に手を置いた。二人は驚いて顔を上げる。
「そなた達、よくぞ申してくれた。そうか、ではその祟りとやらのせいで、周囲に人も住まなくなったのだな」
「は、はい! 開けようとして倒れた人、どうしても開けてみせる、と意気込んだ者もありましたが、皆駄目でした。いえ、それだけじゃありません。そういう者が出た家は、皆決まって悪いことが起こり、一家全て絶えてしまったのです」
「そうか」
仲忠はつぶやくと、蔵の方を一度見る。そして着ていた袿を一襲脱ぐと、老夫婦に分け与えた。
どういうことか、と二人は驚き、袿と仲忠の顔を交互に見比べた。
「二人に少々頼みがあるのだが」
「は…… はい、何なりと」
「これからも先、開ける者があるかもしれない。できたら、でいいのだが、あの寝殿のそばに居て、この蔵にまた同じ様なことをする者が居るか、見張っていてくれないか?」
「そ、それは……」
「それと、その蔵の辺り、あまりにも凄いことになっているから、汚れたものや死骸は野辺に捨ててくれまいか?」
頼む、と仲忠は笑い掛けた。
*
二人はそのまま住処へと戻ったが、仲忠からもらった袿があまりに素晴らしくて、どうしていいのかさっぱり判らなかった。
何せその袿ときたら、今までに嗅いだことも無い良い香りを放つ、美しい綾の掻練なのである。自分達の手に余る。
どうしたものかと思っている、寺に参詣する人がこの着物を見つけて、多額の金を払って引き取ってくれた。
助かった、と老夫婦は思った。
そこで彼らはその代金を孫達に渡し、仲忠に言われた様に蔵の周囲を綺麗にさせた。
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