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15 幕間2-2 王家の話し合い②
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八人の王の子の中で、エルデとアマニの発言は、王女とはいえ常に重視される傾向にある。
これは後ろ盾のある第一側妃の娘ということが最も大きい。
その上この二人は聡明だった。
おなじく後ろ盾のある第二側妃から生まれたセインより一つ上のユルシュは政に対してさして興味を抱いていない様に振る舞っている。
すぐ後に第三側妃から待望の男子が生まれたということで影が薄くなってしまったことが未だに尾を引いている。というのが周囲の評である。
とは言え、当人は好きなことをしてのんびりと暮らしている様で、降嫁先がなかなか決まらないことも気にしていないとのことだった。
第三側妃からは、セインと、そして彼の二つ下の第三王女クイデが生まれている。
クイデは後ろ盾の少ない第三側妃の教育の結果か、ユルシュと違い、興味の無さではなく、あくまで控えめに生きている様だった。
とは言え、次期王太子と見なされていたセインの妹ということで、彼女には降嫁の申し込みはそれなりにあった。母親はそれに対し、好きな相手を選びなさい、と示していた。結果、ある侯爵家に嫁ぐことが決まっている。
第四側妃から生まれたトバーシュは、アマニと同年であること、そして第四側妃自体が第一側妃に対し常に慎ましい姿勢を保っていることからか、この二人は仲が良かった。
そして第五側妃からは、王子が二人、セインより二つ下の第二王子ミルト、五つ下の第三王子ナギスかが生まれている。
第五側妃はそもそもは庶民から伯爵家を通して王宮に入った女性であり、後ろ盾は弱かった。
だが、王子を二人産んだこと、そしてその王子が今の歳まで生き残っているということで、近年次々と後ろ盾になろうという貴族が現れている。
第五側妃当人は、第三側妃の死に涙する様な優しい女性であるが、その仮親になっている伯爵家は次第に勢力を増しつつあると言われている。
そんな中の正妃は、その地位と後ろ盾はともかく、子供が居ないことで常にその権力基盤が揺らいでいる状態と言ってもいい。
そして二王子はこう言う。
「俺は正直…… 兄上が、何故辺境伯令嬢がやってきた時に、あれほど言葉づかいが荒かったのか不思議でした」
「僕もです。兄上には何か考えがあったのかと思っていたのですが、あの侯爵令嬢とここ一年程ずいぶんと接近していて……」
「私も兄様に直接聞けなかったことを申し訳なく思っています。そのおかげでお母様が……」
第三王女クイデはそう言うと「うっ」と涙ぐむ。
「クイデの嘆きはよく判る。セイン、お前は王太子の候補から外す。外さざるを得ないだろう」
「……」
セインは沈黙する。
さすがに彼とて、それは仕方がないことだと感じていた。
それがたとえ、元々の教育が間違ったものであったとしても、だ。
いや、普段の彼ならそれでも何かしらの理由をつけて自分を正当化するかもしれない。
だが母の自害。それはさすがに効いた。
「どんな処分でもお受けします」
「うむ。王太子については、一応ミルトを予定はするが、エルデも心得ておくが良い」
「私もですか?」
「其方が何処にも降嫁しようとしないのは、政に直接関わりたいからではないのか?」
これは後ろ盾のある第一側妃の娘ということが最も大きい。
その上この二人は聡明だった。
おなじく後ろ盾のある第二側妃から生まれたセインより一つ上のユルシュは政に対してさして興味を抱いていない様に振る舞っている。
すぐ後に第三側妃から待望の男子が生まれたということで影が薄くなってしまったことが未だに尾を引いている。というのが周囲の評である。
とは言え、当人は好きなことをしてのんびりと暮らしている様で、降嫁先がなかなか決まらないことも気にしていないとのことだった。
第三側妃からは、セインと、そして彼の二つ下の第三王女クイデが生まれている。
クイデは後ろ盾の少ない第三側妃の教育の結果か、ユルシュと違い、興味の無さではなく、あくまで控えめに生きている様だった。
とは言え、次期王太子と見なされていたセインの妹ということで、彼女には降嫁の申し込みはそれなりにあった。母親はそれに対し、好きな相手を選びなさい、と示していた。結果、ある侯爵家に嫁ぐことが決まっている。
第四側妃から生まれたトバーシュは、アマニと同年であること、そして第四側妃自体が第一側妃に対し常に慎ましい姿勢を保っていることからか、この二人は仲が良かった。
そして第五側妃からは、王子が二人、セインより二つ下の第二王子ミルト、五つ下の第三王子ナギスかが生まれている。
第五側妃はそもそもは庶民から伯爵家を通して王宮に入った女性であり、後ろ盾は弱かった。
だが、王子を二人産んだこと、そしてその王子が今の歳まで生き残っているということで、近年次々と後ろ盾になろうという貴族が現れている。
第五側妃当人は、第三側妃の死に涙する様な優しい女性であるが、その仮親になっている伯爵家は次第に勢力を増しつつあると言われている。
そんな中の正妃は、その地位と後ろ盾はともかく、子供が居ないことで常にその権力基盤が揺らいでいる状態と言ってもいい。
そして二王子はこう言う。
「俺は正直…… 兄上が、何故辺境伯令嬢がやってきた時に、あれほど言葉づかいが荒かったのか不思議でした」
「僕もです。兄上には何か考えがあったのかと思っていたのですが、あの侯爵令嬢とここ一年程ずいぶんと接近していて……」
「私も兄様に直接聞けなかったことを申し訳なく思っています。そのおかげでお母様が……」
第三王女クイデはそう言うと「うっ」と涙ぐむ。
「クイデの嘆きはよく判る。セイン、お前は王太子の候補から外す。外さざるを得ないだろう」
「……」
セインは沈黙する。
さすがに彼とて、それは仕方がないことだと感じていた。
それがたとえ、元々の教育が間違ったものであったとしても、だ。
いや、普段の彼ならそれでも何かしらの理由をつけて自分を正当化するかもしれない。
だが母の自害。それはさすがに効いた。
「どんな処分でもお受けします」
「うむ。王太子については、一応ミルトを予定はするが、エルデも心得ておくが良い」
「私もですか?」
「其方が何処にも降嫁しようとしないのは、政に直接関わりたいからではないのか?」
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