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37 セレジュの遺書⑤
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セインはぴく、とした。
自分が好きだった彼女、マリウラはそこにつながるのか。
「さてその頃、麻薬ルートの動きからでしょうか、辺境伯令嬢がセインの婚約者として帝国から送られてくる、という知らせが入りました。
セインは辺境伯はあくまでこのチェリ王国の辺境と思っていたので、不服そうでした。
私はそんなセインの好みそうな娘のタイプをセルーメに伝え、ラルカ・デブンへの指示の中に、そういう娘を探して侯爵令嬢として据える様に、と伝えました。
そもそも何故ランサム侯爵家だったのか。
夫妻に加えて、三人の子供まで居る侯爵家です。
下手な成り代わり難しいのではないか、と思われるかもしれません。
ただ、どうしても侯爵以上の爵位が必要でした。
辺境伯令嬢、という肩書きをセインの誤った頭で否定するには、それより高い爵位でないといけません。
そこで侯爵家の中で、縁戚が極端に少ない家を探しました。
ランサム侯爵一家は、その条件に合っていたという訳です。
確かに親戚はおりますが、ランサム侯爵自体が社交嫌いの田園好きで、自分の領地にずっと引きこもり、親戚の慶事においても何かと理由をつけて断っていた、という情報があったからです。
そこでまず、ラルカ・デブンが行く前に、幾つかの伝手を通して、ランサム侯爵一家を消し、井戸に放り込ませたという訳です。
ラルカ・デブンはその状況にぞっとしたそうですが、彼自身最後のゲームだ、とばかりにこちらの指示に動いておりました。
そしてマリウラを見つけ、厳しく令嬢教育を叩き込み、セインの前に引き合わせました。
案の定セインは虜になり、常にマイペースの辺境伯令嬢に対して、次第に横柄な態度を取る様になっていきました。
さてこれがどういう結果を取るか、というのは、まだこれを書いている時点ではわかりません。
ですが、あの息子は何処かで必ず爆発するでしょう。
マリウラには自分に夢中にさせる様に、と指示してありましたので。
一方、麻薬の方もじわりじわりと利き茶ルートを使い、染みこんでいった様です。
私が死んだ時点で、果たしてどのくらいの毒がこの国に浸透していることでしょうか。
楽しみにしております。
そして叶うことなら、次の世ではただの庶民の娘として、盤上遊戯の機会を持てることを」
以上です、とバルバラは言い、遺書を畳んだ。
「大まかには、この二枚目の記述と実際に起きていることは対応していると思われます。ですので、帝国側としては、主犯の三人のうち残る二人を手配し、徹底的に見つけ出し、帝国法の下で裁くこととなります」
「セレジュに対してはどう裁きをつけるのですかな」
国王はバルバラに問いかけた。
「死んだ方をそれ以上裁きはできません。が、第三側妃が計画実行したものだ、ということはやはり大きいです。その第三側妃を選んだ現国王殿下、貴方には責任を取り、退位していただきます」
「了承した。次の王に関しては、こちらで選んでも良いのだろうか」
「現在王太子を決めていなかったことは賢明でした。長子相続の原則がこの王国にはある様ですので、エルデ王女に急ぎ戴冠していただきます」
「わかりました」
エルデもまた了承した。
そしてセインが問う。
「自分は――一体どうなるのですか」
自分が好きだった彼女、マリウラはそこにつながるのか。
「さてその頃、麻薬ルートの動きからでしょうか、辺境伯令嬢がセインの婚約者として帝国から送られてくる、という知らせが入りました。
セインは辺境伯はあくまでこのチェリ王国の辺境と思っていたので、不服そうでした。
私はそんなセインの好みそうな娘のタイプをセルーメに伝え、ラルカ・デブンへの指示の中に、そういう娘を探して侯爵令嬢として据える様に、と伝えました。
そもそも何故ランサム侯爵家だったのか。
夫妻に加えて、三人の子供まで居る侯爵家です。
下手な成り代わり難しいのではないか、と思われるかもしれません。
ただ、どうしても侯爵以上の爵位が必要でした。
辺境伯令嬢、という肩書きをセインの誤った頭で否定するには、それより高い爵位でないといけません。
そこで侯爵家の中で、縁戚が極端に少ない家を探しました。
ランサム侯爵一家は、その条件に合っていたという訳です。
確かに親戚はおりますが、ランサム侯爵自体が社交嫌いの田園好きで、自分の領地にずっと引きこもり、親戚の慶事においても何かと理由をつけて断っていた、という情報があったからです。
そこでまず、ラルカ・デブンが行く前に、幾つかの伝手を通して、ランサム侯爵一家を消し、井戸に放り込ませたという訳です。
ラルカ・デブンはその状況にぞっとしたそうですが、彼自身最後のゲームだ、とばかりにこちらの指示に動いておりました。
そしてマリウラを見つけ、厳しく令嬢教育を叩き込み、セインの前に引き合わせました。
案の定セインは虜になり、常にマイペースの辺境伯令嬢に対して、次第に横柄な態度を取る様になっていきました。
さてこれがどういう結果を取るか、というのは、まだこれを書いている時点ではわかりません。
ですが、あの息子は何処かで必ず爆発するでしょう。
マリウラには自分に夢中にさせる様に、と指示してありましたので。
一方、麻薬の方もじわりじわりと利き茶ルートを使い、染みこんでいった様です。
私が死んだ時点で、果たしてどのくらいの毒がこの国に浸透していることでしょうか。
楽しみにしております。
そして叶うことなら、次の世ではただの庶民の娘として、盤上遊戯の機会を持てることを」
以上です、とバルバラは言い、遺書を畳んだ。
「大まかには、この二枚目の記述と実際に起きていることは対応していると思われます。ですので、帝国側としては、主犯の三人のうち残る二人を手配し、徹底的に見つけ出し、帝国法の下で裁くこととなります」
「セレジュに対してはどう裁きをつけるのですかな」
国王はバルバラに問いかけた。
「死んだ方をそれ以上裁きはできません。が、第三側妃が計画実行したものだ、ということはやはり大きいです。その第三側妃を選んだ現国王殿下、貴方には責任を取り、退位していただきます」
「了承した。次の王に関しては、こちらで選んでも良いのだろうか」
「現在王太子を決めていなかったことは賢明でした。長子相続の原則がこの王国にはある様ですので、エルデ王女に急ぎ戴冠していただきます」
「わかりました」
エルデもまた了承した。
そしてセインが問う。
「自分は――一体どうなるのですか」
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