〈とりあえずまた〆〉婚約破棄? ちょうどいいですわ、断罪の場には。

江戸川ばた散歩

文字の大きさ
37 / 168

37 セレジュの遺書⑤

しおりを挟む
 セインはぴく、とした。
 自分が好きだった彼女、マリウラはそこにつながるのか。

「さてその頃、麻薬ルートの動きからでしょうか、辺境伯令嬢がセインの婚約者として帝国から送られてくる、という知らせが入りました。
 セインは辺境伯はあくまでこのチェリ王国の辺境と思っていたので、不服そうでした。
 私はそんなセインの好みそうな娘のタイプをセルーメに伝え、ラルカ・デブンへの指示の中に、そういう娘を探して侯爵令嬢として据える様に、と伝えました。
 そもそも何故ランサム侯爵家だったのか。
 夫妻に加えて、三人の子供まで居る侯爵家です。
 下手な成り代わり難しいのではないか、と思われるかもしれません。
 ただ、どうしても侯爵以上の爵位が必要でした。
 辺境伯令嬢、という肩書きをセインの誤った頭で否定するには、それより高い爵位でないといけません。
 そこで侯爵家の中で、縁戚が極端に少ない家を探しました。
 ランサム侯爵一家は、その条件に合っていたという訳です。
 確かに親戚はおりますが、ランサム侯爵自体が社交嫌いの田園好きで、自分の領地にずっと引きこもり、親戚の慶事においても何かと理由をつけて断っていた、という情報があったからです。
 そこでまず、ラルカ・デブンが行く前に、幾つかの伝手を通して、ランサム侯爵一家を消し、井戸に放り込ませたという訳です。
 ラルカ・デブンはその状況にぞっとしたそうですが、彼自身最後のゲームだ、とばかりにこちらの指示に動いておりました。
 そしてマリウラを見つけ、厳しく令嬢教育を叩き込み、セインの前に引き合わせました。
 案の定セインは虜になり、常にマイペースの辺境伯令嬢に対して、次第に横柄な態度を取る様になっていきました。
 さてこれがどういう結果を取るか、というのは、まだこれを書いている時点ではわかりません。
 ですが、あの息子は何処かで必ず爆発するでしょう。
 マリウラには自分に夢中にさせる様に、と指示してありましたので。
 一方、麻薬の方もじわりじわりと利き茶ルートを使い、染みこんでいった様です。
 私が死んだ時点で、果たしてどのくらいの毒がこの国に浸透していることでしょうか。
 楽しみにしております。
 そして叶うことなら、次の世ではただの庶民の娘として、盤上遊戯の機会を持てることを」

 以上です、とバルバラは言い、遺書を畳んだ。

「大まかには、この二枚目の記述と実際に起きていることは対応していると思われます。ですので、帝国側としては、主犯の三人のうち残る二人を手配し、徹底的に見つけ出し、帝国法の下で裁くこととなります」
「セレジュに対してはどう裁きをつけるのですかな」

 国王はバルバラに問いかけた。

「死んだ方をそれ以上裁きはできません。が、第三側妃が計画実行したものだ、ということはやはり大きいです。その第三側妃を選んだ現国王殿下、貴方には責任を取り、退位していただきます」
「了承した。次の王に関しては、こちらで選んでも良いのだろうか」
「現在王太子を決めていなかったことは賢明でした。長子相続の原則がこの王国にはある様ですので、エルデ王女に急ぎ戴冠していただきます」
「わかりました」

 エルデもまた了承した。
 そしてセインが問う。

「自分は――一体どうなるのですか」
しおりを挟む
感想 47

あなたにおすすめの小説

悪役令嬢になるのも面倒なので、冒険にでかけます

綾月百花   
ファンタジー
リリーには幼い頃に決められた王子の婚約者がいたが、その婚約者の誕生日パーティーで婚約者はミーネと入場し挨拶して歩きファーストダンスまで踊る始末。国王と王妃に謝られ、贈り物も準備されていると宥められるが、その贈り物のドレスまでミーネが着ていた。リリーは怒ってワインボトルを持ち、美しいドレスをワイン色に染め上げるが、ミーネもリリーのドレスの裾を踏みつけ、ワインボトルからボトボトと頭から濡らされた。相手は子爵令嬢、リリーは伯爵令嬢、位の違いに国王も黙ってはいられない。婚約者はそれでも、リリーの肩を持たず、リリーは国王に婚約破棄をして欲しいと直訴する。それ受け入れられ、リリーは清々した。婚約破棄が完全に決まった後、リリーは深夜に家を飛び出し笛を吹く。会いたかったビエントに会えた。過ごすうちもっと好きになる。必死で練習した飛行魔法とささやかな攻撃魔法を身につけ、リリーは今度は自分からビエントに会いに行こうと家出をして旅を始めた。旅の途中の魔物の森で魔物に襲われ、リリーは自分の未熟さに気付き、国営の騎士団に入り、魔物狩りを始めた。最終目的はダンジョンの攻略。悪役令嬢と魔物退治、ダンジョン攻略等を混ぜてみました。メインはリリーが王妃になるまでのシンデレラストーリーです。

【短編】花婿殿に姻族でサプライズしようと隠れていたら「愛することはない」って聞いたんだが。可愛い妹はあげません!

月野槐樹
ファンタジー
妹の結婚式前にサプライズをしようと姻族みんなで隠れていたら、 花婿殿が、「君を愛することはない!」と宣言してしまった。 姻族全員大騒ぎとなった

【完結】捨て去られた王妃は王宮で働く

ここ
ファンタジー
たしかに私は王妃になった。 5歳の頃に婚約が決まり、逃げようがなかった。完全なる政略結婚。 夫である国王陛下は、ハーレムで浮かれている。政務は王妃が行っていいらしい。私は仕事は得意だ。家臣たちが追いつけないほど、理解が早く、正確らしい。家臣たちは、王妃がいないと困るようになった。何とかしなければ…

裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね

竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。 元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、 王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。 代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。 父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。 カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。 その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。 ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。 「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」 そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。 もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。 

【完結】悪役令嬢ですが、元官僚スキルで断罪も陰謀も処理します。

かおり
ファンタジー
異世界で悪役令嬢に転生した元官僚。婚約破棄? 断罪? 全部ルールと書類で処理します。 謝罪してないのに謝ったことになる“限定謝罪”で、婚約者も貴族も黙らせる――バリキャリ令嬢の逆転劇! ※読んでいただき、ありがとうございます。ささやかな物語ですが、どこか少しでも楽しんでいただけたら幸いです。

【完結】英雄様、婚約破棄なさるなら我々もこれにて失礼いたします。

ファンタジー
「婚約者であるニーナと誓いの破棄を望みます。あの女は何もせずのうのうと暮らしていた役立たずだ」 実力主義者のホリックは魔王討伐戦を終結させた褒美として国王に直談判する。どうやら戦争中も優雅に暮らしていたニーナを嫌っており、しかも戦地で出会った聖女との結婚を望んでいた。英雄となった自分に酔いしれる彼の元に、それまで苦楽を共にした仲間たちが寄ってきて…… 「「「ならば我々も失礼させてもらいましょう」」」 信頼していた部下たちは唐突にホリックの元を去っていった。 微ざまぁあり。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

処理中です...