ハイリゲンシュタットの遺書

プロローグ

 今回は遺言書についてお話しようと思います。実を言えば、今までに遺言書を見たことも、ましてや書いたこともありません。日本も高齢化社会となり、遺言書を書く人が多くはなっているようです。家族内、そう夫婦であったり、親子兄弟姉妹の間では、時として口にできないこともあり、文字や文章にして感謝の気持ちなどを残すのも、１つの方法だと私は思います。
　まずは、遺言書の主の目的である相続について考えてみたい。
『人が亡くなると、親族内の誰かが受け取る』ことはよく知られていますが、誰が遺産を受け取れるのかについて、正確に理解している人は少ないと思います。亡くなった人の遺産をめぐって親族同士が争うという、ミステリードラマや映画を時々目にしますが、実際は民法で遺産を継ぐ人はしっかりと定められています。時々、書斎の机の中から遺言書が突然出てきて、本当に本人が書いたものなのかと筆跡を鑑定したり、他にも遺言書があってどちらが最新のものなのか日付で揉めたりする場面もありますが、遺言書として無効となる場合がありますので、まずは簡単に遺言書について述べていきたいと思います。
　まず遺言書には主に、公正証書遺言書と自筆証書遺言書の２種類があります。公正証書遺言書は、公正役場で証人２人以上の立会の下、遺言者が遺言の趣旨を公証人に述べて、公証人の筆記により作成してもらう遺言書です。そして、その遺言書の原本は、公証役場で保管されます。法律の知識がなくても、公証人という法律の専門家が遺言書作成を手がけてくれるので、勝手に書き換えられたり、捨てられたり、隠されたりする恐れがなく、遺言書が無効になる可能性が極めて低い。
　それに対して自筆証書遺言書は、誰に、どの遺産を、どれくらい残すかを具体的に記載する必要があり、民法に定められた最低限守るべき要件を満たしていないと、折角作成しても無効となる可能性があるので注意が必要です。まずは、自筆証書遺言書を作成する際の、民法で定められた要件を書いておこう。ますは自筆証書遺言書が無効にならない書き方を説明します。ポイントは次の３点です。誰に何を相続させるのか明確に書く。書いた年月日を正確に記す。署名と捺印をする。この３つを消せないペンで自分の手で書きます。
できるだけ明確な書き方を追求する為『誰』については氏名の他に生年月日を記載しておき、印鑑についても認印でも構わないのですが、遺言書の信ぴょう性を上げる為に実印がお勧めです。そして、書き上げた遺言書は改ざんを防ぐ為にも封筒に入れて糊付けするのが望ましい。自筆証書遺言書は公正証書遺言書と違い、遺言者の死亡後に遺言書の保管者や相続人が、家庭裁判所に遺言書を提出して『検認』の手続きが必要であり、封筒が開封されていたりすれば、遺言書として認められない場合があるからである。先程述べたように、机などから直筆の遺言書であっても開封してみせたとすれば、家庭裁判所の『検認』を受けられない可能性が高いと思われます。そして、その遺言状の内容として、法定相続人以外の人物に全財産を譲ると記載されていても、法定相続人は法に基づいて遺留分を主張すれば、権利がある遺産を取り戻すことになります。この権利を『遺留分侵害額請求』と言います。この遺産の遺留分は、『被相続人の財産は相続人の協力があってこそ築かれたもの』という考え方であり、いくら個人の意思があったとしても財産の一部は相続人が受け取る権利があるとしたものです。
　ではまず、法定相続人について説明させていただきます。被相続人の配偶者は必ず相続人となる。そして、相続順位第１位は子、第２位は親、第３位が兄弟姉妹になり、反対に被相続人と縁があっても相続人になれない人は、内縁の妻、離婚した元配偶者。養子縁組をしていない配偶者の連れ子に配偶者の兄弟姉妹や親。相続の順位により法定相続人から外れた人（子が生きている場合は第２以降の相続者）に従兄弟姉妹や伯父伯母に叔父叔母。それに加えて、法定相続人でも、遺産相続ができない場合もあります。例えば、わざと被相続人や他の相続人になりうる人を死亡させた、あるいは死亡させようとした為に刑罰を受けた人。被相続人が殺害されたことを知っていながら告発や告訴をしなかった人。詐欺や脅迫によって被相続人による遺言書の作成を撤回、取り消し変更を操作したこと、あるいはわざと妨げた人。被相続人の遺言書を偽造・変造したり、破棄や隠した人。後は、民法８９２条に基づき、被相続人に対して虐待や侮辱があり、相続排除の手続きをされた人。
　実際に遺言書がなかった時の法定相続について述べておこう。夫婦のみで子供が居なかった場合は、財産は配偶者に譲渡される。相続第１位の子供がいる場合は、配偶者が2分の１で子供が2分の１を人数で分け合うことになる。配偶者が居なくて相続第１位の子供ばかりの場合は、子供が財産を相続し人数にて配分される。相続第２位以降は、配偶者及び相続順位第１位が存在しない場合に相続の権利が発生する。
　それから、肝心の遺書について述べることとします。遺書とは死後の為に書き残した文書のことで、かきおき、遺言状とも言います。読み方としては『ゆいしょ』『ゆいじょう』とも読まれ、英語では死につつある者が書き残す書面をWill、testment、farewell noto、自殺するものが書き残す書面をsuicide not、esuicide letterとして区別している。話は日本に戻るが、遺書は残された家族・友人・知人などに個人的なメッセージを送る手紙の意味合いが強く、自殺の場合はその中で何故自分が自殺するのかという理由が語られることが多い。特にいじめに関するものでは、これを元にした裁判が最近は増えつつある。また、大病や事故などで死を覚悟した際にも遺書を残す場合が有り、日本航空１２３便墜落事故では死を覚悟した乗員・乗客による遺書が多く発見されています。それでは、遺言に関しての小説をお楽しみください。