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しおりを挟む「汚いだろ。性欲に負けて好きでもない女を抱いてきたんだから」
絞り出すような声が、とても苦しそうに聞こえる。語ることすら、既に辛そう。
そうちゃんは、自分を汚いと思っているのか。それなら私だって──。
「これだけ汚れた俺の身体から出る体液でももちゃんを汚すなんて許されない。でも、他の男に渡すのは嫌だ。手放すなんて考えたくない。でも俺、ももちゃんにきっと相応しくない」
「待って、そうちゃん」
そうちゃんはずっと辛そうにしていた。私を腕の中に閉じ込めながらも、強く歯を食いしばっているように見えた。彼の目を覗き込むと、また逸らされた。
「逸らさないで」
「でも」
「でもじゃなくて」
「……嫌に、なったろ。俺のこと。俺はももちゃんを手放したくないけど、でも俺にももちゃんを縛り付ける権利なんて無い」
悲しそうに腕を緩めたその時。言うタイミングが合っているのか、相応しいのか。わからないけど。
「そうちゃん。その理屈だったら、好きになれてなかった伊沢くんに身体を触らせた私も十分汚れてるってことになるんだよね?」
一瞬にして険しい顔になった。さっきまであんなに辛そうな、悲しそうな顔をしていたのに。
「ももちゃんが汚いんじゃない。その、伊沢ってやつ……名前を言うのも嫌だな。そいつが汚いだけだ。ももちゃんは被害者だ。ももちゃんは、汚くなんかない。ももちゃんが汚いだなんて言う奴は全部残らず俺が張り倒す」
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