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La petite Robe noire[ラ・プティート・ローブ・ノワール] 6

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「新庄ちゃん、高橋さんと会ってるの?」
「あの飲み会以来、メッセージがしょっちゅう来るんです」
嬉しそうにはにかむ新庄ちゃんの夢を壊すべきか。現実を見せるべきか。可愛い後輩が変な男に引っかかるのを、このまま見過ごして良いものか。

「高橋さん、私あんまりお勧めできないな」
新庄ちゃんの顔色がさっと変わった。
「何で…ですか」
「私、見ちゃったっていうか…聞いちゃったんだよね。あの飲み会の日」



「──そ、んな、はず、ない…」
「信じるかどうかは新庄ちゃんに任せるけど。もっと言うと、最近まで高橋さんからメッセージが私にも来てたよ」
顔が強張ったままの新庄ちゃんはキッと私を睨んだ。
「さ、おとめ先輩、私が高橋さんと上手くいくのが…気に入らないん、ですか…?」
言わなきゃ良かった…?このまま私、悪者にされるんだろうか。
「私に彼氏が出来たって話、高橋さんから聞いたでしょ。あれは私が高橋さんからのメッセージが来るのが嫌で、友達に相談していたの。彼氏が出来たことにしろって言われたからそのまま高橋さんに伝えた。その結果なんだよ」

「そ、んな…」
新庄ちゃんの目に涙が浮かぶ。
「そういえば、さっき話した電話の件は新庄ちゃんには言わないでって高橋さんに飲み会の日にメッセージで言われたな。理由は…わかるよね」


手にしていたお弁当を素早くまとめて、新庄ちゃんは立ち上がった。
「ごめんなさい、先輩。私、ちょっと、一人になりたいです」
「うん…」

謝るべき…?でも、悪い男に引っかかりそうなのを止めることって悪いことじゃないはず。
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