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夜間飛行 6

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昨日のショックは大きかった。それでも一日変わらず働いた私、偉い。よく頑張った。忙しいってありがたい。何度か貧血を起こしそうになったけど、それでもお客様は、仕事はやってくる。気合いだけでも一日過ごせるものだ。

駅のホームの列に並び、大きく息を吐く。早く家に着いて、満紘に甘えたい。その前に晩御飯作らないと。今日は何にしようかな。ポテトサラダが食べたいって言われたけど、これから作るのはしんどいな。満紘の好物で作るのに体力使わないやつ……またチャーハンかな?色気も芸も無いけどしょうがない。満紘は子どもが喜ぶようなメニューを好む。見た目も中身も、大人の男の人になったんだけどな。あ、オムライスの方がいいかもしれない。オムライスの中のライスは何にしようかな?ニンニクでチキン炒めて混ぜようか……?

レシピアプリでランキング上位のオムライスを検索していた。検索すればする程、美味しそうなメニューが出てきて夢中になっていた私は、背中に走る衝撃に耐えられず宙に浮いた。

「!!!……いったあ……え……?」
足元には線路。茶色い石。人々のざわめきが、遠くに聞こえる。私、並んでたんだよね?電車待ってたんだよね?何で私落ちてんの?

「大丈夫か⁉︎」
「おねえさん、立って!電車来ちゃう!」
見知らぬ人達の声で我に返る。私、駅のホームから落ちたんだ。

「駅員さん!電車止めて!人が落ちてる!」
「だめだ、近くに駅員さんいない!」
「何か知らせるボタンとか無いの⁉︎」
「あっ‼︎電車が来る!」
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