悪役令息転生、でも今のところは無罪です 〜投獄エンドなんて絶対回避!〜

あんこ

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プロローグ

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仕事から帰ってベッドにダイブ。
スマホを取り出し、いつものゲームをタップする。

《真実の愛は聖なる光に導かれて》

(最初は広告のイラストに釣られただけだったのに……)
ストーリーがあまりに面白く、続きが気になり気がつけば毎日ログイン。
ガチャ更新のたびに「推しを迎えるまで課金!」の繰り返し。

気づけば全ルート制覇してしまっていた。やり込んだ俺を誰か褒めてくれ…っ!

(そのあまりの人気にキャラブックの発売も決まっていて、それもついさっきポチったところだ)

そして今日はいよいよ隠しキャラルート解放!

スマホ画面に「特別ルート解放」の文字が浮かぶ。
「よしっ!」と声を上げた瞬間――画面が眩しく光った。

「は? バグ? またサーバー落ち?」
……と思ったら違った、ぐにゃりと世界が歪む。

(え、ちょ、待って!? 俺今から攻略するんだけど!? まだ隠しキャラ触ってないんですけど!?)

必死に画面を握りしめる――けれど、手応えは消え、次に目を開けたときには俺は知らない天井を見上げていた。
ふかふかの天蓋付きベッド。金の刺繍にシャンデリア。
え、ここどこの豪華ホテル?いや異世界っぽくない?

「……は?」

こうして俺の、まったく望んでない「悪役令息ライフ」が始まったのだ。


「坊ちゃま、よかった! 目をお覚ましに……!」
「丸一日も眠っておられて心配しましたよ!」

横で執事やメイドが涙ぐんでる。なんの茶番だ。
俺さっきまでスマホでゲームしてたよな?
『真実の愛は聖なる光に導かれて』の隠しキャラ解放目前で──
(あれ、吸い込まれた? マジで? いやそこは普通トラ転だろ!! どんなミスだよ!)

とにかく状況整理だ。どうやら「階段から落ちて丸一日眠ってた」ということになっているらしい。これはド定番か。

で、混乱しているうちに頭の中にドバドバ情報が流れ込んでくる。
リュシアン・ド・ヴァリエール──それがこの身体の名前。

ここで一拍。
(いや待て、リュシアンって……あの『真実の愛は聖なる光に導かれて』の“断罪イベント”で処刑される悪役令息じゃん!?)

しかも出てきた記憶が最悪だ。
わがまま放題、金遣いは荒い、取り巻きと執事を従えて傍若無人の傲慢奔放坊ちゃん。
あー……なるほど、思い出した記憶に弟の冷めた目がやけに印象に残っているのはこういうことか。
あ、でも両親の愛は平等に注がれていたんだよね、よかったよかった。(※ただし俺の株は地の底)

極めつけは婚約者。第一王子、セドリック・フォン・ヴァルデマール。
そいつが今教会から選定された聖女様、ノエル・ラディアントにベタ惚れ中で、俺リュシアンの機嫌は最低最悪。
──で、「嫌がらせしてやろう」と意気込んだ矢先に階段から転げ落ちた、と。

(おい。俺、完全に“悪役フラグ建築士”じゃん……)


でも今ならまだ“やらかしてない”。つまり無罪。
ゲーム本編みたいに嫌がらせ連発もしてない。
この状態なら……ワンチャン、生き延びられるんじゃね!?

と思ったが、冷静になれ。俺は知っている。
このキャラは本筋だとこの後、王子の愛を取り戻そうと躍起になり、聖女への嫌がせを加速させるのだ。そしてどのルートでも最後は「罪に問われて牢獄行き→死亡」の投獄Death☆コース。
そう、必ず死ぬ運命。

「……そんなの冗談じゃねぇ!!」

ザワつく周りを無視して俺は決めた。なんとかして生きて学園を卒業してやる!


「リュシアン! 目が覚めたと聞いて!」

そんな俺の決心をぶち破るかのようにドアが勢いよく開いたかと思うと、ドレス姿の母と威厳たっぷりの父が飛び込んできた。
その背後には当然のように弟、カミーユもついてきている。

「まぁ! 可哀想にリュシアン!一日も眠っていたなんて! 痛いところはない?!」
「無理をするな! 今すぐ医師を呼ぼう!」

(え、ちょっと、ちょっと!? 急に“親バカ過保護イベント”突入ですか!?)

母は泣きながら俺の手を握りしめ、父は眉間にシワを寄せて真剣に俺を見下ろす。
──いやいや、そんなに重症感出さなくても。軽~く階段から転げ落ちただけだから!

「本当に心配したんだぞ、リュシアン」
「兄上、転ぶなんて……みっともないですよ」

横でカミーユがさらっと毒を吐く。お前、冷静すぎだろ。
でも顔にはほんの少し心配がにじんでるのが見える。あれ?ツンデレ?

「お、俺は……大丈夫、です」
自分の口から出た声が、びっくりするくらいか細くて上品で。
(やばい、これ本当に“悪役令息ボイス”だ……!!)

母はまた泣き、父は肩をがっしり掴み、弟は呆れた顔でため息をつく。そして俺は悟った。

──これ、下手に動いたら絶対すぐバレるやつだ。
まずは“リュシアンっぽく”生き延びるしかない!!

気づけばいつものおじいちゃん先生が目の前にいて脈やらなんやら診られていた。
大丈夫、階段から落ちて中身が変わっただけです。いやとんでもねぇな。

「ふむ……外傷も見られませんし、打ち身程度でしょう。一日お休みいただければ、すぐに普段通りに──」

医師が丁寧に診察を終えたその瞬間、俺は思わず口にした。

「ありがとうございます、先生」

部屋の空気が、凍った。

「…………」
「…………」
「…………」

医師は目を丸くし、母は口に手を当て、父は眉を跳ね上げる。
そして一番驚いたのは──カミーユだ。

「え……あ、ありがとう……? 兄上が?」

「いつの間に素直になったの、リュシアン?」
「お前、本当にリュシアンか?」

三方向からの質問攻め。
やばい。やばいぞ。

(おっとおおおおお!! そうだった! 俺は“傲慢で奔放な坊ちゃん”キャラだったぁぁああ!!)

これじゃ完全にキャラ崩壊じゃん!?
このままだと逆に怪しまれて、別ルートで牢獄エンドまっしぐらじゃね!?

だが、ここで俺はひらめいた。
階段から落下=記憶障害と結びつければいいのだ!!

「……その、頭を打ったからか少し記憶が曖昧で……母上や父上、そしてカミーユの名前は思い出せるのですが……」

(お、上手くいったか?)

カミーユの顔がみるみる青ざめていく。
「兄上が……僕の名前を呼んだ……?」

(え、なにその反応。お前、今までなんて呼ばれてたんだよ!? ゲームでもそんなに出番無かったからそういう設定分かんないよ、お兄ちゃんは……)

じいちゃん先生は「まあ頭を打って性格が変わるというのも……あるかもしれんな」なんて混乱しすぎて医師としてどないやねん、というアセスメントをし出す始末。

母は「まぁ!」と涙ぐみ、父は「これを機に性格が改まるかもしれんな」と感慨深げ。いや受け入れ態勢ありすぎだろ!

……いや待てよ。
これってむしろ、性格矯正の大チャンスじゃね!?

(よし……! “記憶障害設定”で行こう!
リュシアン改造計画、ここに始動!!)


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