未来で処刑さけれるはずだった令嬢は、氷の王子を選びました~ 巻き戻り令嬢の婚約から始まる逆転人生〜

あんこ

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処刑台から巻き戻り

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首元に当たる冷たい感触で、リズはようやく現実を理解した。石造りの処刑台。足元には乾ききらない血の跡。観衆のざわめきは、もはや波の音のように遠い。

(ああ……本当に、ここまで来てしまったんだ)
恐怖はなかった。叫びたいとも思わなかった。

ただ、ひとつだけ――
胸の奥にどうしようもない悔恨が沈んでいた。

罪状は「聖女への嫌がらせ」。
それが嘘であることを誰よりも自分自身が知っている。けれど、この国では真実よりも「聖女」が正しかった。

王妃の座を追われ、味方だと思っていた者たちは沈黙し、婚約者だった第一王子は――最後まで私を見なかった。

(……やっぱり、優しいだけの人だったな)
責める気にもなれない。彼はいつも流れに身を任せる人だった。

もし、あの夜がなければ。王宮のパーティーで彼と出会わなければ。婚約など、結ばなければ。

最初から逃げていればよかった。それだけが心残りだった。

「――罪人、リズ・エーヴェルシュタイン」

処刑人の声が響く。リズはゆっくりと目を閉じた。誰かに助けを求めることもなく神に祈ることもなく。

ただ静かに、思う。
(次があるなら……)
 
刃が落ちる、その瞬間。強い光が視界を覆った。


「――リズ様、起きてください」

聞き慣れた声。柔らかく、けれど確かに若い。

(……え?)
目を開けると天蓋付きのベッド。小さな手。短い腕。視界が異様に低い。

「今日は王宮のパーティーですから。寝坊しては大変ですよ」
 
侍女が微笑む。
鏡に映ったのは――六歳の自分だった。

リズは息を呑んだ。喉が震え、心臓が早鐘を打つ。
そしてただ静かに、理解する。戻ったのだ。10年前に。
胸の奥に処刑台の冷たさが残っている。リズは小さな手を握りしめた。

(次は、失敗しない。生きるんだ)
(――絶対に)

その瞳には、もう二度と処刑台に立たないと誓う覚悟の光が宿っていた。




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