涯(はて)の楽園

栗木 妙

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Ⅰ章.カンザリア要塞島 ─トゥーリ・アクス─

【1】_3

 
 




 総督の執務室は、要塞島の中心部、有事の際には作戦指令部の置かれる中央砦の最上階に置かれていた。
 やや小高い丘陵地となっている島の中央部に建てられたその砦からは、眼下に海を一望できる。
 ――という総督執務室に、荷物を置くや早々に連れてこられた俺は、口上を述べる伍長の隣で窓の向こうへと視線を馳せ、何となしにそんな眺望を眺めていた。


 それもこれも……当の部屋の主が、ずっとそう窓の外ばっかりを眺めているからだ。


 そもそも、ノックに返答がなかったことからして、何やらおかしいとは思ったのだ。
 普通、扉をノックして入室を求めれば、それを許可するか否かの返答が何らかあるものだ。それを待ってから入室するのが、全世界で通じる当然の礼儀だと、これまで信じて生きてきたが……どうやら、ここではノックと同時に扉を開けるのが常識らしい。
 返事など無いことがさも当然かのように、すぐ伍長が扉を開けても、それを咎める声などは飛んでこず。
 部屋に入ったら入ったで、部屋の主は、来客の方なんてコレッポッチも見ちゃいない。言葉をかけることすらなく、視線はずーっと窓の外。
 これでは、窓の外に何か珍しいものでもあるのかと不思議に思うのも無理はないだろう。
 しかし、俺が見た限りでは、海は海以外のナニモノでもなく、惹き付けられてやまないようなものなどもどこにも見当たらなかった。


 ――つまり、これは……いわゆるところの“ただボーッとしている”というやつではないのか?


「本日付けでこちらに配属されました、トゥーリ・アクスです。総督閣下には、以後お見知りおきを」
「レイノルド・サイラークだ」


「ほれ、挨拶!」と隣から小突かれてそれを告げるも、返ってきたのはそんなひとことだけ。チラリとでもこちらを振り返ることさえありゃしない。――これじゃ、敬礼までした俺が馬鹿みたいじゃないか。
 部屋の正面奥には重厚な執務机が置かれており、伍長と俺は、その前に立っていた。ただし、こちらを向いた椅子に座るべき主の姿は無い。ただ、その椅子を隔てた向こうに外開きの出窓があり、その張り出した桟の上、その狭苦しそうな中で身体を丸め膝を抱えて座る人影があった。
 ボーッとしながらも人の言葉だけは聞こえていたらしいが口数は極めて少ない、おまけに愛想のカケラすらうかがえない、そんな男性。
 この人こそ、ただいま絶賛職務放棄中らしき、レイノルド・サイラーク総督閣下だった。
「じゃあ、互いの紹介も済んだことですし……しばらくアクスくん預けますんで、面倒みてやってくださいね」
 ――つか、今のこの人に何を言っても無駄なんだろうなー……。
 というこちらの予想を裏切って、伍長がそう告げたところでサイラーク総督は、初めてこちらを振り向いた。しかも、今の今までボーッとしていたことなど微塵もうかがわせない、眼光も鋭い真っ直ぐな瞳で。
「――聞いていないぞ、そんなこと」
「だから、いま言いました」
「そんなもの要らん、連れて帰れ」
「だめですよ。それ以外、新兵の仕事なんて他に無いんです」
「兵舎の雑用でも何でもやらせればいいだろう」
「それもだめです。アクスくん、こう見えて騎士様なんですから」
「は……? なんだって……?」
 そこで総督は、ようやく俺の方を振り返る。
 まじまじとこちらを覗き込んだ、その視線を受け止めて、ようやく俺もサイラーク総督閣下の顔を真正面からマトモに見ることができた。さきほどから薄々そう思っていたが、こうして見ると改めて……、
 ――てゆーか、なんつー色男……!
 三日間だけ在籍していた近衛騎士団で様々な美形を目の当たりにしたが、それと比べても全く遜色のない色男ぶりだと思う。決して女顔ではないものの、しかし男としては繊細にすぎる印象さえ与える、整えられた白皙の美貌。しかも、まだ相当若そうだ。もと宰相、なんて聞いたから、どんなオッサンかと想像していたのに、全くの予想はずれ。どう頑張って見ても二十歳はたちソコソコにしか見えない。しかし、その涼やかに細く切れ上がった目元から視線を据えて見つめられると、およそ世間知らずの若造には相応しくない凄みのようなものまで感じられた。ひょっとしたら実年齢は、見た目よりも上なのかもしれない。だが、それは決してこの人の美しさを損なうものとはなり得ず、むしろ、それが魅力を更に引き立てている、といっても過言ではないかもしれない。
 ――確かに……これじゃあ、『ホモ大ッ嫌い!』にもなるだろうさ……。
 言い寄ってくる男どもも、さぞかし多かったことと推察される。
 つくづく同情を禁じ得ない。
 サイラーク総督に。
 だけじゃなく、その雰囲気に漂わせる仄かな色香に惑わされたに違いない、決して少なくはないだろう有象無象どもにも。


 ここへ至るまでの道すがら、歩きながら伍長が話してくれたことだが―――。
『カンザリアに赴任されてきた早々、総督の噂を知っていた男たちが、ちょっと良からぬ気を起こしてね……』
 今ならば想像に難くない。――総督の美しさは、その噂に信憑性を与える根拠以外の何物にもならないだろう。
『どんな形であれ、総督に一夜のお相手を願った輩は、ことごとくコレ』
 言いながら伍長は、握り拳に立てた親指を自身の喉元に当てると、スッと横一文字に線を引いてみせる。
『下された処分は、だいたいが免職のうえ除隊。軽くても異動。いちばん重いヤツだと……』
『――まさか、処刑?』
『いや、さすがにそこまでは……でも、いっそひと思いに死なせてもらったほうが楽だったと思うくらいの辱め…だっただろうね、あれは間違いなく』
『なんなんだ、それは……?』
『公開去勢。――ようするに、大勢の衆人環視の中で自分のアレちょん切られる、っていう』
『うっわ、マジか……!! それは確かに死んだほうがマシ……!!』
『それに加えての除隊だからね、もう救いようがないよね、徹底的すぎるよね』
『どんだけ情け容赦のカケラもないんだ総督……』
『それもすべて、噂を鵜呑みにしたバカの自業自得、って気がしないでもないけどね。仮にも一番権力持ってる上官なんだから、噂の真偽云々以前にまず、自分らが手を出していい相手かどうかくらい見極めろ、ってー話じゃない。おかげでこっちは見たくもないモノまで見せつけられて、イヤ~な気分にさせられて、コレッポッチもいいこと無いよ。――まあ、だからこそ、“見せしめ”としてなら充分すぎる効果はあっただろうけどさ』
『見せしめ―――』
『さすがにそこまでやられれば、一時は落ち着くよ。でも、それを知らない新入りが、また同じことをやらかすんだよね。新入りが入ってくる都度これ説明するのも、もういいかげん疲れたさ。にもかかわらず、必ず一人二人は忠告の効かないバカがいて、また総督を怒らせる、と。もはやキリがないよね』
『…………』
『まあ、アクスくんは大丈夫だとは思うけど、とりあえず忠告だけはしとくよ。頼むから、総督を押し倒そうだなんてことは、絶対に! 考えないようにね!』


 そうまでも男を色欲にかきたててしまう、総督閣下の“過去”―――。
 あくまでも俺は、『どこまでホントかは知らないけど』と前置きをしてから伍長が教えてくれた話でしか、それを知らない。
 その話を聞いた時は、どうもいまひとつ頭から信じる気にはなれなかったのだが……こう間近でその美貌を目にしてしまえば、また話は違ってくる。


 ――宰相レイノルド・サイラークは、国王陛下の“愛人”。


 まだ前王陛下の御代にあった王宮において、公然とまことしやかに囁かれていたらしい噂。
 そもそもは、身分も低い下級官吏ながら、前王に見出され、重用され、ついには宰相にまで取り立てられたというサイラーク閣下のこと。貴族とはいえ名門の出でもない彼の栄達を、快く思わない者も多かったことだろう。真偽のほどは知らないが、おおかたのとこ、そういう輩から悪意をもって広められてしまったものに違いない。
 前王の彼に対する信頼ぶりもそれに拍車をかけ、その美貌と身体で王を誘惑し取り入った売女、などと、ことさら悪し様に言われることも少なくは無かったそうだ。
 そのような王宮において、当人であるサイラーク閣下が何を考え、どう立ち回っていたのかは、知るべくもないが。
 結果、現王陛下の信頼を得ることは叶わなかったがゆえに、カンザリアへ異動させられることとなったのだろう。
 それだけでも不本意であるだろうに、あろうことか異動先においても、その美貌が災いしたとあらば……そりゃー、どんなに“やりすぎ”と言われても、そこまでの厳しい処分を断じたくもなるというものだろう。
 他人との関わりを極力絶ちたいと望んでしまうのも、無理なからぬ話かもしれない。


「――騎士、だと……?」
「待遇は新兵で、ってことなんですけどね。とはいえ、まがりなりにも騎士資格持ってるお方に、掃除やら洗濯やらはさせられないでしょう」
「ちょっと待て! その前に、なぜ騎士が新兵扱いなんだ? 騎士の身分があるのなら、経験が浅くとも分隊長以上の階級から就くのが普通だろう」
「総督が知らないことを私が知るはずもないじゃないですか。とにかく、新兵待遇で迎えるように、と、そういうお達しが来てるんです。――て、その書状ちゃんと渡されてますよね、アクスくんの経歴書と一緒に?」
 ――うん……きっと目を通してさえいなかったんだろうね、この人は。
「そもそも、なんだって騎士資格者がこんなところに飛ばされてくるんだ? 騎士ならもっと他に使いどころがあるだろうに。のみならず、あろうことか新兵待遇にまで降格とは……一体なにをやらかせばそうなるんだ。無駄に上司を怒らせるよっぽどのことでも仕出かしたとしか思えんな」
 改めて自分へと向けられる呆れたような白眼視に、いたたまれなさのあまり愛想笑いさえ作れず、ただ表情を歪めることしかできない俺。
 その隣では、再びブッと吹き出す伍長。――総督の前で思い出し笑いか。いい度胸だなコノヤロウ。
「ま、とにかくアクスくん、道は外れましたが、元々あの近衛騎士団にいたエリートですしね。閣下とも気が合うと思いますし、ここで使ってあげてくださいよ」
「近衛騎士だと……? 冗談じゃない、なぜ私があんな男色狂いのナルシスト連中と気が合うと思うんだ! そんな輩、こちらから願い下げだ!」
 ――まがりなりにも軍のトップ集団相手に、すごい言いようだなオイ……。
 とはいえ、でも確かに、知ってしまえば“その通り”な集団であるだけに、否定もできない。
 かといって、そこにいた俺までその仲間だと思われるのは、非常に不愉快このうえない。
 よって、そこだけは否定しておこうと、慌てて口を開――こうとした俺に先んじて、「大丈夫ですってー!」と、笑いを噛み殺し切れていない表情の伍長が、あっけらかんと、それを告げた。


「そもそもアクスくん、上官のチンコ食い千切って左遷されたっつー、とっても剛毅なお人ですからー」


 ――て、言うか! それを言うのか、今ここで!


 あまりにもサラッと日常会話のように言われてしまったので、驚いたあまり、咄嗟に絶句してしまう。
 だがそれは、言われた総督の方も同様だったらしい。細い瞳を丸くして、ぽかんとした表情をこちらへ向けてくださった。――それを目の当たりにするだに、さらに言葉が出てこなくなるではないか。
 自分がしたのは“噛み付いた”ことだけであって、決して“食い千切った”りはしていない! というニュアンスの違いを否定したい気持ちはあれど、それを何と切り出せばいいのかもわからない。
「――確かに、それは剛毅だな……」
 そんな俺が話の接ぎ穂を探し当てるよりも、総督閣下の呟くような唸るようなお言葉が出てくる方が早かった。
「ずいぶんな貧乏クジを引いたじゃないか、トゥーリ・アクス」
「…返す言葉もございません」
「ほう、ならば伍長の言葉は事実か。本当に阿呆だな貴様は。――まあ、連中にはいい薬になっただろう。よくやった」
「はあ……それは、どうもありがとうございます……」
 なんだか知らんが、とりあえず俺が褒められたところで、今が好機だと思ったのだろう、「じゃあ、アクスくん置いてくんで頼みますねー」と、言い置いて伍長がさりげなく踵を返そうとする。
 そこで、すかさず投げ付けられた鋭い声。
「要らん! 持って帰れ!」


 ――こうして話は、振り出しに戻る。


 気難し屋で人嫌い、おまけに仕事も嫌いな総督閣下―――。
 それが、このカンザリア要塞島に駐屯する者すべてに認識される、レイノルド・サイラークという人物だった。


 繰り返される、限りない水かけ論を真横に聞きながら。
 これからの受難の日々へ想いを馳せた俺が、こっそりタメ息を吐いたとしても、それはいたしかたないことだったろう。



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