涯(はて)の楽園

栗木 妙

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Ⅰ章.カンザリア要塞島 ─トゥーリ・アクス─

【2】_2

 
 




「――そういえば、総督の“お馴染みさん”が中央に向かってくトコ、さっき見かけたけど」
「え……?」
 初めて耳にした話に、俺は目を丸くした。
 あれから数日が過ぎた夕刻のこと。
 晩飯を終えた俺に、例によって伍長からカードのお誘いがかかった。そこで、『あ、そうそう』と、まさについでのように切り出されたのだ。どこまでも何気ない世間話の延長で。
「今回は、アクスくんが手配してあげたの?」
「は? 手配? ――って、何を……」
「またまた、トボけなくってもいいじゃない。もうみんな知ってることなんだし」
「いや、トボけるとかじゃなくて、何のことだかサッパリですが……」
「まさか、本当に知らないの? 総督の女のこと」
「女……?」
「呼ばれてるのは毎回同じ女だし、よっぽど総督に気に入られてるんだろう、あの美人はどこの娼館の女だ、一度くらいお相手願いたいもんだ、って、みんな興味深々で噂してる……」


〈青天の霹靂〉とはよく聞くが、まさにこういう時のことを云うのではないだろうか―――。
 言われて初めてその可能性に気が付いて愕然とした。
 ――そりゃあ、総督だって男だし……男が嫌いなら、普通は、女、だよな……。
 いくら周りに女っ気が一切ないからといって、それを失念していた自分にも愕然とする。


「あの総督に女、って……」
「うわあ、その様子じゃホントに知らなかったんだー」
 半ば呆然とそう呟くしか出来ない俺の前で、そう言って伍長も目を丸くした。
「まあ、そうだね……しばらくゴブサタだったみたいだし。見るからに淡白そうなあの総督から、そういう話を振ってくることも無いだろうし。そりゃー君が知らなくても無理はないか」
「…てゆーか、どうして伍長がそれ知ってるんですか」
「え? 僕だけじゃないよ、みんな知ってるよ?」
「………だから何で?」
「そりゃあ、ねえ? あそこまで堂々と連れ込まれてれば、人目に付かないハズがないもんねえ」
 そこで、遅まきながら思い当たる。
「つか、なんでそんな人目に付くほど堂々と女連れ込めるんですか! そもそもここ女人禁制……!」
 それは、何もこのカンザリアに限ったことではない。軍は絶対的に女人禁制だ。要塞や砦に限らず、どこの駐屯地であっても同様だろう。
 カンザリアの場合、人の出入りには特に厳しい。たとえ駐屯している兵士の身内であっても、許可の無いものは島内には入れない。船着き場のある北側――この島唯一の玄関口でまず止められ、許可を得ていることが確認されてから、もちろん検閲も済ませた上で、やっと通してもらえるようになっている。
 だが、相手が女であれば、たとえ身内であっても島内での面会など、そもそも絶対に許可されない。
 それほどまでに絶対的な規則なのだ、それは。
 しかし、言いかけた俺を、「それはそれでしょ」と、伍長はいとも軽く遮った。
「どこの規則にも“特例”ってあるじゃない」
「じゃあ、総督が女を島に連れ込むことも、その“特例”だと……?」
「まあ、そうだね。でも総督は、その代わりの“代償”を、ちゃんと負ってるから」
「代償……?」
「僕たち兵士が、隊規っていう規則に縛られているようにさ。その上に立つ総督にも、縛られるべき絶対的な規則があるじゃない。『公務を除き島を離れてはならない』っていうアレが。僕たちは休日になれば島から出てどこへでも行けるけど、総督はそれが出来ない。でも、だからといって、規則だから女を絶て、っていうのは、男としてさすがに無理でしょ。総督みたいに、男を女の代用にできないタイプなら尚更ね。なら、呼び寄せるしかもう他に手段はないじゃない。だから、これは“暗黙の了解”ってヤツなんだよ」
「暗黙の…了解……」
「そう。だって島の中に関係者以外を入れてるんだよ、もちろん入口で記録は取られているはずでしょ。でも、これまで一切、それについてのお咎めを受けたことは無いって聞くよ。つまり、これは“上”も公認している“特例”だ、ってことになるじゃない。それなら誰だって納得せざるを得ないでしょ」
「なるほど、ね……」
「だからアクスくんも、ヘタに総督を責めちゃダメだよ。あの人の場合、女好きだって見せつければ多少の“虫除け”にはなるだろうに、それでも遠慮して何ヵ月かに一回くらいの頻度でしか呼ばないんだから。しかも一晩泊めてあげたことすらも無いんだよ。総督が、そうまでして自制してるんだから、ちょっとくらいのことは大目に見てあげようねー」


 ――伍長の言うことは、ちゃんと理解できている。頭の中では。
 だけど、どことなく気持ちは曇ったまま晴れなかった。
 まるで心が納得するのを拒んでいるかのようだ。胃の腑のあたりにズッシリとした重みさえ感じる。
 それで、せっかくのカードの誘いも断って、少し夜風に当たろうと一人外に出てきたのだ。
 なんとなく、いつもの習慣だからなのか、総督執務室のある中央砦の方向へと足が向いてしまう。
 ――いま執務室に行っても、総督は居ないのに。
 女が来ているというなら、居るとすれば、おそらく私室の方だろう。
 執務室は続き部屋になっていて、隣が総督の私室――応接間などを兼ねた多目的の居室となっている。そこも続き部屋になっていて、奥は寝室。
 居室の方は、執務室と同様、廊下からも入室できるようになっているが、寝室の方は、居室を経由することなしには立ち入れない。
 ゆえに、総督の寝室にまで立ち入ったことのある者など、誰一人としていなかった。――もちろん、この俺も、だ。
 本来ならば、朝起こしたり身支度を整えてさしあげたり、といった上官の身の回りの世話も、軍では小姓の仕事に含まれる。だがサイラーク閣下は、貴族のご当主様であるにしては珍しく、そういった一切を自分でしてしまえる人だった。必要なものは下働きの者が用意しておくし、食事も厨房の者が毎時できあがった料理を居室へと運んできてはセッティングまでしてくれ、また当然、終わる時間を見計らって食器も下げにくるから、全く不自由なこともない。
 俺が朝一番に執務室へと顔を出す時には既に、総督は全ての身支度も食事も済ませて執務室にいる、それが常だった。
 そんな総督だから、誰よりも一番近くで仕えている俺でさえ、居室までしか立ち入らせて貰える機会は無い。
 だが、いま呼ばれている女は、その向こうの寝室にまで招き入れられている―――。
 それを考えると、胃の腑の痞えがますます重くなるようだった。
 俺は男だ、女ならしてあげられることも、俺には出来ないし、してもあげられない。
 そんなことは、とっくの昔から分かりきっていたはずなのに……しかし、実際にこう事実として突き付けられてしまうと、やりきれなさばかりが胸を刺す。
 まさに、自分の居場所を奪われてしまったような切なさ。
 ――なのに……なんで俺の足は、総督のところへ向かっているんだ。
 ボンヤリ歩いているうちに、いつの間にか、気付けば執務室の扉が目前だった。
 痛いな俺…と、ほんの少しだけ自嘲を洩らす。
 わざわざ扉数枚隔てた場所に来て、そうまでして総督の近くにいたところで、一体なにをしたいんだよ?
 何の気なしに扉に手を掛け、自然な動作で押し開いた。
 室内に一歩踏み入ったところで、――そのまま俺は凍りつく。
 前を向いた視線の先に映ったのは、ここに居るはずもない人だったから―――。


「――こんな時間に、何の用だ?」


 それが聞こえてきた途端、ハッと我に返った俺は、「申し訳ありません!」と言うや踵を返した。
「こちらにいらっしゃるとは思わず、失礼いたしました!」
 そのまま再び廊下に出ようとした俺を、「待て」という静かな声が引き止めた。
 反射的に足が止まる。だが、それでも背後を振り返ることはできなかった。
 ほんの一瞬で網膜に焼き付いた、視線の先にあった光景。
 月明かりに照らされた暗い部屋の中、窓辺で壁に寄りかかるように立っていた総督と、その胸にしなだれかかる下着姿の女の背中、流れるような長い髪―――。
 ――どうしよう……まさか、執務室でいたしているとは思わなかった……。
 足を止めたはいいものの動けない俺の背中へ、更に言葉が投げかけられる。
「外す必要はない。こちらの用は、もう済んだ」
「は、でも……」
「せっかく来たんだ、そこで少し待っていろ」
「はい……わかりました……」
 そこで俺も諦めて、とりあえず開け放したままの扉を閉めた。やはり背後は振り返らないままに。
 閉じる扉の音に合わせ、しゅるしゅると衣擦れの音が聞こえてくる。おそらく女が身支度を整え始めたのだろう。
 それを待っていた時間も、そう長くはなかった。
 やがて背後から近付いてくる足音が二つ聞こえてきて、やはり振り返れないままで立ち尽くす俺の真横から、総督の手が扉を引き開ける。
「それでは、また」
「ええ、また是非」
 そんなやりとりが聞こえた――と同時、ぐいっと俺の腕が掴まれる。
「こちらの純情な部下サンにも」
「え……?」
 咄嗟に掴まれた腕を見下ろしていた俺のすぐ目の前に、こちらを見上げる女の顔があった。
 ――確かに、これなら皆が美人だと噂もするに違いない……、
 あまりにもいきなりのことで、思わず取り留めの無いことを考えてしまった俺の思考を、まさに止めようとでもするかのように、
「また是非お会いしたいわ」
 言うや、間髪入れずにキス一つ。
 これまたあまりのことで硬直するだけの俺から、すかさず離れた彼女は、そのまま「じゃあね」と軽く手を閃かせ、まさに踊るような足取りで扉の向こうへと消えていった。
 ――な…なんなんだ、あの女……。
 あまりにも呆然としていた俺を見かねたものだろうか、「いつまで鼻の下を伸ばしている気だ」と、眉根を寄せた総督が、扉を閉めながら呆れたような口調で言う。
 普段より不機嫌そうに見えるのは、きっと気のせいではないだろう。――つーか、もしかしなくても今のキスの所為?
「おまえは、ああいう女が好みなのか?」
 そこでようやく呆然自失の体から脱した俺は、慌てて総督に向かい、「とんでもない!」と首と両手をぶんぶん振ってみせた。
「いや、確かに、美人ですし、総督はお目が高いと思いましたし、そりゃ好みじゃないと言ったら嘘ですが……じゃなくて、そもそもあの人、総督のですし! そんな人に手を出す気とか、さらさらなくてですねっっ……!」
「余計な気を回すな。おまえが気に入ったのなら紹介してやる。あっちもおまえに興味を持ったようだしな」
「だから、そうじゃなくて、総督ーっっ……!!」
 そのまま執務机の方へと歩き出してしまった総督の背に追い縋り、俺は情けない声を上げる。
「今のキスとか、ホント不可抗力じゃないですか! 俺に一切そういう気は無いですから! だから、いま総督が思ってることは全部誤解なんですって!」
 無言で背を向けて歩き続ける総督は、だが定位置の出窓の前にきて、ふいに足を止めた。
 その服の背を掴まんばかりに追い縋っていた俺は、まさにつんのめりそうになりつつも、やはり同様に足を止める。
 そして振り返った総督は、睨み付けるような強い視線で、真っ直ぐに俺を見つめた。
「なら、おまえも誤解するな。あの女と私は、おまえの思っているような関係ではない」
「え……?」
 ぐるぐる落ち着かなかった頭と言葉が、それでピタッと止まる。思考停止。言われた言葉の意味がわからない。
 そのまま二の句を告げられずにいる俺に、「聞こえなかったか?」と、ご丁寧に総督は繰り返した。
「あの女と私の間に男女の関係など無い、と言ったんだ」
「…………マジですか?」
「だから、前もって言っておこうと思っていたのに……」
「言っといてくださいよ、じゃあ!」
「言ったのに聞き逃したのは貴様だろうが!」
 即座にそれを返されて、ハッと数日前のことを思い出す。
 この執務室で、総督が鳩に餌をやっていた時……そういえば何か言いかけていなかっただろうか。訊き返して、『大した話でもない』と返されて終わりになってしまったことがなかっただろうか。
「ひょっとしたら、あの時に……?」
「おまえが興味も無さそうにしていたから、こちらも皆まで言わなかったが……それにしても、まさか何も聞いていなかったとはな」
「す、すみませんでした……」
「――まあ、いい」
 そこで総督は一つ息を吐きながら、出窓の桟に浅く腰をかけた。
「私も言葉が足りなかった。いくらおまえの方に聞く意志はなさそうだったからとはいえ、ちゃんと話しておいた方がよかったかもしれない」
 そして、座った位置から再び俺を見上げると、やや声をひそめて、それを言った。
「あの女は、王都からの使者だ」
「王都からの……? ――って、それは、つまり……!」
「これまで集めてきた情報は、あの女を通して密かに陛下へ届けられているはずだ」
 そういえば、以前に訊いたことがあった。『集めた情報を、どうやって王のもとへ届けているんですか?』と。
 だが、その時は『いずれ教える』と言っただけで、総督はその場で答えをくれなかった。
 ――その答えが、こういうこと、だと……?
「そしたら、あの女と陛下って……」
「あれは、王都の高級娼館に属しているそうだ。ならば、陛下のお側に呼ばれることがあってもおかしくはないな。それに、こちらとしても都合はいい。私も元々王都にいた人間だからな。仮に彼女の出身を知られたとしても、昔からの馴染みだから呼び寄せている、とでも言えば、それで話は通るだろう」
 確かに……それならば誰も不思議には思うまい。伍長の言ったように皆が考えているのであれば、訝しむどころかむしろ、数ヵ月に一回にまで抑えてる楽しみなんだからそのくらいしてもいい、とアッサリ納得してくれるに違いない。
「それはわかりましたけど……ですが、そのことは、総督が彼女と関係を持たない理由にはならないでしょう?」
 どうしても引っ掛かって残るのは、そこのところだ。
 さすが王宮御用達の高級娼婦、手練手管にも長けているだろうあんな美人を前にして、何も関係が無いとか、どう考えてもあり得ないではないか。
 あの女さっき下着姿だったしな。…とボソリと呟いてみた俺の言葉を耳ざとく聞き止めた総督が、「あれは、だから…!」と、慌てたように声を荒げる。
「仕方ないだろう、この島から秘密を持ち出せる手段など限られているんだから!」
「はい……?」
「出島の際の身体検査を避けて通ることは出来ない以上、隠す場所など一つだろうが!」
 ――確かに、言われてみれば。
 受け取った情報を大っぴらに持ち歩いていれば、間違いなく検閲所での所持品検査に引っ掛かる。服のポケットなどに隠しても、身体検査でまず見つかる。
 見つからないように持ち出すためには……身体の中へ隠すしか、他に道は無いか。
「そりゃそーですよね……さすがに女のアソコの中までは、検査係だって指つっこんでまで調べたりはしないでしょうし……」
「納得したなら、いい加減その誤解を解け!」
「じゃあ、総督は……」
 不愉快だとばかりに無言でソッポを向いた総督の横顔へ、俺は問う。
「それが本当なら総督は、じゃあ誰に慰めてもらうんですか……?」
 お側に付くようになって約半年――俺の知る限り、総督のもとへ誰かが訪ねてきたのは、今回が初めてだった。伍長の話だと『毎回同じ女』ってことだから、あの使者の女以外は誰も呼んでいないことになる。
 また、公務で島外へ出た時だって常に日帰りで、食事をとるための店に入る以外、どこへも寄り道することなどはなかった。
 もとより島内では、俺以外の人間を徹底的に遠ざけているし、言い寄ってくる人間がいたとしても、それに応えることも無く、処断して放逐するだけ。
 ――ならば、あなたの安らげる場所は、どこにある?
 本当に自分勝手だが俺は、あの女と総督に肉体関係など無かったと聞き、安堵したことも否めない。総督の隣に自分の居場所がまだ残っていたと、こっそり喜んでしまったことも事実だ。
 けれども、あくまで矛盾するようだが、どうしても心配になってしまったのだ。同じ男として。
「ずっと一人で我慢してた……ってことですか?」
 俺の言葉で驚いたように振り返った総督の、軽く瞠られた瞳を覗き込むように見下ろしながら、なおも俺は言葉を続ける。
「総督は男嫌い、ってことばかりが先に立って、そこを失念してしまったことは申し訳ないと思います。その点には俺も、これからは気を配るようにしますので……だから、我慢できない時は、ちゃんと言って欲しいんですよ」
「おい、アクス……?」
「俺だって、そんな辛い想い、総督にはさせたくないんです。だから、たとえ言い難いことでも、何でも遠慮せず言ってください。そしたら、俺に出来る限りのこと、何でもします。いっくらでも女くらい見繕ってきますから。そんな溜め込んで我慢ばっかりしてるんじゃー身体に悪い……」
 ――ぼぐっ!
 俺が皆まで言う前に、腹へ拳がめりこんだ。
「だから、何でそう変な方向に誤解ばかりするんだ貴様は!」
 思わず腹を押さえて身体を二つに折って呻く、そんな俺の頭の向こうから降ってくるのは怒声。もちろん、殴った当人――総督の。
「別に私は、女が欲しいなどとはヒトコトも言っていないし! 我慢も一切していない!」
「そんなムキにならなくても……」
「誰がムキになぞなっているか! そもそも、貴様が誤解で妙なことばかり言うから……!」
「だって、男も嫌い、女も要らない、なんて言っちゃったら、もう“右手が恋人”ってことになっちゃうじゃーないですか」
「それの何が悪い!」
「えー、それはちょっと淋しすぎるー……」
 ――ごちっ!
 二度目の拳は、過たず俺の脳天をえぐった。
「そんなことまで貴様に心配される必要など無い! 放っておけ!」
 さすがに今回は我慢できず、殴られた頭を押さえながらその場にしゃがみこむ。――今のはマジ本当に痛かった……涙出そう。
 そんな俺には目もくれず、フンと鼻息も荒く出窓に座りなおした総督は。
「私には、そちら方面の気遣いなど一切無用だ」
 言いながら足を組むと、そのまま窓の外へと視線を流した。
 そして呟くように、それを言う。
「――どうせ勃たない」
「え……?」
 まるで独り言のような呟きだったが、さすがにそれを聞き逃すことはできなかった。
 床から見上げた総督の横顔は、窓の向こうに広がる夜の空を背景に、月明かりに照らされて、やけに白く浮き上がってハッキリ見えた。
 それは、どう見ても冗談を言う人間の表情ではあり得なかった。
「私は、自分勝手に劣情を押し付けてくる男なぞ大嫌いだ」
 視線を窓の外に流したままで、吐き捨てるように、それを言う。
「だが女は、それ以上に大嫌いだ」
「総督……」
 それは何故なのか、何があったからそうなのか、――そういった疑問を、その横顔一つだけで、総督は全て拒絶していた。
 だから、それは真実なのだなと、ただぼんやりと俺は納得した。
 それ以上の言葉もかけられず、ただ総督の白く綺麗な横顔を眺めていることしかできなかった。

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