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Ⅰ章.カンザリア要塞島 ─トゥーリ・アクス─
【3】_6
*
それから三日後、俺は王都に居た。
王宮にもほど近い一等地、貴族の邸宅ばかりが立ち並ぶその一角に、目当ての屋敷を見つけ、俺は門番に声をかけた。
「こちらのご主人にお目通り願いたいのだが―――」
『――私のお願いを、聞いては貰えないだろうか』
それを言った総督が、俺に一通の封書を差し出した。
『私の代わりに、これを届けてもらいたいんだ』
受け取った封書の宛名は、――アレクセイ・ファランドルフ。
見るからに貴族の名ではあるものの、だが俺もどこかで耳にした憶えのあるような名前だった。
はて、誰だったか…と首を傾げるタイミングも与えぬ間で、『相手は私の古い友人だ』と、総督が言葉を繋ぐ。
『住所は、こちらの紙に書いておいた。直接会って、この手紙を手渡して欲しい。そして、返事も直接貰ってきてくれないだろうか』
手渡された別紙を見ると、それは王都の住所だった。
『いつまでに行けばいいんですか?』
『できれば、今日すぐにでも発って欲しい』
『でも、俺はまだ指揮官ですし、今カンザリアを離れるわけには……』
『それは大丈夫だ。既に、この一両日中には援軍が到着するとの報せが届いているからな、おまえが不在でも何とかなる』
『そうですか……』
――それにしても、なぜこの危急の時にわざわざ手紙を? しかも、なぜ援軍が到着してからではだめなのか?
あまりにも唐突すぎる話に、少しだけ訝しさも思えたが。
『これはトゥーリにしか頼めない。どうか引き受けては貰えないか』
その言葉で、つい頷いてしまっていた。
『では、今日のうちに急いで発ちます』
『頼んだぞ。私の馬に乗っていくといい、その手配はしておく』
『わかりました。――あの……この書状の内容を、うかがっても……?』
『それは、読んだ先方から直接聞け』
『そうですか……じゃあ、そうします』
気にはなるものの、しっかり蝋の刻印で封がされているから、こっそり盗み読むこともできない。
色々なことが、どこまでも引っ掛かかって残りはするものの、とはいえ上官の命令だ、逆らうわけにはいかない。――しかも、総督の“お願い”ならば尚更だ。
だから俺は、手早く旅装を整えると、その日の夕刻前には、総督の愛馬を道連れにカンザリアを後にするしかなかった。
俺が訪れたお屋敷の主人――アレクセイ・ファランドルフ閣下とやらは、どうやら王宮にお勤めの身分あるお方らしい。
訪ねた時は、まだそのお勤めから帰っていなかったようで、不在だと一旦は断られかけた。
約束もない突然の訪問だったからか、最初は露骨に胡乱な視線を向けられたものの、サイラーク閣下の名前と用件を伝えると、まさに掌を返すかのように扱いが変わった。もう間もなく帰ってくる頃だから待っているようにと、そのまま豪華な応接室に通されたのだ。
総督は『古い友人』とだけしか言わなかったが、よっぽど親しい仲であるのかもしれない。
どこまでも平民の俺には居心地の悪すぎる部屋の中、待っていること、だいたい半刻。
俄かに外が騒がしくなった気配がし、主人が帰宅したであろうことがうかがえた。
やがて、そう間を置かず、この部屋へと近付いてくる足音が聞こえた――と思ったら、ノックも何も無くすぐに扉が開かれる。
「レイノルド・サイラークからの使者というのは、おまえか」
その姿を目にして、思わず俺は息を飲んだ。
「しかも、おまえだったか……久しぶりだな、トゥーリ・アクス」
咄嗟にその場で膝を付き頭を下げる。
「御無沙汰しております。――副団長閣下」
その名前に俺が聞き憶えがあったのも当然で、現われたその人――アレクセイ・ファランドルフ閣下は、近衛騎士団の副団長だった。
俺は入団式の際に目にしただけで、とりたてて交流らしきものは無かったが、居並ぶお偉方の中でこの人だけ断然若く目立っていたため、それで印象に残っていたのだ。
後から知ったところによると、ファランドルフ家というのは、貴族の中でも名門中の名門であり、副団長は、その現ご当主様のご子息なのだそうだ。そのような後ろ盾を持っていれば、出世が早いのも然もありなん、といったところだろう。
お家の後継ぎではない良家の子息が、騎士として王に仕える道を選ぶことは、昔から間々あることらしいが、そもそも武官の地位は、文官に比べてそう高くない。最高峰の騎士であっても、近衛騎士団の団長となってようやっと爵位を許され貴族を名乗ることができる、その程度だ。
だがファランドルフ閣下は、さすが名門家の一員なだけはあり、副団長ながら既に男爵としての地位と相応の領地も有しているという、そんな並外れたお方だった。
…という人であれば、そりゃー自分の屋敷を構えることも許されるだろう。やはり後から知ったのだが、いかに近衛騎士が宿舎に住むことを義務付けられているとはいえ、爵位を得ていれば別、なのだそうな。
そこまで雲の上の存在である副団長閣下が、ほんの三日間しか近衛に所属していなかった俺ごときを憶えていることに、少々驚く。
そりゃあ、あんな理由での異動だったのだ、悪名として記憶に残っていてもおかしくはないとは思うが……それにしても、あんな一目見ただけで、俺を俺だと判別できるほどだとは。
どんだけ自分はこの人に悪印象を植え付けていたのだろうと、それを考えるだに恐ろしい。
さすがに跪礼はやめさせられたものの、勧められた椅子は丁重に辞退して、座った副団長の側に立ち控えた俺は、こっそり背中で冷や汗を流した。
――しかし、この副団長と総督って、一体どんな関係なんだ……?
「ところでアクス、カンザリアでの生活はどうだ?」
「え……?」
「おまえを異動させたのは私だからな、恨んでいるか?」
世間話でもするかのように何気なくかけられた、その言葉にも驚く。――だから俺を憶えていたのか?
「いえ、恨むだなんてとんでもない。むしろ、ご温情あふれる措置をいただいたと、とても感謝しています」
「おまえの話は色々と聞いていた。あのサイラークのご機嫌とりとして、今やカンザリアになくてはならない存在だとな」
「そんな、畏れ多いことです」
どこから何を聞いているのかは知らないが……わりと的確に的を射ている情報が、またソラ恐ろしいこと限りないではないか。
――なんだって王宮の近衛副団長が、カンザリアごときの情報なんざ知ってなければならないんだ?
「しかし、そんなおまえが、どうして今こんなところに居るのかがわからんな」
「それはサイラーク総督のご命令で……」
「カンザリアにユリサナ軍が攻めてきたと聞いているが?」
「はい、ですがそれは先日撤退しました」
「撤退しただと? ユリサナが? ――前線の指揮は誰がとった? まさか、サイラーク本人ではないだろうな?」
「いえ、俺です」
「おまえが?」
「その資格がないことは承知しておりますが、危急の折につき、特別に総督閣下より任命を受けました」
「ならば、なおさら解せないではないか。なぜ勝利の立役者が使者になど立たねばならん」
「それは……敵も撤退して、もう一両日中には援軍も到着するから、俺は居なくても構わない、と……」
「サイラークがそう言ったのか? おまえに、それを?」
「はい。もともと俺は指揮官となる資格も無いですし、援軍がくれば、そちらに指揮を任せることになっていました。使者に立ったのも、総督より急ぎだと頼まれたからです。それでユリサナ軍の撤退した翌日に、俺はカンザリアを発ってここへ来たんです」
こちらの話を聞きながら、顎のあたりに手を置いて、副団長は終始黙考しているようだった。
だが、やおら傍らの俺を振り仰ぎ、手を差し伸べる。
「おまえが預かってきたという、その書状とやらは?」
「はい、こちらです」
その手に、俺は総督から預かった封書を手渡した。
「サイラーク閣下から、直接お会いして手渡すようにと言付かりました。お返事も直接いただいてくるようにと言われております」
だが副団長はそれには応えず、無言で受け取った手紙の封を開いた。
そのまま中の書面を黙々と読み進めてゆく姿を、俺も傍らから固唾を飲んで見守った。
やがて、数枚に及ぶ内容すべてに目を通し終えた副団長が、おもむろに傍らの俺を見上げる。
「アクス……おまえは、この手紙に書かれている内容を知っているのか?」
「いいえ、読んだ先方から直接聞けと言われまして、内容まで教えてはいただけませんでした」
「そうだろうな……」
「副団長……?」
どういうことですか、と尋ねようとした俺の鼻先に、ふいにその手紙の束が突き出される。
「読んでもいいぞ」
「え、でも……」
「おまえのことしか書いてないからな。――おまえを近衛騎士団に戻してやれと、あいつは、それを頼んできた」
「は……?」
どういうことかと訊き返すよりも先に、思わずその手紙の束を引ったくるように受け取っていた。
折り畳まれた紙を開くのさえもどかしく、慌ただしく目が文字を追う。
副団長の言った通り……その手紙には、最初から最後まで、俺のことだけしか書かれていなかった。
ユリサナ軍の攻撃に際し、俺がどんな作戦を立てて、どのように戦い、どんな手柄を挙げたのか……それが克明に書き綴られ、その功績をもって俺を近衛騎士団に呼び戻してあげてほしい、と。
副団長の職にある君ならばそれが可能と思う、どうか彼の能力を認めてあげて欲しい、彼が君の助けとなってくれることを心より願う、――そんな文言で結ばれていた。
「――どういうことだ、これ……?」
我知らず、呟きが漏れる。
こんなこと、俺は一切なにも聞いていない。総督から、近衛騎士団に戻りたいかどうかさえ訊かれたことも無ければ、戻りたいなどとこちらから告げたことさえも無い。
――それ以前に、こんな話、出たところで俺が承知するはずも無い……!
「おまえ本人としては、あくまでも不本意、といったところか」
俺の様子を見ていた副団長が、そこで声を投げかけた。
思わずハッと我に返り、その勢いで「申し訳ありません」と頭を下げる。
「再び近衛騎士団に戻していただけることは、身に余るほどの光栄だとは思います。サイラーク閣下のお心遣いも、ありがたい限りです。――ですが俺は、サイラーク閣下の下で働きたいんです。できることならば、これからもずっと」
「カンザリアに居るか?」
「はい、そうしたいと思います」
「…………」
その返答を聞いて副団長が、再び沈黙した。しばしの間、微動だにせず、何事か考えているようだった。
やがて、重々しくその口を開く。
「この返事は直接貰えと、おまえは言われてきたんだったな……」
「え? あ、はい、でも……」
「ならば、私の返事はこうだ。――トゥーリ・アクスの近衛騎士団への異動について、前向きに尽力しよう」
「なっ……!? 副団長、何を……!」
「アクス、おまえは先刻『一両日中に援軍が到着する』と言っていたな?」
「え……?」
「ではその援軍の司令官が、カンザリア要塞島の新たな総督となるべき辞令を受けていることは、知っているか?」
「――なんだって……?」
思わず俺の思考が止まる。何を言われたのか、咄嗟に理解できなかった。
だが副団長は、そんな俺のことなど構わず、なおも淡々と言葉を連ねる。
「ユリサナとの戦端が開かれた以上、カンザリアは今や最前線。『軍人の墓場』の名も返上だ。なれば、名前だけの総督など置いてどうする。実際に戦闘の指揮を執れる武官を遣わすのが妥当だろう」
「そんな、サイラーク閣下は、決して名前ばかりの方では……!」
「もともとあれは文官だ。武官としての地位など無い」
「でも、だからって……今回のユリサナ軍の攻撃を事前に察知できたのだって、総督の功績じゃないか! それは、命じた陛下が最も良く知っていることじゃないのか……?」
「今回の人事は、その陛下直々のご裁断だ」
「ならば、総督は王宮へ呼び戻されるということですか?」
「それも無いな。また異動を命ぜられるとしても、おおかた次もカンザリアに劣らぬ地方の閑職あたりだろう」
「そんな馬鹿な……!」
それは、頭を鈍器で強く殴り付けられたような衝撃だった。
――『畏れ多くも国王陛下の御下命だ』
――『陛下は、畏れ多くも私に「やってくれるか」とおっしゃった。私は、それを承諾したまでだ』
かつて総督の口から聞いた言葉たちが、ぐるぐると耳の奥で反響する。
総督が、秘密裏にユリサナの動向を探っていたのは、そもそも国王陛下が命じたことではなかったのか。
それを総督は、見事に果たしたではないか。期待に応えたではないか。
陛下は、その功績ごと総督の手柄を揉み消さんとでもする気なのか。
つまり陛下は、最初から総督を認めるつもりなど無かったということなのか。最初から、いいように使い捨てることが目的だったのか。
――『信頼、か……はたして、どうだろうな。真実は陛下のみぞ知る、といったところか』
そんな言葉と共に目にした表情が、脳裏を過る。――まるで自嘲しているかのような、唇の片端を歪めただけの笑顔。
総督は、これを予見していたというのか?
最初から、陛下の思惑なぞ見通していたというのか?
だったらどうして、陛下に諾々と従うような真似をしていたのだ。
あんなにも誇り高い総督が、それがわかっていながら、黙って受け入れるはずがない。
その胸の内に、俺にも明かせぬ別の思惑がある、ということなのか―――。
「――ふざけるな……!」
吐き捨てるように呟いた俺は、そのまま踵を返していた。
「どこへ行く?」
「カンザリアに戻ります! 総督から直接話を聞かない限り、納得できない!」
「無駄だ」
「なんだと……?」
咄嗟に再び振り返っていた。
「今からカンザリアへ戻っても、おそらくサイラークには会えまい」
副団長は、ただ静かに俺を見つめ、そこに座っている。
その静かなまでの佇まいに、なぜか無性に苛ついて、ほとんど喧嘩腰にそれを投げかけていた。
「今のは、一体どういうことです……?」
「先刻、自分で言っただろう。『もう一両日中には援軍が到着する』と。つまり、おまえがカンザリアを発ったのと入れ違いで、それは既に到着しているはずだ。ならば、新総督からサイラークへ、総督解任の旨も既に伝えられたはず。あいつはもう、カンザリアには居るまい。こうなることを予見できないような男でもないしな」
その言葉に、俺は何も返せなかった。
言われてみれば、その通りだと納得できる。総督がそれを予見していなかったはずなど決してない。だとすれば、おそらく行動も早いだろう。
俺が今から馬を飛ばしたとして、どんなに急いでも到着は三日後。
確信できる。――おそらくその頃には、もう総督はカンザリアに居ない。
思わず唇を噛み締めて立ち尽くした。どうすればいいのかわからない、どこに行けばいいのかもわからない。
そんな俺に、変わらず淡々と、副団長は告げた。
「トゥーリ・アクス。今これより、おまえの身は私が預かろう。当面の間、私付きの補佐官として雇ってやる」
「え……?」
「もちろん、近衛騎士団への異動についても、すぐに手続きを進める。しかし、私を信じられずカンザリアに戻るというなら、それでもいい。選択権はおまえにやろう。カンザリアか近衛か、好きな方を選べ。――ただし、どちらにせよサイラークは居ないがな」
立ち尽くしたまま、俺は拳を握り締める。
この時の俺に選択権は無かった。――今はこの人に従うしかない、総督の行方すら追えぬ自分では。
「――あなたに従います、閣下」
「いいだろう」
俺の言葉に頷いて、副団長が椅子から立ち上がった。
そして至近距離から俺の顔を見つめると、真剣な眼差しで、それを告げる。
「会いたいか? サイラークに」
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