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Ⅱ章.バーディッツ伯爵領 ─レイノルド・サイラーク─
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風が木々を揺らしながら吹き抜けてゆく音がする。――その音しか、聞こえない。
「――静かだな、ここは」
少し前までのカンザリアでの喧騒が、まるで遠い昔のことのような気さえする。
総督として赴任していた時は、あまりに途切れることがない人の気配にウンザリすることさえあったが、今はそれすらも懐かしい。
あの生活にとりたてて未練はないが、こう静かな中に一人でいる夜には、ふとした拍子に思い出される。
カンザリアでの日々――そしてトゥーリのことを。
「元気そう…では、あるようだがな」
手の中の手紙を見やり、思わず苦笑が洩れた。
根っからの軍人のクセに、ああ見えてトゥーリは意外にも筆まめだったらしい。近衛騎士団での生活にもすっかり慣れてきたようで、十日に一度は必ず手紙を寄こしてくれる。内容は、自分のこと、周りの同僚の話、それに聞いてもいないアレクのことまで、こと細かく。この間も、手紙に書かれていたアレクの姿に、ジークと二人で大笑いしたところだ。
おかげで、ちっとも淋しくはない。
だが……それでも、ふと切なさがこみあげてくる。
毎回『親愛なるレイノルド』で始まり『愛を込めて』で結ばれる手紙に、彼の気持ちはちゃんと見えているのに。
それでも足りないと思う欲張りな自分が出てくる。
声が聞きたい。おまえに触れたい。――傍に居て欲しい。
だから私も、それを呟く。
決して返事を送らない代わりに。吹き亘る風が彼の耳元へ届けてくれたらいいのに、と願いながら。
「愛してる。――トゥーリ」
バーディッツに来て、早や三月が過ぎた。
ここでの生活にもすっかり慣れてきたけれど……トゥーリが傍にいないことだけには、未だ慣れない―――。
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