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Ⅱ章.バーディッツ伯爵領 ─レイノルド・サイラーク─
【1】_5
*
幼い頃の私は、ほとんど口をきけなかった。
喋ることが出来なかったわけではない。必要以上に無口で引っ込み思案すぎる子供だったのだ。
いつも一人で、部屋に閉じこもっていることが普通だった。
それを変えてくれたのは……優しい兄の存在だった。
私は本来なら、サイラーク家を継ぐべき身ではなかった。
この家に引き取られてきたのは七歳の時。
それまでは、ある侯爵家で育てられていた。
そこは、産みの母の実家だった。
私を産んだ母は、既に妻も子もあった父――サイラーク家の当主と、不倫の関係の末に私を産んだのだ。
さらに当時の父は、まだ男爵でしかなかった。
当然ながら、祖父――母の父である侯爵の怒りを買った。名門家でもない高が男爵ふぜいに未婚の娘を傷ものにされたと、二人は無理矢理のように引き裂かれることとなった。
父と会うことすら許されぬ生活の中で母は、私を産んで間もなく、祖父により半ば強制的に嫁がされた。相手は、伴侶に先立たれ後添えを探していた伯爵ということだった。嫁ぎ先など身分さえ釣り合えばいい、それが祖父の言だった。しかし母は、それから間もなく亡くなったと聞いた。産後の肥立ちがよろしくなかったことが原因らしかった。
そして産まれた私は、早々に母の手から引き離されており、侯爵家の跡取りとなるべく祖父の手元で育てられることとなった。
いかにも侯爵然としていた祖父は、あまりにも厳格で気位が高く、それゆえに家計を傾けることにも無頓着だった。当然、当時から既に侯爵家の家計は火の車だった。
所領や家具までをも切り売りし、とうとう屋敷まで手放すことになっても、それでも祖父は変わらなかった。
しかし、とうとう、その祖父が病に倒れ、ただの厄介者でしかなかった私は、サイラーク家へと押し付けられることとなったのだった。
私が無口で引っ込み思案な性格だったのは、厳格すぎる祖父に委縮していたからだろうと思う。
祖父は常に私に、侯爵家の跡取りとして恥じぬ振る舞いをするよう強要してきた。そして事あるごとに、私を産んだ母と、サイラークの父を、悪し様に罵りながら語り聞かせた。
『あんな両親と同じ人間にならないよう、おまえは侯爵家の人間として立派に生きなければならない』
常にそう言い聞かせられ、頼る両親はいない、祖父に頼らないと生きていけない、と覚った私は、祖父の不興を買わないよう、常にびくびくしながら暮らしていたのだ。
不興を買えば、即座に体罰が処せられる。
痛い思いをするくらいなら、最初から必要以上のことを喋らなければいい。最初から必要以上に祖父に近付かなければいい。
口数少なく、なるべく一人でいること。――それが、侯爵家で学んだ私の処世術だったのだ。
引き取られたサイラーク家でも、それゆえに私は引きこもるばかりだった。
私に優しくしてくれたのは、執事のジークだけ。
父は、そもそもあまり自分の屋敷に帰らない。私の世話をジークに任せると、以来こちらの一切を顧みてくれようともしなかった。義母となった父の妻は、当然のことながら、そもそも私を迎えるに良い顔をしなかった。子供心ながらはっきり自分が疎まれていると判ったくらい、まさに汚いものでも見るかのような表情で私を見ていたのだから。
ここには自分の味方などいない。――それだけが、この時の私に理解できたことだった。
そうして心を閉ざしたまま、サイラーク家に来て一月が過ぎた頃。
突然、私の世界は開かれたのだ。
『――君がレイノルド?』
部屋の窓辺でぼんやりしていたところ、突然、そんな声がかけられた。
振り返ると、自分とそう年齢の変わらなそうな、見たことも無い子供が二人、そこに居た。
きょとんとして見上げた私を、声をかけたその子供が、『うわあ』と驚いたような感心したようなタメ息を洩らした。
『すごい可愛い……男の子って聞いてたのに、まるで女の子みたいだね! ――ねえ、アレク?』
『ああ、そうだな。――てか、本当に男かコレ? 弟っていうのは間違いで最初から妹だった、ていうオチじゃねーの?』
アレクと呼ばれた方の子供の、その無遠慮なまでの言い様と視線に、少しだけムッとして眉が寄る。
それを見たもう一人が、『だめだよ、アレク』と言いながら、私をかばおうとしたものか、まるで抱きしめるようにして身を乗り出した。
『そうやって初対面の子を無駄に怖がらせないの!』
『別に、怖がらせてなんて……』
『君は笑顔が足りないんだよ。――ねえ、レイン? 君もそう思うよねえ?』
そう微笑みを向けられて、再びきょとんとするしか出来なかった。
レイン? ――それは自分の名前だろうか?
『――誰……?』
それは誰のこと? と訊いたつもりだったが、相手は自分が誰かと問われたのだと受け取ったようだ。
慌てて『あ、ごめんね! 自己紹介まだだったね!』と言い、焦ったように笑う。
『僕はライハルト。君のお兄ちゃんだよ。君と同じ、この家のお父さんの子供。「ハルト」って呼んでね。――あと、こっちはアレクセイ。僕の友達』
『俺のことも「アレク」って呼んでいいぞ。よろしくな、レイン』
『僕ら二人ともねえ、ずっと弟が欲しかったんだ。だから君に会ったら、思いっきり可愛がろうって決めてたんだよ』
『今日から、俺たちがおまえのお兄ちゃんだ』
『――お、にい、ちゃん……?』
『うん、僕らには何でも甘えていいんだよレイン』
『そうだぞ、うんと甘えとけ。――じゃあ、まずは菓子でも食いに行こう! さっきジークが焼き立ての菓子があるって言ってた!』
『もう、アレクそればっかり……でも、まあいいか。ちょうどおなかもすいてきたし』
『ほら行くぞ、レイン!』
『おいで、レイン』
そして二人に手を取られて、私は窓辺から立ち上がった。
初めて感じる“兄”という存在のぬくもりは、びっくりするほど掌にあたたかかった。
後から聞いたところでは、ハルトとアレクは、入学した寄宿学校で知り合い、仲良くなったのだとか。
その日は、学校が長期休暇に入ったため帰宅してきたのだった。
長い休暇の間ずっと、私は常に二人の兄と一緒に過ごした。
ハルトとアレクは、部屋に引き籠ってばかりの私を外へ連れ出しては、様々なことを教えてくれた。
盤戯と絵を描く楽しみを教えてくれたのはハルト。
剣術の楽しみを教えてくれたのはアレク。
乗馬の楽しみは、二人から教わった。
それらは、今なお残る私の財産となった。
この時の私は、紛れもなく幸せの直中に居た。
それだけに、二人が学校へ戻った後、屋敷にただ一人取り残される淋しさといったら、たとえようもなかった。
だから初めて、私はジークに駄々をこねた。――『ハルトとアレクと同じ学校に行きたい』、と。
その駄々はジークの口から父へと伝わり、やがて叶えられた。
翌春、私も屋敷を出、兄と同じ寄宿学校へ編入させて貰えることとなったのだ。
学年は違えども、会いたい時にいつでも兄たちと会える生活は、とても充実したものだった。
それは、初等課程を経て、兄たちが中等課程を卒業するまで、ずっと続くこととなった。
この生活があったからこそ、私の口数も増え、内向的すぎる性格も徐々に改善されてゆき、自分の外へと関心が向けられるようにもなったのだろう。
私の人生に光を与えてくれた兄たちには、感謝してもし足りない。
二人の兄の存在は、私の全てと言い変えても決して過言ではなかった。
『――で? 結局、君はどうするつもりなんだ?』
それを尋ねられたのは十七歳の時。もうあと一年もしないうちに中等課程も卒業、そんな時期だった。
既に兄たちは卒業し、それぞれの進路を歩んでいた。
『どうするつもり、って……何がだ?』
問われた意味がわからず訊き返す。
私にそれを尋ねたのは、褐色の肌と金色の髪を持った異国の風薫る美丈夫。
この寄宿学校に留学中の級友で、呼び名を『シャルハ』という、彼はユリサナ帝国の皇族だった。
彼とは出会った時から何だかんだウマが合って、すぐに良い友人となった。兄たちに次いで、私は彼のことが好きだった。
『決まっているだろう、卒業後の進路だよ』
『何だ、そのことか』
何かと思えばくだらない、と、思わず鼻白んでシャルハを見やった。
『前から言っている通り変わりは無いぞ。私は士官学校へ進む』
もうだいぶ以前から、私はそれを決めていた。
家の跡とりにはハルトがいる。ならば私は、騎士となって剣で王に仕える道を選ぼう。
そのために、卒業後は士官学校へ進むつもりだった。
『大好きなアレクを追いかけて、か?』
まるで馬鹿にするかのような口調で続けられたその言葉に、少しだけムッとする。
シャルハの言う通り、アレクは既に士官学校へ進んでいる。
アレクも私と同様、家の跡取りではない。とはいえ、そうはいっても名門中の名門であるファランドルフ公爵家当主の子息だ。何も進んで武官など選ばずとも、生きて行く道は幾らでも用意されている。
だが、それでもあえて自らの得意とする剣で身を立てる道を選んだアレクの意志に、私は、もはや“憧れ”だけでは言い尽くせない、いっそ“理想”とでも呼べるべき感情すら覚えていた。
それゆえに、彼からは並々ならぬ影響を受けていると云っても、過言ではなかっただろう。
しかし、それでも自分の道を決めたのは、あくまでも自分自身の意志だ。
『アレクはアレク、私は私だ。たまたま目指す道が同じであるだけだ』
そう答える私を見やり、『どうかな』と、シャルハが馬鹿にしたように鼻で笑う。
『君はいつも、二言目には「ハルト」か「アレク」だ。いつだって兄たちにベッタリで、兄たちにもどっぷり可愛がられて護られて、君の中では兄たちだけが常に一番だ。まるで自分をわかっちゃいない』
『何が言いたい……?』
『君には、どれだけの魅力があると思っている?』
言いながらシャルハは、長く伸ばしていた私の髪の一房を手に取ると、そこに自らの唇を押し当てた。
『君を手に入れたいと願う男が、どれほどの数いると思うんだ?』
そして斜に見上げてくる視線を受けて、思わずカッと頬が紅潮した。
『何を言っているんだ、貴様は!』
咄嗟に、髪に触れるその手ごと振り払っていた。
そうされて初めて、そのことに気が付いた。
『いきなり何だ……どうしたんだ、普段のおまえらしくない……!』
本当に、この時のシャルハは、普段とは全く違う雰囲気を纏って私を見つめていたのだ。
戸惑う私の内心を見透かしたかのように、シャルハが嘲う。
『本当に君は、危機感が無いな。――それも当然か。ついこの間まで、あのファランドルフ家のお坊っちゃんに張り付いて護って貰っていたんだからな』
『そんなことはっ……!』
『君が知らないだけだよ。君に手を出したくて堪らない男たちは、でもファランドルフ家を敵に回すのは怖いのさ。さすが貴族の坊っちゃん連中は、己が長いものに巻かれてしか生きられないことを、よく理解していらっしゃる。だから、どんなに君を欲しても、何もせず指を咥えて見ているだけしか出来ない』
『そんな、こと……』
『彼が卒業した今は、この私が君の隣りに居るからね。――さすがに誰だって、ユリサナとの外交にヒビを入れる原因となりたくはないだろう?』
言われて思い当たった。シャルハの父は現ユリサナ皇帝の末子、現在は公務としてサンガルディア王都に在る大使館に滞在しており、外交のうえで最も重要な役目を担っている。
『結局、君は長いものにぬくぬく巻かれているがゆえの平和な日々を送ってきた、そういうことさ。さすが国内随一の名門校なだけはある、こう貴族の坊っちゃんばかりが集められては、現実社会と何ら変わりない』
悔しくて唇を噛み締める。
しかし反論することは出来なかった。――思い当たるフシがありすぎて。
『だから君は、護られることに慣れきって、護ってくれるものに甘え過ぎていて、これっぽっちも自分自身の魅力をわかっちゃいないんだよ』
ただ精一杯の虚勢でもって、私はシャルハを睨み付ける。
そんな私の頬に、彼は易々と手を伸ばした。
咄嗟に『触れるな!』と、それを振り払っていた。
『私は君が好きだよ。レイ』
『そんな女のような名で私を呼ぶな!』
『だって仕方ない、君はそこらへんの女よりも美しいから』
『うるさい、言うな!』
『でも、君ほど男らしい男も他にはいない。君には、君の兄たち以上の価値がある』
『なんだと……!』
『誤解するな、君の兄たちを侮辱したわけではないよ。――校史始まって以来の秀才と謳われるハルトの優秀さには並ぶべき者などいないし、剣術ではアレクの右に出る者はいない。それは私も充分に認めている』
そう……そんな優秀すぎる兄たちの背中を見てきたからこそ、憧れ、同時に、追い付きたいと頑張ってきた。
その背中にすら追いつけない自分に、なぜ兄以上の価値があるものか。
『――だから君は、自分をわかっていないと云うんだよ』
相変わらず睨み付けるしか出来ない私を、シャルハはまるで仔猫でも見るかのような瞳で優しく微笑む。
『君こそ唯一、あの二人と同等に肩を並べられる存在じゃないか。君の優秀さも学年一位の成績が証明しているし、王都の武術大会で優勝できるほど剣術の腕もある。それなのに、なぜ兄たちを超えられないと思い込んでいるのか、理解に苦しむね』
『だって、それは……!』
『結局、君はずっとお兄ちゃんと一緒にいたいと駄々をこねている子供なんだよ。ボクはまだまだなんだから、もっと面倒みてよ、って。そう言っているも同じだ』
――その通り……なのかもしれない。
シャルハの言う通り、確かに兄たちと三人で、ずっと一緒にいられたらと願ってきた。それほどに離れたくはなかった。今の幸せなままで、これからも居たかった。――そんな願いなど叶わないと、今では充分に理解しているのに。だって既に、もうそこにはヒビが入りかけている。
だが、それを素直に認めてしまうのも癪に障った。
だから結局、相変わらず唇を噛みしめたまま、ただシャルハを睨みつけたままで、黙って頬を紅潮させているしか出来なかった。
『そうやって虚勢を張り続ける、どこまでも折れない君の気高さは、とても気に入ってるよ』
なのに対照的にシャルハは、優しげな微笑みを浮かべたまま。
『だが、そろそろ君は、兄から離れて、自分自身の人生を見つめるべきだ』
『自分自身の人生は、もうとっくに決めている! 私は士官学校に進み、ゆくゆくは騎士となって国王陛下にお仕えする道を選ぶ!』
『それは所詮、ただアレクの背中を追っただけの人生だろう? ――断言しよう。そう在る限り、君はアレクの上に立つことは決して出来ない』
『なんだと……?』
『騎士なんて、武官と言いながら所詮モノを言うのは家柄じゃないか。アレクの家――ファランドルフ家以上の名家が、この国にどれほどある? アレクはいずれ、そう苦も無く出世して、そう遠くないうちに近衛騎士団の長にだってなれるだろう。だが君は、そうはなれない。アレクが上に立っている限り、常にその下を余儀なくされる』
――すべてシャルハの言う通りだ。
いかに貴族とはいえ、名門の出でもない私は、騎士として出世できたとしても限度がある。
だが、それでもいいと思ってきた。アレクの役に立てるのであれば、アレクと共に居られるのであれば、私はそれで構わない。
『この国にいる以上……それは仕方のない理だ』
『ハルトもアレクも居ない場所で、家柄なんて関係ない君自身の実力だけでしか立てない場所で、己を試してみたいとは思わないのか?』
『え……?』
『私と共にユリサナへ来い。私のために、その力を貸して欲しい』
言われた言葉の大きさに、驚いて私は目を瞠った。
いつの間にかシャルハの表情から笑みが消え、どこまでも真剣な瞳で、真っ直ぐ私のことを見つめていた。
『私の良き片腕となってくれ、レイノルド』
『シャルハ、それは……』
『私は、そのうち帝位にも近付くだろう。そう遠くない話だ。その時、君が側にいてくれたら心強い』
『待ってくれシャルハ、私は……!』
『この国に…そして兄たちに縛られている限り、君に未来は無いぞ。自身でも重々わかっていることだろうが。――その点、ユリサナは実力主義だ。身分など関係なく、能力のある者だけが上に立てる。君ならば、どこまでも上へ上ってゆけるだろう。一国を動かせるほどの地位を得ることだって夢ではない』
『そうだとしても、私は……!』
どこまでも口調が澱む。何と返したらいいのかがわからなかった。
自分がどうすればいいのか、わからなくなりそうだった。
私の実力を認めてくれる、シャルハのその気持ちは素直に嬉しいと思う。だが、何も知らない異国の地で自分一人でやっているけるのかと、そんな戸惑いが拭えない。
それに何よりも、二人の兄のいるこの国から離れたくはない、その気持ちがまだどこまでも強くあった。
『――まあ、いい』
こちらの戸惑いを全て受け止めるかのように笑ったシャルハは、そこでポンと私の頭に手を置いた。
『すぐに答えなくてもいい。卒業までまだ時間はあるしな、ゆっくり考えて決めてくれ』
『シャルハ……』
『私の気持ちは一つだ。君ならば、どんな形であっても共に国へ連れ帰りたいと思っている。それこそ、妻として連れ帰るもやぶさかではないぞ、レイ』
『なっ、なんだそれは……!』
『言葉通りだ。私は君を愛しているよ、レイ。今すぐにでも攫って国へ連れ帰って、自分の宮の奥深くへ閉じ込めてしまいたいほどに』
『馬鹿な冗談はよせ!』
『冗談なものか』
そして、不意討ちのように唇が奪われた。
一瞬、自分が何をされたのかがわからなかった。
ようやくされた行為の意味を理解して、怒りに顔が赤くなる。
思わず、シャルハの頬を渾身の力で平手打ちしていた。
『人を侮辱するのも大概にしろ!』
『侮辱などしていない。本心だ』
『なんだと……!』
『君を愛していると言っただろう、レイ? ――そういう意味でも、私は君を欲しいと願っている』
咄嗟にくっと息を飲んで後ずさった。
だが、そんな私の腕を、ふいにシャルハが捕まえる。
『怯えないで、何もしないよ。私は、君の決して折れない気高さを気に入っているとも言っただろう? 誰にも決して傅くことのない君だから好きだ。簡単に手に入れられるとは思ってない』
『ならば、腕を放せ……!』
『君が逃げないと約束してくれるなら』
『いいから、放せ!』
苛々っとして、語気も強く命令口調で言い放つ。
そうしたらシャルハは、こちらが拍子抜けするくらい、いともあっさり手を放してくれた。
『…今はまだ、それでもいい』
そして、挑発するような瞳で、こちらを眺めて微笑んでみせる。
『こちらも卒業まで、君の答えをゆっくり待つことにしよう。必ず私の手を取ってくれると信じているよ。――君を得られるならば……君の望みを、私は何でも叶えてあげる。それを忘れないでくれ』
だが私は……そんなシャルハに答えを返すことが出来なかった。
それからすぐに、卒業を待つこともなく私は学校を去ることとなったのだから。
――ハルトが死んだ。当主である父と共に。
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