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Ⅱ章.バーディッツ伯爵領 ─レイノルド・サイラーク─
【2】_4
*
しかし当然のことながら、スケベオヤジは、決してただのスケベオヤジではなかった。
どこまでもスケベオヤジ然としながらも、それでも一国の主だった。
書記官として議会の末席に参加させてもらうようになり、それがよく理解できた。
――紛うことなき“王”だ、この御方は。
この国は、すべてこの御方の一声で動いている。――そう云っても過言ではないだろう。
議会とは名ばかりで、最終的には王の一声で全ては決まる。
しかし、その判断が間違っていることは一度として無かった。
毎回、傍から聞いている私には、どんな重臣の尤もらしい言葉よりも、最終的に王が下す決定こそが、何よりも正しいものだと思えた。
この御方は、国にとって、民にとって、何が“最善”であるのかを、よく理解していらっしゃるのだろう。
この御方が居る限り、きっとサンガルディアは安泰だ。――そう自然に思えてしまう。
最初は、ただのスケベオヤジと呆れもしたその姿に、いつしか頼もしささえ覚えていた。
この王のもとで働けるのなら、悪くない―――。
与えられた仕事を、初めて私は“楽しい”と思い始めていた。
書記官としての仕事にも、ようやく慣れ始めてきた頃。
突然、私は王の私室へと呼び出された。
「――おう、待ってたぞ!」
部屋に通された私の姿を見止めるなり他の者すべてを下がらせて、「ほら、早く座れ」と、自分の向かいの空いている椅子を指し示す。
座っていた王の前には、二人掛けの小さな卓。その上には酒と盤戯の一揃え。いつでも対戦が始められるような状態で、既に盤上には駒も並べられている。
「おまえ、まがりなりにも王太子の指南役だろう? 一戦、付き合え」
「…かしこまりました」
そうして、盤を挟んで差し向かうことしばし―――。
――なんだ、ただの暇潰しの相手が欲しかったのか。
いきなり呼び出されたから、心当たりは全く無いものの何か不始末でも仕出かしてしまっただろうかと、内心ビクビクしながら来たというのに。
そんなものただの杞憂だと嘲笑んばかりに、呼び出した当人は真剣な表情で眼前の盤に熱中してくださっているのだ。
少しでも公の場を離れれば軽口ばかり叩く普段の様子とは違い、ひたすら黙考し、時おり無言のまま駒を進める。――この姿が、盤戯の時の王のスタイルなのだろうか。
それならそれで、就いたばかりの職を追われることも無さそうで良かったと、だから私も少しだけ安心して盤上の駒に集中した。
こと盤戯に関しては、まがりなりにも“王太子の指南役”であった身だ、ここで無様な結果などは見せられない。
ようやく雑念も引っ込んできて、心おきなく集中できそうだ。
真向かいからポソリと声が投げかけられたのは、そんな折でのことだった。
「――なあ、サイラーク……」
「あ、はいっ……!」
軽くビクッとして盤から顔を上げる。
しかし目の前の王は、相変わらず真剣な表情で盤を見つめていた。まるで、最初から声など発しなかったかのような風で。私の方など、これっぽっちも視界に入れてはいなかった。
思わず、自分が呼ばれたと思ったのは気の所為か? と思いかけた途端、再びゆっくりと、その口が開かれる。
「私の息子は、おまえさんに何か無体な真似なぞ、強いちゃいないだろうか―――」
途端、駒を摘まんでいた手が、ピクリと小さく震えてしまった。
――この御方は……一体、私に何を問おうというのだ……?
王太子の私への振る舞いを、全て知っている上での問いかけなのだろうか。
何と言葉を返したらいいのかもわからず、気付かれぬよう、こっそりと息を飲む。
相変わらず……今でも、私と王太子の関係は続いていた。
とはいっても、既に書記官として王宮で日常を過ごしている私は、もう実質、盤戯の指南役としての王太子宮でのお役目は解雇されているに等しかった。
しかし、それでも、お召しがあれば行かなくてはならない。――当然、求められれば身体も差し出さなければならない。
とはいえど、今やそれも滅多に無いことだった。
王太子にとって、もはや私は用済みなのだ。
私が今の職に在ることで、きっと彼の目的は果たされたのだ。
当初、就くはずだった侍従ほどには王の側近くで働くことは叶わなかったとはいえ、それでも満足できる結果だったのに違いない。なぜなら、それについての文句など王太子からは一切出なかったのだから。
そして、そう頻繁に私を欲しがらないところからして、新しい“お気に入り”も見つけたのだろう。――指南役として通っていた間、それらしき者が何度か入れ替わっていた様も、私は知っている。
用済みの私なぞ、とりあえず繋ぎ止めておこうという意図のためだけに、呼ぶに過ぎない。
思い出したように愛の言葉を囁いて、自分から別の者へと気持ちを移させないように。
そして、“お気に入り”が切れた時の穴埋めにでも、私を使っているのだろう。
それならそれで、こちらにも否やは無い。
虫唾の走る大仰な愛の言葉にうっとりしてみせ、なかなか呼んでくれなかったことに軽く拗ねる真似もし、それについての謝罪と言い訳には『仕方ない』と悲しげな表情で笑って許し、瞳を潤ませては『いつでもお召しをお待ちしております』などと心にもないセリフを吐く。
私も同じだから。――王太子を繋ぎ止めておくためなら、喜んで身体だって開く。
せっかく入り込んだ王太子の懐中から、いま離れてやるわけにはいかない。
私の用は、まだ済んでいないのだ。だからこそ、こうやって機を窺っている。
あの男を殺す、その機を―――。
その思惑を……さすがに父親である王に覚られるのは、都合が悪かった。
そうでなくても、気持ちが揺らぎかけている。
だって国王陛下が、あまりにも尊敬に値する御方だから。どこまでも国と民のことを考えている、立派な為政者だから。
でも、それだけではなく。
かつて、ハルトとアレクを兄として愛したように。シャルハへ友としての好意を抱いたように。
どことなく身近にさえ感じられる慕わしい想いと共に、この御方に惹かれかけている自分がいる。
できることなら、この御方を悲しませるようなことはしたくない。
この御方に何かあれば、すぐさま我が国は傾く。それほどに偉大な御方なのだから。
しかし、あの男には、到底この御方の後を継ぐべき資質があるとも思えない。
あの男を、このまま王太子としてのさばらせておくことは、決して国の利とはならない。
だが排除すれば、きっと王が悲しまれる―――。
そんな堂々巡りの中に嵌まり込んでしまいそうだった。
あの男がハルトを穢した罪は、決して赦し難いものとして、ゆるぎなく私の中に在り続けているというのに……その復讐の暗き炎を燃え上がらせんとするたびに、王の豪放磊落な振る舞いと人好きのする懐こくも豪快な笑顔が、脳裏を過ってしまうのだ。
そして、迷いが生まれる。堂々巡りに嵌まり込む。
思惑通り王太子の懐中に居続けていながらも、もう私はどうしたらいいのかわからなくなりそうだった。
王が私へ下さった言葉は、まさにそんな折でのことだった。
「――王太子殿下は、お優しい御方です」
とにかく王を悲しませたくない想いから、そう私は応える。
「無体なことなど、何も強いられてはおりません」
王太子を騙す時のように、平然を演じた。――この御方の前で嘘を吐くことには、少しだけ心が痛んだ。
しかし王は、それすら見抜くかのように「隠すこたねぇよ」と、先を続ける。
「これでも一応は親だからな、息子の性癖くらいわかってるさ」
言いながら手を動かして、盤上に駒を置く。
「この私が、可愛コちゃんを周りに侍らせることが何よりも好きなように。――あいつは……」
そして上目遣いに、初めてこちらに視線を向けた。
「綺麗な男を苛め抜くのが大好きだ。――サイラーク、おまえのような」
まさに“そうだろう?”とでも訊いてくるかのような饒舌な視線を、私は駒を動かし、盤上へと目を伏せることで逸らした。
「さあ……そのようなことまでは、わたくしは存じ上げません」
しかし、きっとその通りなのだろうな、とは思った。
私は、とりあえず繋ぎ止められているからには、用済みとはいえ未だ“手駒”として認識されてはいるのだろう。身体を求められる時も、必要以上の痛みなど与えられるようなことはなかった。
とはいえ、言動の端々で、その片鱗がうかがえてはいた。
あのハルトへの仕打ちを聞くだに、そして、それを嬉々として話した様子から察するに、そういうふうに弱者を甚振るのが王太子の本質なのだろう、と。うすぼんやりながらもそれを感じてはいた。
それに、盤戯の指南役として通っていた期間で、私は見てしまったのだ。
――王太子宮の一室に軟禁されていた少年の姿を。
ある日の盤戯の対戦中、王太子が用事で席を外し、戻ってくるまでの時間潰しに宮の庭でも散歩していようかと、一人で部屋を出た時のことだった。
広い中庭の隅に母屋から不自然に突き出ていた、こじんまりした部屋らしきものの外壁を見つけた。
物置き部屋にも見えず、使用人部屋のようにも見えない。やや高い位置にある小さな窓には遠目ながら鉄格子が嵌まっているのがわかり、まさか座敷牢でもあるまいしと、ほんの好奇心で窓を覗いてみた。
すると、窓に下げられていた覆い布の隙間から窺えたそこは、まさに座敷牢だったのだ。
一見して普通の部屋の設えながら、明らかに人間を監禁するための部屋だった。
そこに一人の、まだ幼い少年と思われる年格好の人間が居たのだ。――その片足を鎖によって繋がれて。
ほとんど全裸に近い格好で寝台に横たわっていた彼の、こちらを向いていた剥き出しの背中には一面、多数の痣や腫れ、擦過傷がうかがえた。
――何をされたらそうなるのかは、一目でわかった。
咄嗟に私は、その部屋を見なかったことにした。見てはならないものを見てしまったと、逃げるようにその場を離れ、誰にも見られていないことを確かめながら元いた部屋まで戻った。
それは、私が王太子へ抱いていた漠然とした不信感を、より確固たるものとするには充分な材料だった。
そして後日……やはりあの少年が気にかかった私は、また一人になった機に、あの部屋の窓の下へと、こっそり足を運んでみた。前と同じように窓の覆い布の隙間を見つけて、部屋の中を覗き込む。
しかし、そこにあの少年はいなかった。
代わりに、別の男――今度は二十歳ほどの青年が、やはり全身を痣と傷に覆われて、そこに居た。
うかがえたその男の横顔は、多少の傷はあれど、とても整っていたように記憶している。
それから何度か足を運ぶたび、その部屋の住人は変わっていた。少年だったり青年だったり…という差こそあれ、いずれも若く見目良い男子ばかりであることに変わりは無かった。
もと居た住人が、あそこを出た後にどうなったかなど……そんなもの、考えたくもない。
――王は、あの部屋の住人のことを、知っている上で仰っているのだろうか。
「あれはなぁ……まだ世の中のことなんざ何もわかっちゃいないガキの時分に、周りから勧められるまま結婚して、分不相応に作っちまった子供でな……」
突然、何の脈絡もなく語り出した王は、のらりくらりと否定してみせた私の言葉なぞ、さも当然とばかりに受け流した。最初から私の返答など求めていなかったかのようだった。
「おまえさんは知らないだろうが、この王宮が、お家騒動でゴッタゴタしてた時があってな……」
それは聞いたことがある。まだ私が生まれる前――王が即位する前の話だ。
時の王――ルディウス六世は、何人もいる王子の誰を王太子とするのか、定めぬまま急死してしまった。そこで、野心に燃える重臣や諸侯たちがこぞって王子一人一人を祭り上げ、王位をかけての争いに発展することになった。
その結果として、まあ端的に言えば、争った王子たちは全員が共倒れとなったのだ。
よって、争いから逃れるように王宮を離れ、後見人であるファランドルフ公爵の庇護のもとにあった、最も王位から遠い場所にいた末の王子が、ルディウス七世の名を襲名し即位する運びとなった。
それが現国王陛下である。
「右も左もわからないまま王位に就かされるや、争いにならないよう早く世継ぎを決めておけと急かされて、仕方なく即位と同時に后を迎えて、それからすぐ産まれた子供を王太子に定めて……それをした私は、まだ十五だった」
「それは大変な御苦労だったと、聞き及んでおります……」
「あーもうそりゃ大変大変。たった十五のガキに国一つ丸ごと背負わせるって、普通ありえないだろう? それほどに、あの時は皆が皆、余裕がなかった。それこそ、最も余裕が無かったのは私だがな。そんなだから、王太子と定めた我が子にすら、構ってやる余裕も全く無かった」
「陛下……」
「少しばかり余裕の出てきた今になって……ようやくそれを、ものすごく後悔している」
そこで王は言葉を切ると、傍らに置いていた杯を口へ運んだ。
杯を持ったそのままで卓上に肘をつき、私からも盤上からも視線を逸らす。
「親に顧みられない子供が、どんなふうに大人になるか……そんなもの、わかりきっていたはずなのになァ……」
それはまるで独り言めいていて、だから私は、何も言葉を差し挟むことができなかった。
ただ黙して、陛下の次の言葉を待った。
「幸い私は、周囲の人間に恵まれたが……あれは、どうだろうな……生まれながらにして王となることが決定されてしまった、そんな特別な子供に寄ってくる人間なんざロクでもないのばかりだと、それもわかっていたはずなのに……あれが歪むのも、当然といえば当然なんだろう」
すべて私の所為か、と、自嘲するように呟いて王が杯を飲み干す。
そして卓上に戻されたそれに、私は無言で、酒瓶を傾けた。
とくとくと赤い液体が杯に注がれる小さな音が、それでも無言の空気の中では、とても大きく耳を打った。
「私は、あれが哀れでならないのだよ。サイラーク」
満たされた杯を再び手にして、ようやく王が、私を見る。
「あれが次の王となるに相応しいとは、私とて思ってはいない。才覚だけはあるが、王としての心構えが全く出来ていない。あれに国民を任せることを考えると、不安は尽きない。しかし私は、自分の経験から家中の争い事なぞウンザリなんだ。それで側室も持たず、あれの他に子も生さなかった。だから、他に挿げ替えられる首も無い。どんなに不向きとわかっていても、あれから王太子の地位を剥奪することは出来ないんだよ。あれが王となるに相応しく成長してくれることを願うしかない。――親馬鹿だがな」
「――わたくしは……」
王が言葉を切ったところで、やおら私は口を開いた。
「わたくしは親というものを知りません。産んでくれた母とは会ったこともありませんし、引き取ってくれた父は、わたくしに目を掛けてくれることも一切ありませんでした。そして義母となった人には疎まれました。わたくしは、親の子を想う愛情も、子が親を想う当然の愛情さえ、知りません。だから、わたくしも当然のように歪んでいるのかもしれません。――ですが……」
言いながら脳裏に思い出されるのは、息子を想うあまりに狂った義母の姿。――歪んだ親の姿。
そして母を想うハルトの笑顔。――母親の歪みさえ許して受け止めていた、ゆるぎない優しさの姿。
「陛下は、決して間違ってはおりません」
私は真正面から王を見つめ、それを告げる。
「何が正しくて、何がいけないのか、わたくしにはよくわかりません。ただ、親が子を、子が親を、想うことに間違いなどはありません。それでも間違ってしまうのは……その想いが、正しく相手に伝わっていないからです。知らぬ間に擦れ違ってしまっているからです」
「サイラーク……」
「わたくしは、そう信じたいのです。――ちゃんと想いさえ正しく通じ合えば、正しい形で分かり合える、と……」
ハルトへと想いを馳せる。
今は無理でも、きっと時間が経てば、いつかはハルトを理解できるかもしれないと思っていた。そうしたら分かり合えるかもしれないと。
しかし先に逝かれてしまったら、そんな日は永遠に来ない。
ふいに、こちらを見つめたまま王が手を伸ばしてき、私の目許のあたりを指でなぞった。
「――すまなかった……何か辛いことでも思い出させちまったみたいだなあ……」
その言葉で、自分が涙を流していたらしいことに、遅まきながら気が付いた。
王のもとへと引き戻された指が濡れているのを見て、それがわかった。
思わず、羞恥で頬がカッと熱くなる。
「も、申し訳ありません! 陛下のお手を煩わせて……!」
「なあに、こんなもの何の手間にもならねーよ」
口許に軽い笑みを浮かべ、そして再び、手の中の杯を口へ運んだ。
「それに、この親馬鹿を『間違っていない』と言ってもらえたのは嬉しかった」
おあいこだ、とニカッと笑った陛下につられ、私の顔にも笑みが浮かぶ。
「まだまだ先の話であって欲しいが……だから私は、いずれあれに王位を譲らねばならん。当人も三十を迎えるあたりで、さすがに焦り始めてもきたようだしな」
そういえば、と思い当たるふしがある。
王太子と交わす会話の端々に、常に『私が王となった暁には…』といったセリフが必ず出てくるような気がしていたのだ。
――そうか……あれは、早く王位を継ぎたいという焦りだったのだな。
言われてみれば納得できる。あの男は、王太子という確固たる身分にありながら、そこにいつも不満を洩らしていた。決して国を民を想う気持ちからではなく、純粋に、ただ己の欲のためだけに。
「サイラーク。ここに引きずりこんだ私が言うのもナンだが……王宮は、生き辛い場所だぞ。誰もがいつも足を引っ張り合っている。自分の身を自分で護ることが出来ねば、ただ蹴落とされるだけだ」
「はい」
「おまえには、息子のことといい、これから更に迷惑をかけることにもなるだろうが……どうしても困ったことがあれば必ず言えよ」
「お気遣い、ありがとうございます。でも、わたくしは大丈夫です」
「ほら、そうやって……おまえは何でも一人で溜め込みそうだからな。心配でならんよ」
「そんな、わたくしの心配など畏れ多い……」
「おまえみたいなガキンチョは、もはや息子のようなモンだ。若いうちくらい、心配してくれる親父には頼っておけ。息子の心配なんざ、親父にはヘのカッパだからよ」
そうして、照れ隠しなのか、豪快にがっはっはと笑ってみせた陛下は、思い出したように「おりゃ!」と、大きく音を立てて盤上に駒を置いた。
心の奥がほかほかとくすぐったくなるような気持ちを覚えて、私も自然に笑顔を返していた。
それは、作ったものでは決してなく、どこまでも本心からの笑みだった。それが自分でもわかった。
「陛下……それでは早速ですが、ひとつ、よろしいでしょうか」
「おう、なんだ!」
「――詰んでます、それ」
「ぬぁにっ……!?」
おいコラちょっと待て今のナシやり直す! と、盤上を睨みうーうー唸り始めたその姿を見やりながら、私は久しぶりに声を立てて笑った。
王の前で無礼すぎる振る舞いだと、自分でも重々承知してはいたけれど、それでも止められなかった。
ああ私はこの御方が大好きだと、そのとき自然に、そう思えた。
尊敬する王としてではなく。優れた為政者だからではなく。
私の知らない父親の情をくれるこの御方に、私も息子としての愛情で応えたい、と。
このひとの背中をずっと見て生きていきたいと、そう、願ったのだ。
今この時、この瞬間だけは……暗い願望に侵されていた心が、自分の中から綺麗さっぱりと消え去っていた。
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