涯(はて)の楽園

栗木 妙

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終章.サンガルディア王都 ─アレクセイ・ファランドルフ─

(2)

 
 




 国王の死をもって、それを公布しシャルハは戦乱を収めた。
 そして、その時をもってサンガルディア王国はユリサナ帝国の属国となることが宣言された。
 ユリサナに併合されるのではなく、ユリサナの監督下で、これまでの国家の形そのままを継続することが許された、ということ。
 ただし、絶対王権の撤廃は免れなかった。国王は立てるも、それは形ばかりで、事実上の決裁権を有するのはユリサナ側から派遣される監督官である。
 それでも、敗戦国に対し与えられるにしては、それなりに寛大な措置だとも云えただろう。


 当面の間、その監督官の役目にはシャルハが就くことになった。
 彼は、これまでの我が国の制度を一切変えることなく、そのまま維持してゆく方向で政務を進めた。
 爵位を持つ貴族たちも、それを取り上げられることもなく現状のままの地位を許されたし、王宮に勤める者であっても、それは同様だった。
 ただし、国王に近しい地位に在る重臣だけは、一部の人事粛清が行われた。
 そしてシャルハは、その空いた職を埋めるべく、かつての宰相レイノルド・サイラークを王宮へ召喚しようとした。
 しかし彼は、それを頑として受け入れなかった。
 代わりに、彼の推薦による者を引き立て、各々政務を任せられる地位へと配置した。
 そう時間を置かずして、戦争の所為で狂っていた様々なものが、もとの通りに戻されてゆく。


 ただし王位だけが、いまだ空位のまま―――。


 まだ戦乱の余韻が色濃く残る落ち付かぬ王宮に、ようやくシャルハを中心とした新体制の形が出来上がりつつあった頃。
 俺は、あるものを持って、シャルハの執務室を訪ねた。
 室内に入るや「大事な話がある」と、余人を退かせ二人きりにしてもらう。
 そうしてから彼のいる執務机の前に立つと、手にしていたものを、その眼前に差し出した。
 それは、書類などを入れるための文箱だった。
「――何だ、これは?」
「前国王――ルディウス七世陛下の遺書だ」


 その文箱は、前国王陛下が亡くなってからそう時間を置かずして、侍従長手ずから、密やかに俺のもとへと届けられたものだった。
『陛下の最期のお言葉でございます。――自分が死んだら、決して誰にも知られぬよう、これをアレクセイ様にお渡しするように、と……』
 思いもよらぬことに絶句した俺を真剣な眼差しで見つめて、彼はそれを言ったのだ。
『お亡くなりになる前の晩、突然これを託されてから、お休みになられ……それきりでございました』
 ――やはり……陛下は、気付いていながら毒入りの酒を飲んだのか。
 レインの言った通りだったのか、と、今さらながら止められなかったことが悔しくて、思わず唇を噛み締めた。
 陛下は、自分が死ぬことを予期したからこそ、この文箱を残したのに違いない。
 震える手で、侍従長から、その文箱を受け取る。
 そんな俺に向かい、切ない色を含んだ声音で呟くように、侍従長は告げた。
『これこそ陛下の御遺志でございます。その御心を尊重したお計らいを、どうかなさってさしあげてくださいませ』
 侍従長は、この文箱の中に託されていた陛下の想いを、既に知っていたのだろう。
 紛れもなく、それは陛下の遺書だった。


「これは……!」
 文箱の中身を全て改めたシャルハが、そう唸るや絶句する。
 それもそうだろうさ。――俺も最初に見た時は、全く同じ反応をしたものだ。
「さすがというか、周到というか、本当にあの御方は……」
 やがてシャルハが、額に手を当ててふーっと長いタメ息を吐きながら、そんな呟きを洩らした。
「こんな布石まで打っていらっしゃったとは、本当に恐れ入る」


 文箱の蓋を開けると、その一番上に置かれていたのが、俺へと宛てられた手紙だった。


『アレク、おまえが今これを読んでいるということは、私は死んだということだな。
 この手紙が正しくおまえの手に渡ってくれていることを、とても嬉しく思う。

 私は、これから例の酒を飲むつもりだ。
 レイノルドが毒見をしてくれた酒。
 私は、自分の息子の仕出かした不始末の責任を取らなければならない。
 しかし、レイノルドまでもがそれを負う必要はない。
 私は助からなくても、レイノルドは、アレクとシャルハ殿がきっと助けてくれるはずだと信じている。

 そのうえで……これからのこの国の行く末を、レイノルドに託そうと思う。

 愚息のもと、これまで同様この国のために尽くしてくれるというのなら、そんなにもありがたいことは無いが。
 ――まあ、そんなことは決して無いだろうな。
 レイノルドが、この国を滅ぼしたいと願うのなら、それでも構わない。
 彼の思うがままに委ねよう。
 アレク、おまえはこれまで通り、彼の助けとなってやれ。
 我が愚息から、彼を護ってあげて欲しい。
 それが出来る立場も用意してある。
 いつかこんなこともあろうかと、正式に書類を整えておいたから、一緒に入れておく。
 必要な時にいつでも使え。
 勿論、お父上ファランドルフ公爵の許可も得ているから、安心してくれ。

 それと、あと一つ、頼みがある。………』


「この書類があれば……次の国王――ルディウス九世となるべきは君、だということになるなアレク?」


 シャルハの言葉に、俺は無言をもって応える。
 前王陛下の残した書類――それは、陛下と俺の養子縁組が為されたことを公的に証明する書類だったのだ。


 シャルハに打ち明ける前に、まず陛下の手紙の裏を取るべく、その真意を父に問い質した。
 すると、その通り父も納得済みで為されたことだったという返答を得た。
『前陛下は……王太子を挿げ代える首を探しておられたのだよ』
 そう、父は語った。
『ご子息はとても有能な御方ではあるが、国というものを、民というものを、全くわかっておられない、あれに国王など務まらない、そう陛下は嘆いておられた。ご自身の退位までに王太子の精神的成長がみられなければ、廃太子も辞さないお心構えでいらっしゃり……その代わりとするため、おまえを養子にと望まれたのだ』
 確かに、それが最も妥当で、なおかつ手っ取り早い選択ではあっただろう。
 なにせファランドルフ家は現王家に最も近い外戚、血統の上で何も問題はない。加えて俺の母は、陛下の異母姉にあたる王女だった人だ。また更に付け加えると、陛下の正妃であるのが父の妹――俺の叔母にあたる人でもある。もともと陛下と俺の間には、叔父と甥という、わりと近い血縁関係までもがあった。
 更に云えば、数人いる兄弟の中で、騎士として武官の道を選んだのは末子である俺だけだ。兄たちはそれぞれ爵位を得て、既に独立している身である。そこを鑑みると、今や貴族社会のしがらみをごっそり抱えているだろう兄たちより、ほぼ何も持っていない俺を選ぶのが、最も都合がよかったのだろう。
 当然のことながら、その申し出を断る理由もない父は、俺を陛下の養子とすることに二つ返事で承諾した。
 しかし、そのような事態となる瀬戸際まで公表するべきではない、という互いの見解から、世間には勿論、俺にすらその事実は伏せられた。
 とはいえ、それが、いつどんな時に必要になるかわからないからと、書類だけは急ぎ整えておいた。
 その書類は陛下が厳重に秘匿しており、今際の際になって、ようやく当事者である俺の下へと託されて伝えられた。――そういう事情だったようだ。


「それを踏まえた上で、一応は訊いておこうか。――アレク、君の意志は?」
 書類を全て元通りに文箱へと戻したうえで、手を組みながらシャルハが訊く。
「この事実を公表し、ルディウス九世として即位する心づもりはあるか?」
「――あるはずもないだろう」
 迷いも無く俺は即答した。
「そもそも、即位する気があるのなら、これを受け取った時点でとっとと公表してるさ」
「それはそうだろうが……」
 じゃあ何故だ? と、頬杖をついて投げやりにシャルハは問う。
「それならそれで、隠し通しておけばいいだけのことだろう。なぜ今になって、こんなもの私に見せる?」
「こうやって御璽まで押された書類が整えられてある、ということは、既に受理もされた正式なものであることは疑いようもないだろう。であれば、調べればいずれは発覚する事実、ということでもある。隠しておいたところで、隠し通せるわけがない。――特におまえの場合、王位を継がせる後釜を探すためならば、隅から隅まで執念深く掘り返しそうだしな」
「まあ、それも一理あるな」
『隅から隅まで執念深く掘り返す』ってところは否定しないのか。――今さらながらに嫌すぎるな、こいつの性格。
 そもそもシャルハは、昔からそういう奴だった。優しい顔を見せるのはレインにだけで、他の人間に対する扱いなんざ、ぞんざいすぎることこのうえない。それでも俺には、レインの兄ということもあり、まだマシな部類の顔を見せてくれてはいたんだろうが……あの頃は、事ある毎に向けられる嫉妬の眼差しが物凄く、いい加減ウンザリするほどだった。――そこは今でも、さして変わっちゃいないんだろうけれど。
「なら、こうしてわざわざ私にこの事実を伝えた、君の意図は?」
「正式に王位を辞退するために決まってる」
「本当に……我が儘な王子様だな君は」
「――『王子』言うな」
「でも、せっかく見つかった王子様に辞退されちゃっても、困るんだよねえ~……」
 食い気味に否定するも、既にそんなもの聞いちゃくれていなかった。――本当に、そのレイン以外の人間に対する扱いの悪さ、いい加減どうにかしやがれよマジで?
「今や私が居るから、政務の上では王なんて別に必要ないが。とはいえ、やはり国の象徴だしな、あまりに空位の期間が長すぎるのも、要らぬ不安を国民に与えてしまうことになるからね」
「王子なら、他にもいる」
「…おや、そうだったかな?」
「姉が先日、無事に王子を出産した」
 俺の姉――つまり、シャルハとアクスによって自害させられた、あの陛下の正妃である。
 産まれた子供は、その第一王子。
「その子こそ、王位を継ぐべき正当な嫡子だ」
「言いたいことはわかるが……とはいえ、産まれたばかりの赤子に何ができる? それが成長するまで、何年空位のまま待てばいいんだ?」
「今おまえが言ったじゃないか。王位が空でも、政務に支障は無いんだろう? ならば、その産まれたばかりの赤子でも、王位に据えておけばいい」
「また馬鹿げたことを……」
 殊更に再び深々としたタメ息を吐き、まさに頭を抱えるかのような仕草で、シャルハが額に手を載せる。
 そのまま微動だにせず、俺が目の前に立っていることさえ忘れたかのように黙りこくり、しばし頭の中だけで何事かを考えているようだった。
 そして、やおら「よし!」と声を上げると、ばんと大きく音を立てて机に手を置くや、その場に勢いよく立ち上がった。
「では、こうしよう」
 立てた人差し指を、おもむろにびしっと俺へと突き付ける。
「とにかく、君が前王陛下の養子である事実は公表するぞ」
「――は……?」
「そのうえで、議会と侍従に諮ってみよう。君に王位を継がせるべきか否か」
「おい、ちょっと待て……!」
「もちろん、産まれたばかりの第一王子に継がせるべき、という君の意見も尊重しよう。しかし、それならば、ある程度成長するまでは摂政役も必要となるだろう、それには君が適任だ」
「だから、それはシャルハ、おまえがいれば……」
「もう、以外にニブいなアレク。――つまり、君が王位を継ぐのは、もう確定ということだよ」
「こら待てシャルハ……!」
「それが、中継ぎで終わるか否かを議会で決める。それ以上の妥協は出来ないな」
 ――本当に……なんっっってコイツは嫌なヤツだ!
「結局、俺の意志なぞガン無視か……!」
「無視はしていないぞ。ちゃんと第一王子を立てることも考えてやる、と言ってるじゃないか」
「そこじゃない! 俺は王位に就く気は無いと、ハナっから言っている……!」
「――馬鹿だね、アレク」
 ふいに、ふっと鼻で笑って、シャルハが俺の言葉を遮った。――その表情、明らかに馬鹿にしてるだろう?
「いいかい、アレク? 世間の王子様の誰もが、何も好き好んで王位に就いてる、っていうワケじゃないんだよ?」
「なんだと……?」
「王位っていうのはね。基本、“就く”ものじゃないんだ、“就かされる”ものなんだよ。それも、自動的にね」
 それを、してやったり、といった風ににやりと笑ってみせた、そんなシャルハの表情に思わず飲まれて、俺は絶句するしか出来ない。
 ――実際の“王子様”であるコイツに言われてしまうと……説得力がハンパ無いじゃねーかコノヤロウっっ……!
「生まれながらにして王位に就くことを決められちゃってるような立場に比べれば、こうやって予告があっただけ、まだマシだと思ってもらいたいね」
 人が絶句している隙に、そんなことまでしゃーしゃーと言ってのける。――本当にコイツ、性格悪すぎだし!
「そういうわけだから、この書類は私が預かっておくよ」
「…もう、勝手にすればいい」
 こいつとは話が通じてくれない、と、もはや諦めて踵を返す。
 それをシャルハは、「あ、そうそう」と、思い付いたように引き止める。
「それで、これはどうするのかな?」
「え……?」
 振り返ると、陛下が俺へと宛てた手紙を、シャルハの手が摘まみ上げて掲げていた。
「この手紙に書かれていること……陛下の御希望、叶えてあげるのかい?」
「――ああ……そうだな」
 おもむろに手紙だけを、その手の中から奪い返す。
「そろそろ、告げても大丈夫だろうな……」
「ふうん……まあ、いいけど」
 好きにすれば? と、どことなく面白くない風に呟いて、再びシャルハは椅子の上に腰を落とした。
「休暇を取るのは構わないが、戴冠式までには帰ってきてくれよ?」
「――ぬかせ、バカたれ」
「しかし、それを知ったアクスの顔が見ものだな。結果的にアレクがヤツを出し抜くことになるんだから」
「人聞きの悪いことを……」
「とにかく、アクスを伴にして連れていくのは、私が許さないよ?」
「…それは嫌がらせか?」
「もちろん!」
 ――本当にコイツは、性格が悪いうえに何て大人げない……。
 もはや何を言うのも諦めて俺は、深々とタメ息を吐きながら、シャルハの元を後にしたのだった。


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