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終章.サンガルディア王都 ─アレクセイ・ファランドルフ─
(3)
『――それと、あと一つ、頼みがある。
いつか時が過ぎて、全てが片付いたら。
レイノルドが、生涯の伴侶でも得て、ちゃんと一人で立って生きていけるようになったら。
その時は、アレク、おまえの口からレイノルドに伝えて欲しい。
私は、おまえを心から愛していたと。
息子としてではなく、一人の人間としてのレイノルドに、心惹かれていたのだと。
それを伝えて欲しい。
私の想いだけでも、いつまでも彼と共に在ることを願いたい。
だから、頼んだぞアレク。
これからの私が、彼と共に在れることを、どうか祈っていてくれ。
そして最後に、………』
あの頃の――陛下が亡くなったばかりの頃のレインは、本当に酷かった。
同時期に義母をも亡くし、自身の生きている喜びも、生きなければならない義務も、一気に失ってしまったのだ。
まさしく、あの時のレインは、生きるための気力の全てを失っていた。
まだ宰相の職にありながら王宮へ復帰することもせず、ただ屋敷に引き籠った。
そんなレインの姿を見ているのが本当に辛かったが……俺には、どうすることも出来なかった。
自分のもとへもたらされた陛下の遺書を、彼に見せてやれば、その気持ちを伝えてやれば、少しは救いとなるだろうか、とも考えた。
しかし、それでは陛下の遺志に背くことになる。――今のレインは、陛下の気持ちを知ったとしても、到底一人では立ち上がれないだろうから。
自分が陛下の養子であった事実を正式に公表したとしても、おそらく何も変わらない。
よしんば、その立場をかさに着て王太子を失脚させることが叶ったとしても、今のレインは何も喜ばないに違いない。ただ自分の所為で徒に国を乱してしまったと、無駄な傷を心に負ってしまうだけだ。
俺はどうすればいいのかと……何をすればレインの力になってあげられるだろうかと……、
苦悩していた時、新王として立ったばかりの陛下より命令を受けた。
――何としてでもレイノルドを自分の前に連れて来い、と。
『――あの御方は……どうあっても、私を放っておいてくれる気など無さそうだな……』
結果としては、それが最も早道ではあったのだ。
薄々ながら気付いてはいたが、できるならば、その方法をレインに選ばせたくはなかった。
しかし……もうそれしか方法が無かった。
『雉も鳴かずば撃たれまいに―――』
昏く微笑んで呟いたレインの言葉、そこにようやく彼の生きる糧を見出すことが出来たのだ。
――復讐、という名の、それ。
愛する陛下を喪ったことで、生きる意志を失っていたことで、心の奥深くに根差していたはずのその感情すら手放しかけていたのに。
それを向けるべき当人よりもたらされた再三に及ぶ王宮への召喚命令が、それを呼び起こしてしまった。
レインの中に潜む暗く重く澱んだ炎を、再び大きく燃え上がらせてしまった。
――それを止めることなど出来なかった。
それだけが、今のレインを生かしてくれる。
それさえあれば、レインの心が自ら死に向かうことは無い。
どこまでも苦しいばかりでしかないその道を、進んだところで袋小路に突き当たるだけであろうその道を、わかっていながら俺はレインに選ばせてしまった。
だから、俺も腹を決めた。
その道を突き進む彼のことを、何があっても決して止めはしまい、と。
そして、その途上の彼に力の及ぶ限り援助し、決して傷付けることの無いよう全力で護りきることを、自らに誓った。
――その後のことなど……その時にまた考えればいい。
レインは今、カンザリア島に隠棲している。
コルトと、あと確かジークの孫だとかいうヒヨッコ執事が同行して、彼の世話をやいてくれているはずだ。
すべてが終わってから彼は、伯爵位と領地の返還も申し入れていたのだが、それをシャルハが頷くはずもなく。
結局、その伯爵領バーディッツは今、現地にいるジークに管理を任されている。
シャルハは――ひいてはユリサナ帝国は、今回の勝利の功労者たるレイノルド・サイラークに、内々に報奨を授けようとした。
しかし、金も、財宝も、領地も、爵位や名誉に至る提示されるもの全てにおいて、彼は何も要らないと突っ撥ねた。
そんなわけにはいかないと、ユリサナ側の使者が何とか食い下がって、ようやく一つだけ、彼の口から『欲しい』と言わしめたもの。
それが、カンザリアだったのだ。
『カンザリア島を私有地としていただけるのなら、それ以外は何も要らない』
勿論、シャルハがその願いを聞き入れないはずは無かった。
カンザリアは、戦争が終わった後、その要塞としての機能を完全に廃棄されることとなった。
建物の類はそのまま残されているものの、既に駐留していた兵士と共に集められていた兵器類に至るまでの全てが引き揚げられ、近場の砦など軍施設に分配されている。まさに、もぬけの殻、といった有様だ。
カンザリア要塞島は、ようやく今、ただのカンザリア島に戻っていた。
その場所で、一人レインは待っているのだろう。
愛しい男が自分のもとへと帰ってくるのを。
いつでも心が帰る場所――彼らにとって、それはきっとカンザリアなのだ。
ああ気の毒に…と、少しだけ苦笑が洩れる。
レインが待っているその相手は、現在シャルハの嫌がらせに翻弄されている毎日を送っているのだから。
今や庶民の間では有名な『カンザリアの英雄』、またの呼び名を『漆黒の騎士』。――それこそが、トゥーリ・アクスだ。
彼が指揮をとった、カンザリア沖で開かれたユリサナ軍との初戦。援軍も無く、あまりにも数少ない軍艦と不充分な武器だけだったにも関わらず、見事な戦略をもって数で勝るユリサナ艦隊を退けた、その戦いぶりが兵士たちの口から巷間へと伝わり、ちょっとした英雄譚となって、今や彼は大変な人気者となっていた。
あのシャルハが、それを見逃すはずもない。
当然、ユリサナ側で差配していた彼が、いかに意図的な撤退だったとはいえ、それを面白く思わないのには違いなく。
また加えて、その人気ぶりを格好の広告塔として見込まれ、今やアクスは一等騎士の階級まで手に入れてしまった。就けられた役どころは参謀長。――それこそ近衛騎士団の団長・副団長に次ぐ地位である。
一等騎士にまで昇進したのは、平民出身者としては初めての快挙であり、そのことまでもが憶測まじりにあることないこと語り草にされ、その人気も鰻上りとなっている昨今だ。
――それもすべて、シャルハの嫌がらせによる賜物であることは、もはや疑いようもない。
とはいえ、決してそれだけではなく、進んで国王の弑逆に手を染めたこと、それに報いるべき恩賞、という意味も内々に含まれていたことは確かだろう。
しかし、その与えられた過ぎるほどの恩賞による結果として、ある程度まで後始末を手伝ったらとっとと近衛騎士団なぞ辞めてやる、というアクスの思惑は、当然のごとく黙殺される運びとなった。
ユリサナ軍による襲撃の余波により、まだ王宮の警備態勢が万全ではないのが、その最たる理由だ。人手不足の折の人員補充のため、知名度の高いアクスが客寄せとして利用されることは当然であったし、また、王宮詰めの衛兵を統括するのも近衛騎士団の担う役割の一つでもある以上、今や参謀長ともなった彼がそれを一手に引き受けなければならないハメとなることも、まず間違いがなく。
ようするに、その問題を片付けない限り王宮から一歩たりとも離れることは出来ない、という状況に、いま彼は陥っているワケである。
既に提出されている辞表が、未だ受理されないまま俺の執務机の引き出しの中で眠っているのが、何と言うか、本当に心苦しい限りだ。
――そこまで見越して与えた恩賞であったとしたら、やはりシャルハの性格の悪さは尋常でないということになるな。
それに加えて、俺が『カンザリアへレインに会いに行ってくる』などと告げようものなら、どんな恨みを抱かれるものか……考えるだに恐ろしい。
でも、大丈夫だ、おまえなら――おまえたちなら。
きっと迷いもなく、それを言ってあげられる。
アクス、おまえの帰る場所ならば、ちゃんと用意されているのだから、と。
レインが、それを用意して待っていてくれてるぞ、と。
だから安心していい。
おまえは、もうすぐ楽園を手に入れられる。
『――なあ、アレク……』
かつてレインが、問わず語りのごとくに洩らした言葉。
『楽園って、本当にあると思うか……?』
『楽園……?』
『苦しみのない、幸せしかない世界、なんだってさ。――そんな場所、どこにあるんだろう』
長椅子の上で膝を抱える彼の顔には、はっきりと疲労の色が浮かんでいた。
伏せられた瞳が、その長い睫毛の影を白すぎる肌の上に色濃く映す。
『そもそも、幸せって何だろうな……』
『――苦しみのないこと、じゃないのか』
彼の言葉を借りてそう返した俺を、少しだけ目を瞠って見つめて。
再び目を伏せると、抱えた膝の上に顔を突っ伏した。
『生きていること自体が、苦しみでしかないかもしれないのに……?』
『ああ……そうかもしれないな』
頷いて、同意を返す。
『ならば、その苦しみの果てにあるものが、幸せというものなのだろうな』
『これ以上、どこまでも苦しめ、と……?』
『だからこそ、それを乗り越えた先に待っているのが楽園なのだと、人は信じて生きるのではないか』
『そうか……アレクが言うのなら、そうなのかもしれないな……』
レインの零した涙を、俺は見ないふりをした。
『生き続けて、いつかその苦痛の果てに、楽園が見つかればいい……』
『見つかるさ、きっと』
その時の俺たちは、お互いに幼すぎて―――。
ハルトを喪った大きすぎる悲しみを乗り越えるためには、そんなありもしない幻想に縋るしか、行く先を見出せなかったのだろう。
――でもレイン、おまえは見つけたんだろう?
俺がアクスをカンザリアに異動させたのは、多少なりともレインの役に立ってもらえればいい、と考えたからだった。
レインの赴任が決まった際、時期を同じくして自分の息のかかったものをカンザリアに兵士として送り込んでおり、その者から定期的に島での彼の様子を報せてもらっていたのだが……その報告を読むだに、一人で心を閉ざして誰も寄せ付けない、どんどん頑ななまでになってゆく、そんな彼の姿に心が締めつけられるような痛みを感じていたものだった。
何とかしてやりたい、彼の支えとなれるべき信頼できる人間がいれば、とは思っても、おいそれと有能な者をカンザリアへ異動させることなど出来ない。今やカンザリアは左遷先でしかないのだから。
こうなったら無理やりにでも…と、あれこれ手段を画策していた矢先に、それは起こった。
近衛騎士団団長に対する、その小姓に付いた新人騎士による傷害事件―――。
それを知ったと同時、この男なら…と、そこに一縷の希望を見出したのだ。
――この男なら、レインの力になれるかもしれない……!
近衛騎士にまでなれたからには、それなりの実力があることは疑いようも無い。実際、彼の経歴やら入団試験の際の成績まで、遡って調べたが、どれも申し分ないものだった。
そこに加えて、男色を好まず、権力に阿ることのない意志の強さまでをも持っている。
それほどの男なら、不埒な真似に及んでレインを害することもしないだろう。
カンザリア程度の場所に騎士を送り込んだところで、持て余されるのは目に見えていることだ。にもかかわらず新兵扱いにまで待遇を落とせば、使いどころが無くて総督付きにでもさせられるに決まっている。
なれば後は、それを生かすも殺すも、この男の能力次第。
――賭けてみよう、この男に。
そして俺は、大方の反対を押し切るようにして、トゥーリ・アクスのカンザリア要塞島への異動を強行した。
果たして俺のその思惑は、結果としては、極めて良い方向に転んでくれたといえるだろう。
まさか、互いに想いを交わし合うまでの仲になるとは、さすがの俺でも予測は出来なかったのだから―――。
苦しみ抜いて生きた、その果てにある世界。――楽園。
袋小路しかありえなかった進む道の先、それすら乗り越えた先に開けた、新しい世界。
ようやく見つけたそこにはきっと、愛に満ち溢れた永遠の安らぎが待っている。
それこそレイン、おまえが求めていたものだろう?
カンザリアこそ、おまえの見つけた最果ての楽園だ。
『――そして最後に、アレク、おまえにも伝えたい。
私は、ファランドルフ家の人間ならば、誰でもよかったというわけではないよ。
アレク、おまえだからこそ選んだんだ。
その強さ、そして優しさ、弱者を助ける正義感、他者へ与える公平さ、…ああ、多すぎて書ききれないな。
おまえこそ、上に立つ者として相応しい資質を持っている。
おまえが私の息子だったらと、どんなに願っていたかしれない。
最期までそれらしいことは出来なかったが、書類の上だけでも親子の関係となれたことを、とても誇りに思っているよ。
この私の我が儘で、おまえにこれから重い責任を背負わせてしまうことになるのかもしれない。
だが、おまえなら出来ると信じている。
おまえはおまえらしく、自分の信じる道を進めばいい。
そうやっておまえが進む道は、常に正しい。それは保証してやろう。
行く先に幸あれと、心より願っている。
叔父として――そして父親として、君をとても愛しているよ。
それも、忘れないでいてくれ』
さて俺は、また新たな道を進むことになりそうだ。
さしあたって、それをレインにどう報告したらいいのだろうか―――。
そんなことを考えつつ、カンザリア行きの準備をするべく、俺は歩き出していた。
<完>
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