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転職先での始まり。
初出社(午後編)
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「すみません。トイレに行ってきても良いですか?」
午後から雑用を頼まれ書類に目を通しているなか、どうもタイミング悪く尿意が訪れた。
「場所分かる?」
「分からないので、探してみます」
「分からないなら、ついでに亜美ちゃんに社内の案内してもらって♪」
「分かりました。相原さん、行きましょっか」
「ちょっと待ってください! それ、アタシじゃダメなんですか?」
亜美さんの後について行こうとしたところで、華澄は美華さんに申し出た。
「華澄ちゃんは請求書の計算おわってないでしょー。今日は風太くんの歓迎会があるから残業できないんだからねー」
「そ、それなら、亜美ちゃんに代わりにやってもらっておけば...」
「華澄ちゃんはホントに風太くんのこと好きなんだね~。でも、仕事なんだから分別つけなきゃダメだよ?」
仕事中に抜け出して部下に肩揉ませた人がなにか言った...。
「風太に肩揉ませたくせに...」
俺が心の中で思ったことを、華澄はあっさりと本人の前で言ってみせた。
「風太くん、華澄ちゃんに言ったの?」
そして、責められるのは俺。入社した初日から詰められる感じですか?
「相原さんが言わなくても、ウチらは分かりますけどね。相原さんが漏れちゃうから、そろそろウチらは行きますね」
亜美さんが話を切り上げてくれたおかげで、俺は尿意を堪えずに済み、事務所を後にした。
「ウチは美華さんに頼まれただけですから、華澄先輩には相原さんからもちゃんと言っておいてくださいよ」
事務所を出て歩き始めたところで、亜美さんは不満そうにしながら俺に話してきた。
「な、なにを言えばいいんですか?」
「恨むならウチじゃなくて美華さんって。ホントは華澄先輩が案内したかったみたいだし」
「ああ、そういうことですね...」
なんだか、亜美さんに余計な気を遣わせてしまって申し訳ないなあ...。
「トイレはここです。さすがに男子トイレの中は案内できないので、1人で済ませてください」
「わ、分かりました」
トイレを済ませ、案内を再開してもらった。
「相原さんって、本当に華澄先輩と付き合ってないんですか?」
「え? 付き合ってないですけど...」
「そうですか。それなら良かったです」
お、これはもしや「私にも付き合うチャンスがある」的なやつか?
「同じ部署で社内恋愛とか、ウチの立場からしたら何かあった時に面倒ですから」
な、なるほど...そういうことか...。
まあ、そうですよね...気持ちは分かる...。
「華澄とは大学の頃に同じ学科だったけど、単に仲の良い男女の友達ってだけでしたから」
「それは相原さんの意見であって、華澄先輩は必ずしも同じことを思ってるとは限りませんよ」
「もしかして、華澄が何か言ってたんですか?」
「そういうわけじゃないですけど、華澄先輩の相原さんに対する態度を見れば、一目瞭然だと思いますけど。むしろ大学の頃から付き合ったことがないのが意外すぎて」
華澄、別に普通だと思うんだけどなあ...。
「そういう亜美さんは、付き合ってる人いるんですか?」
話を逸らすべく、こちらからも質問をする。
「ウチのこと、名前で呼んだ...」
「あ、ごめんなさい。つい...」
「べつにいいですよ。ウチも風太さんって呼ぶので」
「それでお願いします」
「ウチのこと名前で呼ぶなら、タメ語にしてほしいですけどね」
まだ諦めてないのか...。
「もしかして、敬語イヤですか?」
「イヤというか、私が先に入社したからって年上の人に偉ぶりたくないんです。そんなことで偉そうにするような人間にはなりたくないなって。だから、風太さんは私に気を遣わないで欲しいですし、お互い自然でいられたらなって。そういうわけで、敬語じゃないほうがいいかなって」
この人、俺より年下なのにすごくしっかりした考えの持ち主だな。年上ながら見習わなければ。
「分かり...分かった。俺はこれから敬語を辞めるから、亜美さんも俺のことは敬語じゃなくていいから。俺のこと年上だなんて気にしなくていいから。それが条件かな」
年上なんだから、亜美さんを見習わねば。
「分かった...じゃあ、そうする...」
「よし、それじゃあこれからよろしくね!」
「うん...」
初日から亜美さんとの距離が縮まり、とても有意義な案内となったのであった。
午後から雑用を頼まれ書類に目を通しているなか、どうもタイミング悪く尿意が訪れた。
「場所分かる?」
「分からないので、探してみます」
「分からないなら、ついでに亜美ちゃんに社内の案内してもらって♪」
「分かりました。相原さん、行きましょっか」
「ちょっと待ってください! それ、アタシじゃダメなんですか?」
亜美さんの後について行こうとしたところで、華澄は美華さんに申し出た。
「華澄ちゃんは請求書の計算おわってないでしょー。今日は風太くんの歓迎会があるから残業できないんだからねー」
「そ、それなら、亜美ちゃんに代わりにやってもらっておけば...」
「華澄ちゃんはホントに風太くんのこと好きなんだね~。でも、仕事なんだから分別つけなきゃダメだよ?」
仕事中に抜け出して部下に肩揉ませた人がなにか言った...。
「風太に肩揉ませたくせに...」
俺が心の中で思ったことを、華澄はあっさりと本人の前で言ってみせた。
「風太くん、華澄ちゃんに言ったの?」
そして、責められるのは俺。入社した初日から詰められる感じですか?
「相原さんが言わなくても、ウチらは分かりますけどね。相原さんが漏れちゃうから、そろそろウチらは行きますね」
亜美さんが話を切り上げてくれたおかげで、俺は尿意を堪えずに済み、事務所を後にした。
「ウチは美華さんに頼まれただけですから、華澄先輩には相原さんからもちゃんと言っておいてくださいよ」
事務所を出て歩き始めたところで、亜美さんは不満そうにしながら俺に話してきた。
「な、なにを言えばいいんですか?」
「恨むならウチじゃなくて美華さんって。ホントは華澄先輩が案内したかったみたいだし」
「ああ、そういうことですね...」
なんだか、亜美さんに余計な気を遣わせてしまって申し訳ないなあ...。
「トイレはここです。さすがに男子トイレの中は案内できないので、1人で済ませてください」
「わ、分かりました」
トイレを済ませ、案内を再開してもらった。
「相原さんって、本当に華澄先輩と付き合ってないんですか?」
「え? 付き合ってないですけど...」
「そうですか。それなら良かったです」
お、これはもしや「私にも付き合うチャンスがある」的なやつか?
「同じ部署で社内恋愛とか、ウチの立場からしたら何かあった時に面倒ですから」
な、なるほど...そういうことか...。
まあ、そうですよね...気持ちは分かる...。
「華澄とは大学の頃に同じ学科だったけど、単に仲の良い男女の友達ってだけでしたから」
「それは相原さんの意見であって、華澄先輩は必ずしも同じことを思ってるとは限りませんよ」
「もしかして、華澄が何か言ってたんですか?」
「そういうわけじゃないですけど、華澄先輩の相原さんに対する態度を見れば、一目瞭然だと思いますけど。むしろ大学の頃から付き合ったことがないのが意外すぎて」
華澄、別に普通だと思うんだけどなあ...。
「そういう亜美さんは、付き合ってる人いるんですか?」
話を逸らすべく、こちらからも質問をする。
「ウチのこと、名前で呼んだ...」
「あ、ごめんなさい。つい...」
「べつにいいですよ。ウチも風太さんって呼ぶので」
「それでお願いします」
「ウチのこと名前で呼ぶなら、タメ語にしてほしいですけどね」
まだ諦めてないのか...。
「もしかして、敬語イヤですか?」
「イヤというか、私が先に入社したからって年上の人に偉ぶりたくないんです。そんなことで偉そうにするような人間にはなりたくないなって。だから、風太さんは私に気を遣わないで欲しいですし、お互い自然でいられたらなって。そういうわけで、敬語じゃないほうがいいかなって」
この人、俺より年下なのにすごくしっかりした考えの持ち主だな。年上ながら見習わなければ。
「分かり...分かった。俺はこれから敬語を辞めるから、亜美さんも俺のことは敬語じゃなくていいから。俺のこと年上だなんて気にしなくていいから。それが条件かな」
年上なんだから、亜美さんを見習わねば。
「分かった...じゃあ、そうする...」
「よし、それじゃあこれからよろしくね!」
「うん...」
初日から亜美さんとの距離が縮まり、とても有意義な案内となったのであった。
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