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第一章。
スタンガンショック。
しおりを挟む緩むことのない痛みに、はっはっ、と浅い息を繰り返し肩は揺れる。
その些細な肩の揺れですら、引攣れた両乳首に痛みを与えた。
しかし、こんな痛みに流されっぱなしは、癪だ。
僕は歯を食いしばり、途切れ途切れに言葉を吐き出す。
「ま…魔法……、っ」
「魔法がなんだ?」
「ここに来ればっ…、使えるッ、てっ、…使える、ようにっ、なるって!!」
まくしたてるように伝えると、セスは驚いた表情を浮かべチェーンから指を離し、腰を引いていた魔術師の加重もふっと緩んだ。
「お前…まさか魔法が使えないのか…」
「使えないっ!そこの悪代官にそう言っただろうが!」
魔術師は僕の背中に手の平をあてた。
おそらく紋様と呼ばれるものがあるあたりだ。
「ここに紋様はある…、お前は神子だろう?」
「巫女じゃないし、意味がわかんねえよ、何なんだよお前ら…」
解放された痛みに、肌はじっとりと汗ばんで強張り続けた身体から力が抜けた。
後ろの魔術師に体重を預ける形になった。
「どういうことだ…。おい…」
「これは…ですね!その…!!」
悪代官は脂肪をぷるぷると震わせ、視線を彷徨わせ、しどろもどろに口を動かす。
「お前ら、…下がれ」
魔術師の顔をちらりと覗いてみると、魔術師しかりとしたフードから垣間見える視線は、鋭く悪代官へ向けられていた。
悪代官はというと、顔色は青ざめ、肉に埋もれた醜いイチモツもすっかり萎えきっている。
ざまぁない。
しかし、こんな状況でも衰えを見せないマイサンには、僕自身も驚きを隠せない。
背後の扉が開き、悪代官をはじめとした複数人は部屋を出ていった。
残るのは、美しい僕と、セスと魔術師だ。
お前らの中に、セスは含まれていないらしい。
そして、魔術師とセスのやり取りを見ても、横柄な態度からしてセスよりも魔術師の方が立場が強いのでは…とふと思う。
「魔法が使えないのは…解呪を受けていないからだろう」
「そのようですね」
「俺は解呪と相性が悪い」
「とは言いましても…」
「まぁ…、試してみるか」
会話の内容はよくわからない。
けれど、何かを試すということだけは理解できる。
魔術師の手が、俺の紋様あたりに触れて…
バチッ、と音を上げた。
「ひぅっ!!」
目の前はチカチカと白い火花が散った。
触れられたのは背中なのに、両乳首とマイサンにまで通電したようで、脳天までビリビリと痺れながら身体中の筋肉は引攣れ、背は弓なりに反れる。
再度バチバチっバチッ、と音は上がった。
「あ"…ぁ…っ!!」
全身がガクガクと、小刻みに痙攣している。
口を開いたまま荒い呼吸を繰り返す口元からは、唾液が筋になって首筋にまで垂れた。
どうしてこう…痛いことばかりされているのか。
「やめ…てくれ…」
背後でため息混じりに「だめか」と魔術師は言った。
「随分と大人しくなったな」
「予定通り進めましょうか」
「………なに」
全身が弛緩したようにぐったりとして、じっとりとした汗が浮き出している。
ぐいっと腰を引かれたところで、力は入らない。
されるがまま、だ。
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