完璧なまでの美しい僕は僕であり、あの世界の僕ではなかった。

あしやおでこ。

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第三章。

新たなる…、神子。

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そこはシフォーリア大陸中央部に属するツェペシュ領、街並みは均整がとれていて美しく、首都として交易や観光なども盛んだ。
高い壁門を潜り抜けた先、その正面の奥地に聳え立つのが、ツェペシュ領主であるセス・ツェペシュの古城である。

その古城にあるとある一室に、僕らは派手な音と共になだれ込んでいた。

「いって…」

ふかふかベッドに背を沈めるロイに、僕は馬乗りに覆い被さっていた。
これはよろしくない体勢でしかないじゃないか。

慌てて起き上がろうとするロイが僕を腕の中に閉じ込めていた。
でも、そこに疚しい雰囲気は見当たらない。

「ロイ?」
「よりによって、この部屋か」

僕は視界が届く限り部屋を見渡すと、ああなるほど、と納得した。
僕がこの世界を訪れて散々な目にあったあの部屋のベッドの上だ。

「ははっ、ここが1番インパクトが強かったんじゃないか?」

まだあの事を気にしてるであろうロイに、おどけて伝えてみせた。

「本当に悪かった」

逆効果だったようだ。
ロイにとって最初で最大の後悔を生み出してしまった部屋だ。

「気にするなって言っただろ」
「しかし…」
「もういいんだって」

僕がロイを宥めていると、部屋の扉が勢いよく開け放たれた。

「何事ですか……、はて、神子様に魔術師様…なぜ此方へ?」

物音に駆け付けたセスの登場だ。
相変わらずの執事然りとした容貌だ。

僕はロイの腕から抜け出て、ベッドから下りた。

「お久しぶりです、お邪魔してます」
「セス、悪いな。騒がせた」

そしてツェペシュ領のこの部屋に出現した経緯の説明をし、足早に古城を後にした。

「空から探すぞ。ロイ、飛んだことは?」
「一度だが、問題ない」

ト、トンというリズムで足を踏めば、ふわりと浮遊する。
ロイも同じように浮遊し、器用に飛んでいる。
大して練習もしていないのに、さすがやるなと心の中で褒めておいた。

あらかた見渡せるくらいの高度に差し掛かると、畑の中に立ち尽くす人の姿が目視できた。

「ロイ!いたぞ!」
「少し距離があるな。急ごう」


急いで飛んで行くと、その人物の姿に嫉妬を覚えそうになった。

おそらく事態の収拾がついていないようで、僕らに気付いた様子はあるけれど呆けて眺めている感じだ。
この世界に訪れたばかりの、騎士の隊列と馬車を呆けて眺めていた自身の姿と重なった。

そして僕の感じた嫉妬は、間違いではなかった。
その姿は正しく、イルネージュ10周年大型アップデートで実装される新クラス。

"死霊術師 ネクロマンサー"

それの初期衣装を身に着けていたからだ。
しかし今そんな事を気にしている暇はないのだ、僕は湧き上がる嫉妬心をブラックホールへ放り投げた。

対話だ、ファーストコンタクトはとても大事なんだ。

「やぁ、はじめまして」

少女の前に降り立った僕は、優しい声音で話しかけた。
少女は僕らのことを懐疑的な雰囲気を滲ませて、威喝する猫のように大きな瞳で睨みつけている。

「大丈夫だよ、安心して、ね?」

どうやら少女が睨みつけているのはロイのようだ。
なるほど、確かに怪さ満点なんだ、何せフードからは無愛想な唇しかのぞいていない。
僕はひょいっとロイのローブを摘んでまくった。

「ッッ!!」

無反応なロイの姿が露わになると、少女は息を呑み、可愛らしい顔は湯気でも吹き上げそうなほどに真赤に染まった。
おやおや…これは…、僕は人が恋に落ちる瞬間をまざまざと見せつけられた。

少女の瞳はキラキラと輝いて、うっとりとロイを眺めていた。

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