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第三章。
田中17歳、僕25歳、ロイ……?
しおりを挟む「神託のお告げがございます」
僕とロイが神殿の仮住いとして与えられた部屋に、最高位神官が訪れた。
「信託って」
「新たな神子の出現か?」
「その通りでございます」
新たな神子、ということは、頻繁に召喚の儀式が行われているということか?
「あの、召喚の儀式はどれほどの頻度で行われるのですか?」
「日に3度行っております」
「そんなに!?」
驚きだ…、どう考えても神子の現存数と合わないじゃないか。
僕の疑問を察したロイが口をひらいた。
「召喚が成功すれば神託が告げられる。前に伝えた通り、精度が低い。いつどこに出現するのか曖昧なんだ」
それに、元国王のように秘密裏に囲われてしまえば、探し出すことすら叶わないという話だ。
サールジオ大陸では、そのような素振りは見られなかった。
セスに関しても、神子を匿っているようには見えない。
どういうことだ?
「それで、神子はどのあたりに出現するんだ?」
「ツェペシュ公爵領あたりでございます」
「…遠いな」
そこへタイミングよろしく田中の登場だ。
「神託おりたってー?」
「騒々しいぞ、田中。…出たには出たけど場所がな、遠い…」
「どこだ?」
「僕達が出立してきた場所、ツェペシュ領だ」
田中はニヤニヤと人を小馬鹿にしたような表情を浮かべている。苛々させる顔だ。
「飛べば良いんじゃね?」
「陸を行くよりは早いかもしれないけど…」
「違うって、アキラ!テレポートだよ」
「使えるのか?僕は試してないぞ…」
田中は得意げに続けた。水を得た田中はピッチピチだ。
「ブックマークのシステムは無いんだけどさ、自身に組み込まれてるって言えばいいんかな。イメージで大抵なんとかできる世界じゃん?ここって!」
「できる、のか?」
「一度でも行ったことごあれば出来るぞ?」
何と言うことだ…。
確かに僕よりも早くこの世界に来たのは田中だ。
けれど色々と詳しくないか?
もしや僕が色々と知らなすぎるのか?
「アキラ…いくつだったっけ」
「25だけど?」
「オッサンじゃねーか!」
「失礼なヤツだな、そういうお前は?」
「俺は17だ」
愕然としてしまった。
17歳にあんな卑猥な言葉を突きつけられたのか、僕は!
17歳なのにハーレムとか…、恐ろしい恐ろしいぞ…田中17歳。
「脳ミソの若さの差ってやつか?何でも試してみないと損するぜ?」
「ちくしょう、返す言葉もねーよ!」
「お前…17のガキだったのか…、それでクソ…」
「……どうした…ロイ…?」
田中を射殺さんとばかりなロイの態度は久々に見たぞ。
田中は焦りに焦っている。
「悪かった悪かった!有益な情報に免じてくれよ!な?」
「必死だな、田中。ロイに弱みでも握られてんのか…」
「弱みじゃねーけど、なぁ…?」
「何でもない」
釈然としない空気だけど、テレポートが使えるなら…、それも一度足を踏み入れた場所なら可能なんて最高じゃないか。
「試すが早いな。テレポート可能な人数はあるのか?」
「3人までは試したぜ。あと俺は基本魔物討伐で使うから、サールジオ大陸の端くらいまでの距離しか試したことはない。MPはまあアキラなら問題ないだろ」
「そうか、ありがとう田中。ロイ準備しろ、さっそく行くぞ」
身体が触れていれば一緒にテレポート可能ということで、僕はロイの腰に腕を回した。
「田中、ここを頼んだぞ?行ってくる。よし、ロイ行くぞ?」
「あぁ…。田中ヘマすんなよ」
「おう、行ってこい!」
「またな!テレポート!」
田中は少し嬉しそうに僕らを見送った。
そして僕らの到着したその先は…。
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