【完結/改稿済】転生して妖狐の『嫁』になった話

那菜カナナ

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第1章:ド助平チートと美形妖狐

06.芽吹き(☆)

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「君……」

 妖狐さんの表情が沈んでいく。同情してくれてるのか?

『神め。まったく腹立たしい限りだね』

 そうだ。妖狐さんは怒ってくれた。こんなバカみたいなスキルなのに少しもわらったりしないで。

 優しくて、眩しい人。ああ……そうか。、ハブられてるんだな。煙たがられて、『はみ出し者』なんてレッテルを貼られて。アイツと……御手洗みたらいと一緒だ。

「もう大丈夫ですよ」

「ん?」

「俺がを守りますから」

「君が、私を……?」

 あれ? 何でだろ? 妖狐さん物凄く驚いて――。

「あっ」

 そうか! そうだよな。妖狐さんは神クラスの実力者。助けなんて必要ない。守られるのはむしろ俺の方だろ。現にさっきだって。

「いつぶりだろう? 『守りたい』なんて言ってもらえたのは」

「でしょうね!! 失礼致しました!!!」

「ありがとう。凄く嬉しいよ」

 やんわりとフラれた気分だ。泣きたい。

「邪魔してすみませんでした。続きを――」

「いや、でも……」

 遠慮してる。俺が泣いたりしたから。

「お願いします。もう一度やらせてください。っ、の力になりたいんです」

「…………ごめんね。ありがとう」

 良かった。思いが通じたみたいだ。妖狐さんが顔を近付けてくる。俺は反射的に力を込めた。

「あとでちゃんと自己紹介しようね」

「っ! ぜっ、ぜひ! ――あっ!」

 再開した。力が抜けていく。頭の奥がじ~んと痺れて。来た。あの感覚だ。

「~~っ」

 怖くない。怖くない。大丈夫だ。受け入れろ。

「んっ、あァ……♡ ぁん♡ ~~っ、ぁ……♡♡」

 気持ちいい。声、止まんない。~~っ、もっと吸って。もっと。もっと。

「妖狐、さん……っ」

 気付けば俺は妖狐さんに抱き着いていた。髪に顔を埋める。花の香りがした。それに……汗のにおいも。だけど、全然イヤじゃない。むしろ興奮して。

「あっ♡ 妖狐、さん……♡♡♡」

「ありがとう。もう十分だ」

「あっ♡♡ ………えっ? あっ、はい………………」

 温度差がエグ過ぎる。居た堪れない。………………ってか、今の何!? もっと吸ってだの、嗅ぎたいだの……~~っ、紛うことなき変態じゃねえか!! それも超が付くレベルの!!!

「うぅ゛」

 ようは『妖力供給係』=ってわけか。ははは~っ……喜んでいいのやら、悲しんでいいのやら……。

「えーっと……あれ? 確かここに……。忘れてきちゃったのかな?」

 何だ? 探し物か? そでの中に手を突っ込んでる。ああ、時代劇とかで見たことがあるぞ。着物にはポケットがないから、あそこに物を入れるんだよな。

 俺も今日から着物生活か~。慣れるかな? いや、慣れていくしかないよな。四六時中制服ってわけにもいかないし。

「あった! 何だぁ~、こっちの袖だったか」

 出てきたのは手拭いだった。白地に藍色のドットが入ってる。いや、あれはドットじゃなくて足跡か。模様の付け方は無造作を通り越してかなり雑だ。ペットに悪戯でもされたのかな。ははっ、だとしたらめっちゃ微笑ましい。

「里に戻ったら、お風呂場に案内するね」

「あっ、ありがとうございま――っ!?」

 拭き始めた。俺の唾液塗れの乳首を。その『ほっこりほのぼのな手拭い』で。

「くぉ……っ」

「?」

 妖狐さんはまるで気にしていないみたいだけど、俺的には完全アウトだ。

「いっ、いいです! もう十分ですから!」

「そう? じゃあ……」

 意外にもあっさり引いてくれた。そのことに安堵しつつゆっくりと上体を起こす。忘れることなかれ、ここは木の上。それも高層ビル(20~25階)相当の高さを持つ場所だ。一瞬の油断が命取りになる。気を引き締めていかないと。

「お待たせしました」

 ブレザーも含めてきちっと着込んだ。ボタンは全閉め、ネクタイにも緩みはない。第一印象、大事大事。

「それじゃあ、自己紹介といこうか」

「っ! はっ、はい!」

 唇が波打つ。落ち着け。落ち着け。鼻で息を吸って、静かにその時を待つ。


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