34 / 116
34.木漏れ日
しおりを挟む
「おばあちゃんに挨拶させてもらってもいい?」
壁に沿って置かれた木製のサイドボード。その上には小さな仏壇が置かれていた。
「……悪いな」
その一言に強い引っ掛かりを覚える。なぜだ。分からない。分かりそうでいて掴めなかった。
「……ばあちゃん。ルーが挨拶したいって」
景介に続いて仏壇の前に移動する。ライトブラウンの木製。本尊の周りにだけ金箔が貼られた慎ましいつくりをしている。
置かれている写真立ては二つ。左手には藤色の着物姿の老婆・結子の姿があった。蕩けるような笑み。愛しさを抑え込むのに苦心している。そんな贅沢な悩みすら透けて見えるほどに、写真の中の彼女は多幸感に満ち満ちていた。
「この写真、撮ったのケイでしょ?」
「……何で分かった? 下手くそだからか?」
「幸せそうだから」
木漏れ日のような眼差しはいつどんな時でも景介を照らしていた。おそらくは今も。
景介は何も言わない。ただ黙って俯いている。これ以上は酷か。別の話題を振ることにする。
「前からずっと気になってたんだけどさ、この人はケイのおじさん?」
面長で糸目。茶色のベストがよく似合う温和で人の好さそうな男性だ。年齢は40代後半といったところか。
「白渡一徹さん。俺のじいちゃんだ」
二人は夫婦だったのか。謝罪の言葉を口にしながら改めて写真を見る。
――親子ほども年が離れてしまった二人。
それは結子が一徹の分も懸命に生きた証でもある。おそらくは、父・アーロンも。
「親父が中学の時に胸を悪くして亡くなったらしい」
「じゃあケイも?」
「ああ。会ったことはない」
「……きっと優しい人だったんだろうね」
「ばあちゃんがよく言ってた。親父の性格はまるっとじいちゃん譲りだって」
「そっか」
ろうそくに火を灯す。漂う線香の香り。重く澄んだリンの音。安らぎの中でゆっくりと丁寧に挨拶をしていく。一通り済んだところで景介が切り出した。
「風呂入ってくる。テレビ観るなり、スマホいじるなり好きにしててくれ」
そう言ってリビングを後にする。
「好きに……か……」
一人になったルーカスは改めてリビングを見回した――。
壁に沿って置かれた木製のサイドボード。その上には小さな仏壇が置かれていた。
「……悪いな」
その一言に強い引っ掛かりを覚える。なぜだ。分からない。分かりそうでいて掴めなかった。
「……ばあちゃん。ルーが挨拶したいって」
景介に続いて仏壇の前に移動する。ライトブラウンの木製。本尊の周りにだけ金箔が貼られた慎ましいつくりをしている。
置かれている写真立ては二つ。左手には藤色の着物姿の老婆・結子の姿があった。蕩けるような笑み。愛しさを抑え込むのに苦心している。そんな贅沢な悩みすら透けて見えるほどに、写真の中の彼女は多幸感に満ち満ちていた。
「この写真、撮ったのケイでしょ?」
「……何で分かった? 下手くそだからか?」
「幸せそうだから」
木漏れ日のような眼差しはいつどんな時でも景介を照らしていた。おそらくは今も。
景介は何も言わない。ただ黙って俯いている。これ以上は酷か。別の話題を振ることにする。
「前からずっと気になってたんだけどさ、この人はケイのおじさん?」
面長で糸目。茶色のベストがよく似合う温和で人の好さそうな男性だ。年齢は40代後半といったところか。
「白渡一徹さん。俺のじいちゃんだ」
二人は夫婦だったのか。謝罪の言葉を口にしながら改めて写真を見る。
――親子ほども年が離れてしまった二人。
それは結子が一徹の分も懸命に生きた証でもある。おそらくは、父・アーロンも。
「親父が中学の時に胸を悪くして亡くなったらしい」
「じゃあケイも?」
「ああ。会ったことはない」
「……きっと優しい人だったんだろうね」
「ばあちゃんがよく言ってた。親父の性格はまるっとじいちゃん譲りだって」
「そっか」
ろうそくに火を灯す。漂う線香の香り。重く澄んだリンの音。安らぎの中でゆっくりと丁寧に挨拶をしていく。一通り済んだところで景介が切り出した。
「風呂入ってくる。テレビ観るなり、スマホいじるなり好きにしててくれ」
そう言ってリビングを後にする。
「好きに……か……」
一人になったルーカスは改めてリビングを見回した――。
0
あなたにおすすめの小説
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
BL 男達の性事情
蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。
漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。
漁師の仕事は多岐にわたる。
例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。
陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、
多彩だ。
漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。
漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。
養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。
陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。
漁業の種類と言われる仕事がある。
漁師の仕事だ。
仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。
沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。
日本の漁師の多くがこの形態なのだ。
沖合(近海)漁業という仕事もある。
沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。
遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。
内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。
漁師の働き方は、さまざま。
漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。
出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。
休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。
個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。
漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。
専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。
資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。
漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。
食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。
地域との連携も必要である。
沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。
この物語の主人公は極楽翔太。18歳。
翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。
もう一人の主人公は木下英二。28歳。
地元で料理旅館を経営するオーナー。
翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。
この物語の始まりである。
この物語はフィクションです。
この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。
上司、快楽に沈むまで
赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。
冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。
だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。
入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。
真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。
ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、
篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」
疲労で僅かに緩んだ榊の表情。
その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。
「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」
指先が榊のネクタイを掴む。
引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。
拒むことも、許すこともできないまま、
彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。
言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。
だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。
そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。
「俺、前から思ってたんです。
あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」
支配する側だったはずの男が、
支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。
上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。
秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。
快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。
――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
陰キャな俺、人気者の幼馴染に溺愛されてます。
陽七 葵
BL
主人公である佐倉 晴翔(さくら はると)は、顔がコンプレックスで、何をやらせてもダメダメな高校二年生。前髪で顔を隠し、目立たず平穏な高校ライフを望んでいる。
しかし、そんな晴翔の平穏な生活を脅かすのはこの男。幼馴染の葉山 蓮(はやま れん)。
蓮は、イケメンな上に人当たりも良く、勉強、スポーツ何でも出来る学校一の人気者。蓮と一緒にいれば、自ずと目立つ。
だから、晴翔は学校では極力蓮に近付きたくないのだが、避けているはずの蓮が晴翔にベッタリ構ってくる。
そして、ひょんなことから『恋人のフリ』を始める二人。
そこから物語は始まるのだが——。
実はこの二人、最初から両想いだったのにそれを拗らせまくり。蓮に新たな恋敵も現れ、蓮の執着心は過剰なモノへと変わっていく。
素直になれない主人公と人気者な幼馴染の恋の物語。どうぞお楽しみ下さい♪
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる