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第三章 エルフの里

第九話 精霊のイメージがぁ…

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「では、乾杯!」

「「「「「「「乾杯!」」」」」」」

 木製のコップを掲げると、俺の後に続いて、みんな乾杯をした。

「……お茶だな」

 コップの中に注がれていた飲み物を飲んだ俺は、思わずそう呟いた。俺が今、飲んでいるのは世界樹の葉を煎じて作った薄緑色の冷たい飲み物なのだが、これの味が完全にお茶と同じだった。もうびっくりするぐらい同じだった。お茶の種類で言えば、緑茶だろう。
 この世界に来てから、飲み物は基本水で、たまに果実水を飲むくらいだった。なので、久しぶりにお茶を飲んで、どこか懐かしい気分になった。

「ユートって世界樹水が好きなの?」

 隣に座っているクリスが、お茶――じゃなくて、世界樹水を味わって飲んでいる俺に、そう訊ねた。

「ああ。最近は水ばっかりだったからな。それに、これは凄く美味しい」


「そうだね。じゃあ、ここを出る時に少し貰おう?」

「そうだな。ありがとう」

 俺はそう言いながら、お茶を二杯飲んだ。その後、スープやサイコロステーキに手をつけながら、雑談を楽しんだ。

「あ、そう言えばさ。何で世界樹の魔力が急激に減少したんだ?」

 何万年と生き続けている世界樹が、突然死にかけるようなことが起きた理由を知りたかった俺は、そう訊ねた。

「それはな……恐らく魔王が復活の準備を始めたのだろう」

「復活の準備……ですか?」

 世界樹の急激な魔力の減少と、魔王の復活に、一体何の関連性があるのだろか。

「ああ。魔王というのは、復活の前に大地に流れる魔力を吸収するんだ。そうすることで、弱まった魂を完全に修復する。ただ、世界樹にあれほどの影響が出るまで魔力を取られたことはなかったな」

 トリエストさんからそう聞いた時、俺は次の魔王の強さがどれほどなのか気になった。神様からは少し苦戦する程度と言われたが、トリエストさんにこんなことを言われると、少し不安になる。

「もっとLV上げをしようかな……」

 俺は不安そうに、そう呟いた。

「いや、ユートのあれはヤバすぎる。勇者すらも片手間に潰せる。多分今回の魔王でも絶対に勝てない。というか、そもそもあれ以上LVって上がるのか?」

 俺のステータスを知っているトリエストさんが、そう言った。

「あ、そう言えばトリエストさんは俺のステータスを知ってるんでしたね。というか、何で俺のステータスが全部見えたんですか?」


 俺よりLVが高いとは思えないし、俺のステータスは〈鑑定〉がLV.MAXだったりしても、全てを見ることは出来ない。それなのに、見ることが出来たことに、俺は疑問を抱いた。

「ああ。それは私を〈鑑定〉すれば分かるよ。許可するからやってごらん」

「分かりました。では、〈鑑定〉!」

 許可を貰ったので、俺は〈鑑定〉でトリエストさんのステータスを見た。

 ーーーーーーーーーーーーーーー
 名前 トリエスト・ワーレン ハイエルフ LV.83
 体力 9800/9800
 魔力 22100/22100
 攻撃 7100
 防護 7300
 俊敏性 16100
 スキル
 ・世界眼EX
 ・精霊召喚EX
 魔法
 ・火属性
 ・水属性
 ・風属性
 ーーーーーーーーーーーーーー

「……はい?」

 俺は思わず目を見開いた。

「まあ、そうなるのも無理はない。この二つのスキルは私にしか使うことの出来ないスキルだからな。〈世界眼〉は対象が何であろうと〈鑑定〉をすることが出来るスキルだ。ただ、欠点として、、世界樹の周囲一キロメートル以内にいないと使えない」

「それでも凄いですね」

 世界樹の周辺でしか使えないとはいえ、相手が誰であろうと関係なく〈鑑定〉を使えるのは凄いと思った。

「で、〈精霊召喚〉というのは、世界樹から精霊を生み出すスキルだ。因みに、この里にいるエルフは、元をたどれば、みんな昔に召喚した精霊なんだ」

「え、マジで!?」

 予想外の発言に、俺はは驚愕し、声を上げた。

「ああ。私がどんなスキルなのか、試しに使ってみたんだ。そしたら、世界樹からやけに自己主張の激しい精霊が大量に出てきたんだ」

「自己主張が激しいとは一体……」

「いや何か呼び出して早々私を見て、『私は精霊なのよ。敬いなさい! 木偶の棒が!』とか、『そうだぞ。俺たちは精霊なんだ。お前のようなカスが目の前にいることは罪だからどっか行け!』と言われたな」

「いや、それ……確かに自己主張は激しけど、それ以上に口悪いな……」

 精霊と言えば、もっとお淑やかで、優しい性格をしていると思っていたので、めちゃくちゃショックを受けた。まあ、性格は人(精霊)それぞれだよね……うん。

「だがまあ、何だかんだあって、結構仲良くなったんだ。で、その精霊たちの間で、恋をし、子をなすやつもいたんだ。で、そこから生まれてきたのがエルフってわけだ」

「そうなんですか……因みに精霊はもういないんですか?」

「ああ。精霊の寿命は五千年ほどしかないからな。もういないんだ。そして、また新たに召喚するつもりもない。あんな奴らが現れたらもう色々と疲れる……」

 トリエストさんはそう言うと、ため息をついた。

(てか、何気に”寿命は五千年ほどしかない”って言ってたよな……)

 五千年という長い年月を、短いと思えるトリエストさんに、俺はちょっと尊敬した。そして、いつかそのセリフ言ってみたいと思った。
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