Bon voyage! ~10億円でスキルを買って楽しい異世界移住~

市々ふた枝

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*95 夜のくつろぎタイム *

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「というわけで、アリアンポートの降誕祭パーティーは、レオンズアパートの工事現場を借りて、バーベキューをすることになりました!」
 すっかり寝る準備を済ませた俺は、ベッドの上でくつろぎながら、パーティーのご報告。隣で本を読んでいたエルは、文字を目で追うのをやめて、
「降誕祭にバーベキューってのは、斬新だな」
「みんなも笑ってた。でも、あそこなら会場費はかからないし、移動も楽だし。エルはどうする? ちなみにみんな、君は来るものだと思ってるから、遠慮はいらない」
「そういうことなら、喜んで。クラン関係のあいさつ回りがあるが、午前中に終わらせる。ところでスバル、降誕祭マーケットはどうするんだ? 行く予定はあるのか?」
「え? あ、うん。観光がてら行きたいな~とは思ってるけど、どこに行くかはまだ決めてないんだ。どこか、おすすめのところはある?」
 屋台営業を始めた頃と同じぐらいの時期から、町のあちこちで布告人が、降誕祭マーケットの告知や、降誕祭セールの宣伝をするようになった。雑誌や新聞は、一般庶民が定期購入するにはまだまだお高いので、こういった人の口による宣伝が、まだまだ現役で活躍しているのである。
「このあたりだと、港公園のマーケットだろうな。家族連れも多いって聞くぞ。次がアリアン神殿のマーケットじゃねえか? こっちは食い物が充実してるって話だしな」
 本にしおりを挟んでサイドテーブルに置いたエルは、記憶をたどるように少しだけ首をかしげながら教えてくれた。
アリアンは、豊穣の女神だから、食べ物が充実してるのも納得の話である。
「料理人の信者も多いんだっけ? オリーもアリアンの信者だし」
「そういうことだ。ヴァルディオスのとこは、酒が充実してるし、ヘファーミヤスのところは置物や文房具がいろいろあるって聞いたな」
 ヴァルディオスはお酒の神様だし、ヘファーミヤスは工芸の神様だったはず。生産系の神様を祀る神殿は、司っている物が多く出品されるようだ。
「なるほどねえ。それは、マーケットのはしごもしたくなるわけだ」
「俺としては、ヴァルディオスのとこは行ってみたい。ちょっと東になるが──」
「東? どのあたり?」
 ベッドから降りて、クローゼットに置いてある鞄をごそごそとあさる。こっちに来た時にお世話になりまくった地図を入れっぱなしにしていたからだ。クァンツィーアの観光マップみたいなもので、大体の位置関係を把握するのに便利なのである。
 ベッドに戻って、エルにも見えるように地図を広げ、
「東っていうと……?」
「──この町にある。歩いて一時間くらいだな。馬車ならその半分」
「エルの足で一時間なら、俺だと二時間くらいかかるだろうなぁ」
「なら、馬車で行くか。とりあえず、明日は港公園のマーケットに行くか? 余裕があれば、その足でアリアンの神殿にも行けばいい。ヴァルディオスの神殿は、来週のお楽しみってことにしようぜ。馬車の時間とか調べとく」
「ありがとう。この町から出るのって、何気に初めてかも」
「まあ、町の外に出ていくヤツのほうが少数派だから、そういうヤツは珍しくねえぞ」
 エルも仕事がなければ、町から出ることはほとんどないそうだ。その仕事も、ダンジョン絡みなので、観光をしてから帰るという発想がないらしい。だから、日帰り観光はちょっと楽しみだと笑ってくれた。
 また、アリアンのマーケットにはオルレアとマートルにも声をかけてみることに。エルからそういう提案があったことに意外性を感じていると、彼は弱り顔で、
「俺はスラム出身の親なしだからな。普通の降誕祭ってヤツを経験したことがねえんだよ」
「あ~……まあ、別に気にしなくていいんじゃない? っていう気もするけど、どんな過ごし方があるのか聞いて、参考にさせてもらおっか。それで、俺たちなりの過ごし方を作っていこうよ」
「ああ、そうだな」
「とりあえず、美味しい物は食べたい」
 俺が真顔で言うと「それでこそスバルだ」と笑われてしまった。
「まあ、何でもそうなんだろうけど、お祝い事に料理は欠かせないよな。レイエスだっけ?」
「あぁ、あれな。ニホンは何を食うんだ?」
「クリスマスには、クリスマスケーキとチキンだな。クリスマスっていうのは、降誕祭に似た行事のことで、もとはキリスト教っていう宗教の行事だったんだけど、日本人の間じゃ、単なる楽しむためのイベントになっちゃってるから」
「あぁ、なんかマートルが驚いたって言ってたな。降誕祭よりも、年末年始のほうが大事なんだって?」
「日本人的にはそうだね。お正月と違って、クリスマスが日本の家庭に浸透したのって、ここ百年くらいのことだし」
 積み重ねてきた年月が違うので、そこはしょうがない。
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