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*96 年末年始は忙しい *
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12月は、とても忙しくてあっという間に過ぎていった。
オルレアと一緒にレイエスを作ったり、それを神殿に寄付しに行ったり。屋台営業をしながら、降誕祭パーティーのための下ごしらえをしたり、料理を作ったり。マッキーさんからは、クリスマスケーキやおせちのリクエストも受けたので、自分の分や店のみんなの分もまとめて作った。週末には、降誕祭マーケットでデート。オルレアとマートルとも一緒に行って、パーティー用のプレゼントなんかも買った。
降誕祭ムードを盛り上げるため、屋台にも小さなナティヴィニーヨを飾り、降誕祭カラーのロールチキンをメニューに出してみた。
「あら、降誕祭カラーで素敵ね」
「ありがとう。ロールチキンっていって、鶏肉で野菜を巻いてあるんだ」
「美味しそうね。いただくわ」
すっかり常連さんになった、郵便局にお勤めのお姉さんこと、マリタさん。最近、注文する皿の数が一つ増えた。ありがたいことである。
「ここはハズレがないから、食べたことがなくても気にせずに注文できるのよね」
「ありがとうございます」
「シュオ! どんぶり飯くれ~」
それから、黒ヒョウさんことクルスさんもうちの常連さんになってくれた。彼は必ずどんぶり飯を注文し、その時々で追加注文をしてくれる。マリタさんともすっかり顔なじみだ。
「アイツ、分かりやすすぎない?」
こそっと俺に耳打ちをしてくるアリス。その視線の先には、マリタさんと楽しそうに話をするクルスさん。うん。彼は絶対にマリタさんに気があるよな。バレバレだ。
「恋っていうのは、片思いと付き合い始めた頃が最高だって話を聞いたことがあるよ」
「それ、なんか分かる」
俺の返事に大きくうなずくアリス。馬に蹴られたくないので、見守るだけにしよう。
常連さんたちは、マリタさん、クルスさんだけじゃない。探索者見習いたちの子はもちろん、タリーの台所時代からの常連さんたちも時々顔を出してくれる。
アリアンポートの屋台は好評で、このペースで行けば売り上げ予算達成間違いなしだ。ありがたい話である。気持ち程度の額ではあるが、ボーナスも出そうじゃないか。
なんて考えているうちに、あっという間に降誕祭の当日である。
子供たちはもちろん、大人までそわそわしているようで、町全体が浮き足立っているようだ。こんなに変わるもんなのかと、俺は呆れるやら感心するやら。
屋台の営業が終わったら、アリスとボブを子供たちのお迎えに送り出し、俺たち独身、子なし組は、バーベキューの準備に取り掛かった。
「ずいぶん、張り切ったんだな、スバル」
「我ながらちょっと引く。自覚してなかったけど、俺も結構浮かれてたみたい」
テーブルに並べた、下ごしらえをした肉や魚介に野菜の数々。それに加えて、おつまみやフィンガーフードなどが、ビュッフェでもやるのか、っていうくらいに並んでいる。
オルレアもいろいろと作ってくれたので、余りそうな気がしてならない。
「まあ、キミの〈収納〉に入れておけば、余ったとしても腐らせることはないからね」
「お恥ずかしい……」
「マッキーとか、チャールズさんが差し入れを持ってくるって言ってなかったか?」
「……ソーダッタネ……」
俺の目が泳ぐ。
オルレアとマートルの何やってんだ、っていう視線が痛い。
実際、マッキーさんは明石焼きっていうタコ焼きに似た料理を作ってくれたし、チャールズさんは、ナイトバッファローの肉を差し入れしてくれた。高級品一歩手前、くらいの品らしく、塩コショウだけで十分美味かった。子供たちも大絶賛の一品である。
マッキーさんの明石焼きも美味かった。出汁につけて食べるとは、なんか新鮮。子供たちは、マッキーさん指導のもと、明石焼きを焼かせてもらって、キャッキャと大はしゃぎ。
ミカは大人用にワイン、子供たち用にジュースを差し入れてくれた。エルが持ってきてくれたのは、ハバリーナというボウリングみたいなおもちゃだ。大人も一緒になって、大いに盛り上がった。
バーベキューの後は、プレゼントを配り、食べきれなかったものは、タッパーもどきに詰められるものを詰めて、お持ち帰り。生の食材は、俺の〈収納〉行きである。
そのあと、順番に温泉に入って解散だ。順番待ちの間は、焚き火を眺めながら、のんびり。
「そこのお前たち! そこで焚火をするのはいいが、ちゃんと火の始末をしろよ~!」
「は~い! 見回り、お疲れ様です!」
敷地の外から声をかけてきたのは、巡回中の騎士か警邏隊員だと思われる。騎士と警ら隊員の違いは、領主様に直接雇用されているか、そうでないか。役割も警ら隊は、公共の場の治安維持。騎士は犯罪の取り締まりと魔物被害の防止、という違いがある。
オルレアと一緒にレイエスを作ったり、それを神殿に寄付しに行ったり。屋台営業をしながら、降誕祭パーティーのための下ごしらえをしたり、料理を作ったり。マッキーさんからは、クリスマスケーキやおせちのリクエストも受けたので、自分の分や店のみんなの分もまとめて作った。週末には、降誕祭マーケットでデート。オルレアとマートルとも一緒に行って、パーティー用のプレゼントなんかも買った。
降誕祭ムードを盛り上げるため、屋台にも小さなナティヴィニーヨを飾り、降誕祭カラーのロールチキンをメニューに出してみた。
「あら、降誕祭カラーで素敵ね」
「ありがとう。ロールチキンっていって、鶏肉で野菜を巻いてあるんだ」
「美味しそうね。いただくわ」
すっかり常連さんになった、郵便局にお勤めのお姉さんこと、マリタさん。最近、注文する皿の数が一つ増えた。ありがたいことである。
「ここはハズレがないから、食べたことがなくても気にせずに注文できるのよね」
「ありがとうございます」
「シュオ! どんぶり飯くれ~」
それから、黒ヒョウさんことクルスさんもうちの常連さんになってくれた。彼は必ずどんぶり飯を注文し、その時々で追加注文をしてくれる。マリタさんともすっかり顔なじみだ。
「アイツ、分かりやすすぎない?」
こそっと俺に耳打ちをしてくるアリス。その視線の先には、マリタさんと楽しそうに話をするクルスさん。うん。彼は絶対にマリタさんに気があるよな。バレバレだ。
「恋っていうのは、片思いと付き合い始めた頃が最高だって話を聞いたことがあるよ」
「それ、なんか分かる」
俺の返事に大きくうなずくアリス。馬に蹴られたくないので、見守るだけにしよう。
常連さんたちは、マリタさん、クルスさんだけじゃない。探索者見習いたちの子はもちろん、タリーの台所時代からの常連さんたちも時々顔を出してくれる。
アリアンポートの屋台は好評で、このペースで行けば売り上げ予算達成間違いなしだ。ありがたい話である。気持ち程度の額ではあるが、ボーナスも出そうじゃないか。
なんて考えているうちに、あっという間に降誕祭の当日である。
子供たちはもちろん、大人までそわそわしているようで、町全体が浮き足立っているようだ。こんなに変わるもんなのかと、俺は呆れるやら感心するやら。
屋台の営業が終わったら、アリスとボブを子供たちのお迎えに送り出し、俺たち独身、子なし組は、バーベキューの準備に取り掛かった。
「ずいぶん、張り切ったんだな、スバル」
「我ながらちょっと引く。自覚してなかったけど、俺も結構浮かれてたみたい」
テーブルに並べた、下ごしらえをした肉や魚介に野菜の数々。それに加えて、おつまみやフィンガーフードなどが、ビュッフェでもやるのか、っていうくらいに並んでいる。
オルレアもいろいろと作ってくれたので、余りそうな気がしてならない。
「まあ、キミの〈収納〉に入れておけば、余ったとしても腐らせることはないからね」
「お恥ずかしい……」
「マッキーとか、チャールズさんが差し入れを持ってくるって言ってなかったか?」
「……ソーダッタネ……」
俺の目が泳ぐ。
オルレアとマートルの何やってんだ、っていう視線が痛い。
実際、マッキーさんは明石焼きっていうタコ焼きに似た料理を作ってくれたし、チャールズさんは、ナイトバッファローの肉を差し入れしてくれた。高級品一歩手前、くらいの品らしく、塩コショウだけで十分美味かった。子供たちも大絶賛の一品である。
マッキーさんの明石焼きも美味かった。出汁につけて食べるとは、なんか新鮮。子供たちは、マッキーさん指導のもと、明石焼きを焼かせてもらって、キャッキャと大はしゃぎ。
ミカは大人用にワイン、子供たち用にジュースを差し入れてくれた。エルが持ってきてくれたのは、ハバリーナというボウリングみたいなおもちゃだ。大人も一緒になって、大いに盛り上がった。
バーベキューの後は、プレゼントを配り、食べきれなかったものは、タッパーもどきに詰められるものを詰めて、お持ち帰り。生の食材は、俺の〈収納〉行きである。
そのあと、順番に温泉に入って解散だ。順番待ちの間は、焚き火を眺めながら、のんびり。
「そこのお前たち! そこで焚火をするのはいいが、ちゃんと火の始末をしろよ~!」
「は~い! 見回り、お疲れ様です!」
敷地の外から声をかけてきたのは、巡回中の騎士か警邏隊員だと思われる。騎士と警ら隊員の違いは、領主様に直接雇用されているか、そうでないか。役割も警ら隊は、公共の場の治安維持。騎士は犯罪の取り締まりと魔物被害の防止、という違いがある。
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