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「女」
「は?」
出勤早々、アヤに捕まった。
「やっぱり、女でしょう」
「何のことですか」
「とうとう春が来たんですねぇ」
「……」
最近、アヤは何かと僕に食ってかかる。今まで、ほとんど無視していたのに、こうやって僕に話しかけ、同僚たちの注意を引く。
「何を根拠に……」
「あ、やっぱ怪しい。犯人ほど証拠を求めるんですよ?」
くすくすという笑い声が耳障りだった。
「最近ご無沙汰だったんじゃないですか?」
「セクハラですよ」
「女が男にセクハラ? 笑わせないでよ」
アヤについて、「もしかすると」と思うところはある。
彼女は恋人と上手く行っていないのかもしれない。だから、僕でストレスを発散しているのだろうか。
少し前から、恋人とのデートを周りに聞こえるように同僚に話すようになった。「愛されている」とか「お互い通じ合っている」とか。
「仲の良いアピール」は、破局の予兆なんていう話も聞く。上手く行っていないから、取り繕うために、そんな行動に出る。「自分たちは大丈夫ですよ」と必死になる。
僕と別れるときも、そうだったのだろうか。
「どんな子なんです?」
「仕事しませんか?」
「仕事なんて、下の階の人たちに任せて置けばいいじゃない」
さすがに、今の発言は不味いように思えた。さっと周囲を見ると、何人かの同僚は顔をしかめていた。
天国の人にも、地獄の友人はいる。
「あなたが期待するようなものは何もないですよ……」
業務開始ぎりぎりに、主任が出勤してきた。「朝礼するぞー」という言葉に救われたのは初めてかもしれない。いつもなら、胃に重たいものを入れられたような気分になる。
アヤを無視して、自分の席へと着く。朝礼は「みなさんおはようございます。今日もがんばりましょう」の十秒足らずで終わった。
「は?」
出勤早々、アヤに捕まった。
「やっぱり、女でしょう」
「何のことですか」
「とうとう春が来たんですねぇ」
「……」
最近、アヤは何かと僕に食ってかかる。今まで、ほとんど無視していたのに、こうやって僕に話しかけ、同僚たちの注意を引く。
「何を根拠に……」
「あ、やっぱ怪しい。犯人ほど証拠を求めるんですよ?」
くすくすという笑い声が耳障りだった。
「最近ご無沙汰だったんじゃないですか?」
「セクハラですよ」
「女が男にセクハラ? 笑わせないでよ」
アヤについて、「もしかすると」と思うところはある。
彼女は恋人と上手く行っていないのかもしれない。だから、僕でストレスを発散しているのだろうか。
少し前から、恋人とのデートを周りに聞こえるように同僚に話すようになった。「愛されている」とか「お互い通じ合っている」とか。
「仲の良いアピール」は、破局の予兆なんていう話も聞く。上手く行っていないから、取り繕うために、そんな行動に出る。「自分たちは大丈夫ですよ」と必死になる。
僕と別れるときも、そうだったのだろうか。
「どんな子なんです?」
「仕事しませんか?」
「仕事なんて、下の階の人たちに任せて置けばいいじゃない」
さすがに、今の発言は不味いように思えた。さっと周囲を見ると、何人かの同僚は顔をしかめていた。
天国の人にも、地獄の友人はいる。
「あなたが期待するようなものは何もないですよ……」
業務開始ぎりぎりに、主任が出勤してきた。「朝礼するぞー」という言葉に救われたのは初めてかもしれない。いつもなら、胃に重たいものを入れられたような気分になる。
アヤを無視して、自分の席へと着く。朝礼は「みなさんおはようございます。今日もがんばりましょう」の十秒足らずで終わった。
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