僕は妹に、この世で一番穢れたものを吐き出した。

えすけ

文字の大きさ
12 / 21

12

しおりを挟む
 サキのトマト煮は少し塩気が強かったが、美味しかった。

「思ったより、カットトマトってしょっぱいんだね」
「使う量半分くらいで良かったかもな」

 買ってきたケーキを食べながら、テレビを見る。つけていた番組は当たり障りのない恋愛ドラマで、少し退屈だが話しながら見るにはちょうど良かった。
 両方ともショートケーキにしたが、それで良かったかサキに確認をする。

「私はガトーショコラが好き」
「じゃあ、今度はそれで」
「ショートケーキも好きだけど」
「うん」
「兄さ……あんたは?」

 何故、言い直した。指摘すると怒る気がしたので、気づいていないふりをする。

「僕はケーキなら何でも。強いていうなら生クリームが多いやつが好きだ」
「へー……子供みたい」
「失礼だな」

 抑揚のない単調な会話だが、不思議と楽しさを感じた。
 兄妹なのに、お互いの好みすら知らない。冷めた関係だった。
 テレビの俳優と女優がキスをする。サキが言うには、その女優には一部熱狂的というか狂信的なファンがいることで有名で、「今頃ネットは荒れてるわ」とぼやいた。
 何気なくサキの顔を見ると、同じタイミングで彼女もこちらを見た。顔を見合わせて、笑い合って、キスをした。次第にキスは深くなり、サキをソファに倒す。
 シャツを脱がし、乳房の先にキスをする。パンツを下ろし、ショーツを脱がすと、恥部が当たる部分に染みがあった。すでに湿っているらしい。
 僕も服を脱ぐ。サキの上に覆い被さり、優しく唇を重ねる。頭を撫でると、彼女は目を細めた。

「兄さんって……」
「その呼び方くすぐったい」
「……やめる?」
「いや……好きだよ」

 言って、自分の顔が赤くなるのを感じる。ごまかすために、先を促す。

「で、何?」
「私のこと避けてたのって、お母さんたちのセックス見たからでしょ?」

 ザリッと砂を噛むような不快感を覚える。どうして、このタイミングでそれを言うのだろう。
 それに、知っていたのか。

「お父さんから聞いた」

 僕は今どんな顔をしているだろう。中学生のころ書いた詩を朗読される気分というのはこういうものかもしれない。

「あのね、私がここに来た理由。お母さんのセックスを見たからなんだ」
「いい年して……」

 しかめっ面の中に苦笑いがあった。なぜだか、以前あった嫌悪感はなく、微笑ましさを覚えた。サキと身体を重ね、言葉のない和解をしたからかもしれない。

「まあ、大人の男女なんだし、そういうこともあるだろう。仲がいいってことだ」
「……」

 だが、サキの表情を見て、自分の想像しているものが見当違いのものであることを知る。

「誰としていたんだ、あの女」

 サキは顔をくしゃっとさせた。彼女が泣き出すときの顔。今も変わらない。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

今更気付いてももう遅い。

ユウキ
恋愛
ある晴れた日、卒業の季節に集まる面々は、一様に暗く。 今更真相に気付いても、後悔してももう遅い。何もかも、取り戻せないのです。

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

幼馴染

ざっく
恋愛
私にはすごくよくできた幼馴染がいる。格好良くて優しくて。だけど、彼らはもう一人の幼馴染の女の子に夢中なのだ。私だって、もう彼らの世話をさせられるのはうんざりした。

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

ある辺境伯の後悔

だましだまし
恋愛
妻セディナを愛する辺境伯ルブラン・レイナーラ。 父親似だが目元が妻によく似た長女と 目元は自分譲りだが母親似の長男。 愛する妻と妻の容姿を受け継いだ可愛い子供たちに囲まれ彼は誰よりも幸せだと思っていた。 愛しい妻が次女を産んで亡くなるまでは…。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

隣人の幼馴染にご飯を作るのは今日で終わり

鳥花風星
恋愛
高校二年生のひよりは、隣の家に住む幼馴染の高校三年生の蒼に片思いをしていた。蒼の両親が海外出張でいないため、ひよりは蒼のために毎日ご飯を作りに来ている。 でも、蒼とひよりにはもう一人、みさ姉という大学生の幼馴染がいた。蒼が好きなのはみさ姉だと思い、身を引くためにひよりはもうご飯を作りにこないと伝えるが……。

結婚したけど夫の不倫が発覚して兄に相談した。相手は親友で2児の母に慰謝料を請求した。

佐藤 美奈
恋愛
伯爵令嬢のアメリアは幼馴染のジェームズと結婚して公爵夫人になった。 結婚して半年が経過したよく晴れたある日、アメリアはジェームズとのすれ違いの生活に悩んでいた。そんな時、机の脇に置き忘れたような手紙を発見して中身を確かめた。 アメリアは手紙を読んで衝撃を受けた。夫のジェームズは不倫をしていた。しかも相手はアメリアの親しい友人のエリー。彼女は既婚者で2児の母でもある。ジェームズの不倫相手は他にもいました。 アメリアは信頼する兄のニコラスの元を訪ね相談して意見を求めた。

処理中です...