8 / 102
フラマリオン編
006.『彷徨い歩く』2
しおりを挟む
リビエラは憔悴して座り込んでいた。彼が虚ろな目をちらと横にやるとそこにはリビエラ以上に憔悴しきっている二人の若い女がいた。エレノアとレティシアである。オーガと思しき怪物が現れてから約一日。三人はフラマリオンの外壁までやって来ていた。しかし水分も食事も摂らずに慌てて走って逃げた彼らの体力は限界を迎えていた。二人に比べるとまだ余裕のあるリビエラが二人に向けて言った。
「もうすぐ街外れだ。頑張れ」
しかしエレノアはかぶりを振って否定的な言葉を返した。
「もう無理」
一方のレティシアは声を発することさえできそうになかった。リビエラは迷った。このまま二人を無理にでも歩かせるか。それとも少し休ませるか。虚ろな目をした横顔を心持ち上げたエレノアがぽつりと言った。
「ルナちゃんは、みんなは無事かな」
リビエラはその疑問について考えてみた。二人ともオーガが現れた広場の近辺にいたはずだ。無事であってほしいがそんな保証はどこにもない。彼はエレノアを励ますための気休めの一言を探したがそんな安い言葉を言えば言うほど自分を含めた誰もが虚しくなる気がしてやめた。あの怪物は一体何だ。こんなことがどうして起こる。あれは人間への戒めだろうか。伝承に聞くオーガであることは明白であろう。人類を淘汰するために現れたのだろうか。だとしたらあれは俺たちを追ってくるかもしれないし、再びあれに会えば生き残れる保証はない。リビエラは迷った末に重い口を開いた。
「行こう」
「どこへ行くのよ」
レティシアが間髪入れずに尋ねた。彼女の声音には苛立ちと咎め立てるような響きがあった。その苛立ちは怪物に向けられるべきであってレティシアを守ろうとしている自分に向けられるのは理不尽だという怒りを感じつつリビエラは答えた。
「安全なところさ」
彼の答えは彼女の苛立ちをさらに募らせたようだった。
「だからどこよ?」
リビエラは自分だけでも平静であろうとしたが難しかった。
「できるだけ遠くだよ。あのバカでかいオーガからできるだけ遠く」
レティシアの追撃は続いた。
「街の外に出るの? 出てどこで寝るの? 何を食べるの?」
三人はすでに街の外壁の目の前まで来ていた。これ以上オーガと思しき怪物から距離を取るなら街を出るしかない。
「ここにいたっていつ殺されるかわからないだろ?」
「あいつがあたしたちを殺すとは限らないでしょ?」
今度こそリビエラの怒りは限界を迎えた。
「オーガが人を生かすわけねえだろ!」
レティシアの言葉は体力のない彼女がこれ以上歩かずに済むための詭弁であることは明白だった。彼女はそれをなおも言い続けた。
「あいつがオーガだってどうして言い切れるの?」
それを聞いたリビエラはいよいよ呆れ果てた。話にならない。仮にあれがオーガでないとして、それが何の解決になる。しかしここでエレノアがリビエラに助け舟を出した。
「あれはオーガよ。見た目も伝承の通りだもん」
歴史学に詳しいエレノアがそう言ってもレティシアはこれ以上歩かずに済むための希望的観測を述べ続けた。
「オーガが人を殺すとは限らないでしょ?」
呆れ果てて言葉もないリビエラに代わりエレノアが答えた。
「オーガは人を殺す存在よ。現にあいつのせいで…」
広場の近辺にいた他の人たちの姿が脳裏をよぎりエレノアはそれ以上口に出せなかった。なおもレティシアの抵抗は続いた。
「外に出たって野盗やルクレティウス兵に出くわすかも知れないじゃない」
これにはリビエラが反論した。
「野盗に出くわすのはたしかに危険だけど、さすがにルクレティウス兵が民間人に手を出すことはないだろ」
そう話しているうちにも門を出て街の外へ出て行く人の姿が彼らの視界の中を横切っていた。
「だったらしばらくここで待とう」
それはエレノアの折衷案だった。
「しばらく待って、それでオーガがこちらに向かって来ている兆候が見られなければ留まる。少しでもオーガが追って来ている兆しが見えたら街の外に逃げる」
その折衷案でさえリビエラには受け入れがたかった。
「いやそんなの待ってたら間に合わねえだろ! オーガがうっすら見えたらもう助からねえかもしれねえんだぞ」
リビエラはレティシアに目をやった。もう反論の気力も残っていないのか、彼女は虚ろな視線をどこか地面の一点に投げて口さえ開こうとしなかった。
「とにかく少し休もう」
エレノアが機転を利かせてそう言った。たしかにこれ以上の議論はエネルギーと時間を浪費するばかりか、三人の統率を損なう危険性を孕んでいるようにリビエラにも思えた。それにレティシアに今必要なのは正論ではなく休息に違いなかった。リビエラもそれには反論しないことにした。
彼らはそれからしばらく壁に寄りかかって地面に座って休んだ。体力のないレティシアは先日見た絶望的な光景に対するショックも相まってか相変わらず虚ろな目で地面を見ていた。普段から元気なエレノアは疲れてこそいたが、レティシアとは対照的に次の移動のために体力の回復に努めているように見えた。リビエラはそんな二人に気を配りながらも多くの時間を自分たちが逃げて来た方角、つまりオーガが現れた街の中心部を注視することに充てた。あれほどの巨体のオーガがこちらに迫って来ていたら遠くからでもその兆候が視認できるはずだ。今はそれが表れないことを祈りながらレティシアの心身の回復を待つ。彼らにできるのはそれだけだった。
結局レティシアの体力と憔悴具合を考慮してその日は近くの民家を訪ね、泊めてもらう交渉をすることになった。最初の三軒はすでに住人が出払ってしまっていたため、交渉することさえできなかった。おそらくオーガの噂を聞き付け街の外に逃げたのであろう。
「もうここに泊まっちゃう?」とエレノアが三軒目が留守だとわかったときに二人に聞いた。家主が留守ならそれもやむを得ないような気もしたが「もう少し探そう」とリビエラは言った。レティシアは二人について歩くばかりでもう声さえ発しなかった。もう少し探して何も見つかれなければリビエラは家主のいない家に忍びこんで泊まる判断をすることにした。レティシアに水分と食事を摂らせないともう逃げるどころではなさそうだった。四軒目には住人がいたが、馬小屋か納屋になら泊めることが可能だと言われた。レティシアの疲れの具合を考えると馬小屋や納屋で夜を明かすことは難しそうだった。リビエラは丁寧に礼を言ってその家を辞した。結局泊まる家が見つかったのは五軒目だった。そこのご老人はオーガ出現の噂を聞きつけたものの街の外へ逃げてもそれはそれで生き残れないとの判断から街に留まることに決めたとのことだった。建物はレンガで造られていて丈夫そうだったが、怪物の脅威をもってすれば木造もレンガ造りも大して違いはなさそうだなとリビエラは思った。それでも雨風をしのげることは何よりありがたかった。さらに主人は三人に寝床と水と食事を与えてくれた。三人ともよく礼を言ってその好意に甘えた。レティシアは水を飲むと元気を取り戻した。元気とともに彼女は感情を取り戻した。彼女は子どものように泣いた。エレノアはレティシアの肩を抱いて慰めた。彼女の心を支配していた恐怖と絶望の重さを知ってリビエラは先刻の強い物の言い方をひどく反省した。
その晩リビエラは一睡もできなかった。さすがに疲れたのかレティシアは赤ん坊のようにぐっすり眠っていた。エレノアが眠っているのかどうかはよくわからなかった。朝がくれば何もかも元通りになって元の日常が戻ってくるんじゃないか、そんな根拠のない期待が暗がりの中でぼんやりと目を開くリビエラの脳裏に浮かんで消えた。
翌日もオーガが壁の方に来る様子はなかった。
「もうオーガはどこかへ行ったんじゃない?」とエレノアは言ったが、さすがに街の中央にある寮に戻ろうと言い出す者はいなかった。街の外に逃げ出した人々が門から街に帰って来る様子も見られるようになった。もしかしたら街の別の方にオーガは向かったのかもしれないとリビエラは思った。その日も三人はその家に泊まらせてもらうことにした。
翌日もオーガが再び姿を現すことはなかった。自警団の兵士を見かけた三人は天恵とばかりに彼のもとに駆け寄って声を掛けた。彼によると中央の広場付近は大きく破壊されたものの、今はオーガもおらず安全とのことだった。では一体オーガはどこへ行ったのだろうかとリビエラは考えたが、それを聞いても兵士はわからないと答えるだけだった。その晩も念のため三人はその家に泊めさせてもらった。主人は快く受け入れてくれたが、その家の備蓄食料も尽き始め、市場も機能していないらしく、さすがにリビエラたちの心は痛んだ。
その翌日には街はいつもの平穏を取り戻していた。市場も再開されたらしく、三人が身を寄せた地域の人々はいつも通りの生活を営んでいた。それを見てさすがに三人も自分たちも安全なんだと思うようになった。三人は中央へ戻ってみることにした。泊めていただいた宿の主人に厚く礼を言い、三人は中央の学生寮を目指して歩き始めた。
それは三人が街の東門の前を通りがかったときのことだった。
「あれ何?」とレティシアが言った。彼女は先日よりはるかに生気を取り戻した目で門の方を見ていた。
「何が?」とリビエラが尋ねた。レティシアは答えずに目を細めて門の方を注視していた。リビエラはレティシアの見ている方を見たが、それはただの門であり、彼女が何を気にしているのかわからなかった。エレノアもレティシアの様子を気にしていた。リビエラはじれったくなって「何見てんの?」と再びレティシアに聞いた。
「あれ…」
レティシアは指を差した。しかしやはり彼女が指す方には門があるばかりだった。
「門がどうしたの?」とエレノアが聞いた。
「門の向こう」とレティシアが呟いた。それを聞いて二人も門の向こうを見た。それは一見するといつも通りの景色に思えたが、エレノアはそこにたしかに何か一抹の違和感を覚えた。目を凝らした彼女が最初に視認したのは鈍色の光だった。そこににわかに怖気を覚えた彼女は「騎兵だ!」と低く鋭い声で言った。リビエラが目を凝らすとそこにはたしかに騎兵の姿があった。それも一人二人ではなく、かなりの人数であるようだった。三人は恐ろしくなって後ずさりした。それは明らかに平生の光景ではなかった。
「どこの軍だ…?」とリビエラが呟くと「いや、あんたそれ専門でしょ!?」とエレノアが咎めた。リビエラが観察を続けると、彼らの鎧の形状は彼らがルクレティウス軍だということを示していた。
「ルクレティウスだ!」
「なんで!?」とエレノアが聞いた。フラマリオンはアーケルシア領ということになっているが、中立を保っている以上ルクレティウスが攻めて来ることはないはずだ。リビエラは「わかんない…」と答えるほかなかった。
しかし門の外のルクレティウス兵たちはたしかに重武装をしていた。外交目的でこの国を訪れたわけではなさそうだ。
「逃げよう!」とリビエラが言った。エレノアも唖然として立ち尽くすレティシアの手を引いて走り出した。リビエラもどこか身を寄せる場所がないか探した。手近な建物と建物の間に身を隠せそうな頃合の細道が見えた。そちらへ向かって走るエレノアにリビエラも続いた。
後ろを振り向くとすでにルクレティウス軍はフラマリオンの門に辿り着いていた。門には守衛がおり、彼らはルクレティウス軍の代表と思しき人物と何か話をしていた。おそらく守衛は中立国であるフラマリオンにルクレティウス軍がどういった用件で訪れたのか問い質しているのだろう。ルクレティウス軍を率いている男は兜をかぶっておらず、鋭い目と縮れた髪を露にし、政治的な笑みを浮かべていた。フラマリオンの門には平時には守衛が多く駐在し、それ以前に物見櫓の兵が平原の様子を監視しているはずであるが、その機能が損なわれてルクレティウス軍が接近できてしまったのはおそらくオーガが現れてその対策に多くのフラマリオン自警団の人員が割かれているからだろう。そういえば自警団のトップのリヒトは無事だろうか、リビエラはそんなことを考えながら建物の隙間に走り込んだ。そこに身を潜めた彼が次に門の方を見ると交渉にあたっていたフラマリオンの守衛がルクレティウスの代表に殴られて地に伏せる姿が見えた。リビエラは先日のオーガとは異質の恐怖を感じ、全身の肌を粟立たせた。エレノアとレティシアも慄然としていた。彼らの目的はやはり政治的交渉ではなく侵略なのだと三人は理解した。
それからルクレティウス軍は次々と街に侵入した。軍の総数は門越しにはわからなかったが実に夥しい数だった。彼らは速やかに街に展開した。彼らの一部はリビエラたちが潜む建物の影にも近づいて来た。フラマリオンの住人たちはそれに怯え慄然としつつも、抵抗の意志がない一般市民であることをただ黙って佇立したり、諸手を挙げたりすることで示していた。三人のように物陰に隠れたり、後ずさりしたり、家に逃げ込んだりする者も多かった。ルクレティウスの代表と思しき男が声高らかに言った。先ほど守衛を殴った男だ。
「俺はルクレティウス六中騎士ゲレーロ。先日この街にオーガが現れたと聞く!」
市民たちはその言葉に黙然と耳を傾け、固唾を飲んだ。
「我々はフラマリオンの安全の確保とオーガの調査のためにルクレティウスよりやって来た!」
それを聞いた市民たちは一様に歓迎ムードに包まれた。彼らは笑顔を見せ、喝采し、ルクレティウス軍に歓迎の意思を示した。しかしリビエラと一部の市民はルクレティウス軍の意図を正しく理解していた。リビエラは呟いた。
「違う…。それはただの名目だ…」
ゲレーロと名乗った代表の口上は続いた。
「貴殿らフラマリオン市民の安全は我々が保証する! 我々の指示に従い安全確保に努められよ!」
拍手は先ほどより大きくなった。
その人垣を押し退けて恰幅の良い男がルクレティウス軍の代表の前に堂々とした立ち振る舞いで近づいた。彼はあらためて代表に進軍の意図を問い質すつもりのようだった。
「それはフラマリオンの要請によるものでしょうか?」
ゲレーロは笑って答えた。
「人助けに要請は要らない」
すると周りのルクレティウス兵たちはへらへらと笑った。男は間髪入れずに言い返した。
「そなたらの格好は人助けや調査をしに来たように見えない」
ゲレーロは相変わらず薄笑いを浮かべていた。
「武装なしではオーガに太刀打ちできない」
周りの兵たちは先ほどよりさらに露骨に笑った。男は詰問を続けた。
「さっきはフラマリオンの安全確保に来たと言いましたよね? 最優先すべきはそれでは?」
それを聞いたゲレーロは腰の剣を抜いて事も無げに男の胸を刺し貫いた。
「もうすぐ街外れだ。頑張れ」
しかしエレノアはかぶりを振って否定的な言葉を返した。
「もう無理」
一方のレティシアは声を発することさえできそうになかった。リビエラは迷った。このまま二人を無理にでも歩かせるか。それとも少し休ませるか。虚ろな目をした横顔を心持ち上げたエレノアがぽつりと言った。
「ルナちゃんは、みんなは無事かな」
リビエラはその疑問について考えてみた。二人ともオーガが現れた広場の近辺にいたはずだ。無事であってほしいがそんな保証はどこにもない。彼はエレノアを励ますための気休めの一言を探したがそんな安い言葉を言えば言うほど自分を含めた誰もが虚しくなる気がしてやめた。あの怪物は一体何だ。こんなことがどうして起こる。あれは人間への戒めだろうか。伝承に聞くオーガであることは明白であろう。人類を淘汰するために現れたのだろうか。だとしたらあれは俺たちを追ってくるかもしれないし、再びあれに会えば生き残れる保証はない。リビエラは迷った末に重い口を開いた。
「行こう」
「どこへ行くのよ」
レティシアが間髪入れずに尋ねた。彼女の声音には苛立ちと咎め立てるような響きがあった。その苛立ちは怪物に向けられるべきであってレティシアを守ろうとしている自分に向けられるのは理不尽だという怒りを感じつつリビエラは答えた。
「安全なところさ」
彼の答えは彼女の苛立ちをさらに募らせたようだった。
「だからどこよ?」
リビエラは自分だけでも平静であろうとしたが難しかった。
「できるだけ遠くだよ。あのバカでかいオーガからできるだけ遠く」
レティシアの追撃は続いた。
「街の外に出るの? 出てどこで寝るの? 何を食べるの?」
三人はすでに街の外壁の目の前まで来ていた。これ以上オーガと思しき怪物から距離を取るなら街を出るしかない。
「ここにいたっていつ殺されるかわからないだろ?」
「あいつがあたしたちを殺すとは限らないでしょ?」
今度こそリビエラの怒りは限界を迎えた。
「オーガが人を生かすわけねえだろ!」
レティシアの言葉は体力のない彼女がこれ以上歩かずに済むための詭弁であることは明白だった。彼女はそれをなおも言い続けた。
「あいつがオーガだってどうして言い切れるの?」
それを聞いたリビエラはいよいよ呆れ果てた。話にならない。仮にあれがオーガでないとして、それが何の解決になる。しかしここでエレノアがリビエラに助け舟を出した。
「あれはオーガよ。見た目も伝承の通りだもん」
歴史学に詳しいエレノアがそう言ってもレティシアはこれ以上歩かずに済むための希望的観測を述べ続けた。
「オーガが人を殺すとは限らないでしょ?」
呆れ果てて言葉もないリビエラに代わりエレノアが答えた。
「オーガは人を殺す存在よ。現にあいつのせいで…」
広場の近辺にいた他の人たちの姿が脳裏をよぎりエレノアはそれ以上口に出せなかった。なおもレティシアの抵抗は続いた。
「外に出たって野盗やルクレティウス兵に出くわすかも知れないじゃない」
これにはリビエラが反論した。
「野盗に出くわすのはたしかに危険だけど、さすがにルクレティウス兵が民間人に手を出すことはないだろ」
そう話しているうちにも門を出て街の外へ出て行く人の姿が彼らの視界の中を横切っていた。
「だったらしばらくここで待とう」
それはエレノアの折衷案だった。
「しばらく待って、それでオーガがこちらに向かって来ている兆候が見られなければ留まる。少しでもオーガが追って来ている兆しが見えたら街の外に逃げる」
その折衷案でさえリビエラには受け入れがたかった。
「いやそんなの待ってたら間に合わねえだろ! オーガがうっすら見えたらもう助からねえかもしれねえんだぞ」
リビエラはレティシアに目をやった。もう反論の気力も残っていないのか、彼女は虚ろな視線をどこか地面の一点に投げて口さえ開こうとしなかった。
「とにかく少し休もう」
エレノアが機転を利かせてそう言った。たしかにこれ以上の議論はエネルギーと時間を浪費するばかりか、三人の統率を損なう危険性を孕んでいるようにリビエラにも思えた。それにレティシアに今必要なのは正論ではなく休息に違いなかった。リビエラもそれには反論しないことにした。
彼らはそれからしばらく壁に寄りかかって地面に座って休んだ。体力のないレティシアは先日見た絶望的な光景に対するショックも相まってか相変わらず虚ろな目で地面を見ていた。普段から元気なエレノアは疲れてこそいたが、レティシアとは対照的に次の移動のために体力の回復に努めているように見えた。リビエラはそんな二人に気を配りながらも多くの時間を自分たちが逃げて来た方角、つまりオーガが現れた街の中心部を注視することに充てた。あれほどの巨体のオーガがこちらに迫って来ていたら遠くからでもその兆候が視認できるはずだ。今はそれが表れないことを祈りながらレティシアの心身の回復を待つ。彼らにできるのはそれだけだった。
結局レティシアの体力と憔悴具合を考慮してその日は近くの民家を訪ね、泊めてもらう交渉をすることになった。最初の三軒はすでに住人が出払ってしまっていたため、交渉することさえできなかった。おそらくオーガの噂を聞き付け街の外に逃げたのであろう。
「もうここに泊まっちゃう?」とエレノアが三軒目が留守だとわかったときに二人に聞いた。家主が留守ならそれもやむを得ないような気もしたが「もう少し探そう」とリビエラは言った。レティシアは二人について歩くばかりでもう声さえ発しなかった。もう少し探して何も見つかれなければリビエラは家主のいない家に忍びこんで泊まる判断をすることにした。レティシアに水分と食事を摂らせないともう逃げるどころではなさそうだった。四軒目には住人がいたが、馬小屋か納屋になら泊めることが可能だと言われた。レティシアの疲れの具合を考えると馬小屋や納屋で夜を明かすことは難しそうだった。リビエラは丁寧に礼を言ってその家を辞した。結局泊まる家が見つかったのは五軒目だった。そこのご老人はオーガ出現の噂を聞きつけたものの街の外へ逃げてもそれはそれで生き残れないとの判断から街に留まることに決めたとのことだった。建物はレンガで造られていて丈夫そうだったが、怪物の脅威をもってすれば木造もレンガ造りも大して違いはなさそうだなとリビエラは思った。それでも雨風をしのげることは何よりありがたかった。さらに主人は三人に寝床と水と食事を与えてくれた。三人ともよく礼を言ってその好意に甘えた。レティシアは水を飲むと元気を取り戻した。元気とともに彼女は感情を取り戻した。彼女は子どものように泣いた。エレノアはレティシアの肩を抱いて慰めた。彼女の心を支配していた恐怖と絶望の重さを知ってリビエラは先刻の強い物の言い方をひどく反省した。
その晩リビエラは一睡もできなかった。さすがに疲れたのかレティシアは赤ん坊のようにぐっすり眠っていた。エレノアが眠っているのかどうかはよくわからなかった。朝がくれば何もかも元通りになって元の日常が戻ってくるんじゃないか、そんな根拠のない期待が暗がりの中でぼんやりと目を開くリビエラの脳裏に浮かんで消えた。
翌日もオーガが壁の方に来る様子はなかった。
「もうオーガはどこかへ行ったんじゃない?」とエレノアは言ったが、さすがに街の中央にある寮に戻ろうと言い出す者はいなかった。街の外に逃げ出した人々が門から街に帰って来る様子も見られるようになった。もしかしたら街の別の方にオーガは向かったのかもしれないとリビエラは思った。その日も三人はその家に泊まらせてもらうことにした。
翌日もオーガが再び姿を現すことはなかった。自警団の兵士を見かけた三人は天恵とばかりに彼のもとに駆け寄って声を掛けた。彼によると中央の広場付近は大きく破壊されたものの、今はオーガもおらず安全とのことだった。では一体オーガはどこへ行ったのだろうかとリビエラは考えたが、それを聞いても兵士はわからないと答えるだけだった。その晩も念のため三人はその家に泊めさせてもらった。主人は快く受け入れてくれたが、その家の備蓄食料も尽き始め、市場も機能していないらしく、さすがにリビエラたちの心は痛んだ。
その翌日には街はいつもの平穏を取り戻していた。市場も再開されたらしく、三人が身を寄せた地域の人々はいつも通りの生活を営んでいた。それを見てさすがに三人も自分たちも安全なんだと思うようになった。三人は中央へ戻ってみることにした。泊めていただいた宿の主人に厚く礼を言い、三人は中央の学生寮を目指して歩き始めた。
それは三人が街の東門の前を通りがかったときのことだった。
「あれ何?」とレティシアが言った。彼女は先日よりはるかに生気を取り戻した目で門の方を見ていた。
「何が?」とリビエラが尋ねた。レティシアは答えずに目を細めて門の方を注視していた。リビエラはレティシアの見ている方を見たが、それはただの門であり、彼女が何を気にしているのかわからなかった。エレノアもレティシアの様子を気にしていた。リビエラはじれったくなって「何見てんの?」と再びレティシアに聞いた。
「あれ…」
レティシアは指を差した。しかしやはり彼女が指す方には門があるばかりだった。
「門がどうしたの?」とエレノアが聞いた。
「門の向こう」とレティシアが呟いた。それを聞いて二人も門の向こうを見た。それは一見するといつも通りの景色に思えたが、エレノアはそこにたしかに何か一抹の違和感を覚えた。目を凝らした彼女が最初に視認したのは鈍色の光だった。そこににわかに怖気を覚えた彼女は「騎兵だ!」と低く鋭い声で言った。リビエラが目を凝らすとそこにはたしかに騎兵の姿があった。それも一人二人ではなく、かなりの人数であるようだった。三人は恐ろしくなって後ずさりした。それは明らかに平生の光景ではなかった。
「どこの軍だ…?」とリビエラが呟くと「いや、あんたそれ専門でしょ!?」とエレノアが咎めた。リビエラが観察を続けると、彼らの鎧の形状は彼らがルクレティウス軍だということを示していた。
「ルクレティウスだ!」
「なんで!?」とエレノアが聞いた。フラマリオンはアーケルシア領ということになっているが、中立を保っている以上ルクレティウスが攻めて来ることはないはずだ。リビエラは「わかんない…」と答えるほかなかった。
しかし門の外のルクレティウス兵たちはたしかに重武装をしていた。外交目的でこの国を訪れたわけではなさそうだ。
「逃げよう!」とリビエラが言った。エレノアも唖然として立ち尽くすレティシアの手を引いて走り出した。リビエラもどこか身を寄せる場所がないか探した。手近な建物と建物の間に身を隠せそうな頃合の細道が見えた。そちらへ向かって走るエレノアにリビエラも続いた。
後ろを振り向くとすでにルクレティウス軍はフラマリオンの門に辿り着いていた。門には守衛がおり、彼らはルクレティウス軍の代表と思しき人物と何か話をしていた。おそらく守衛は中立国であるフラマリオンにルクレティウス軍がどういった用件で訪れたのか問い質しているのだろう。ルクレティウス軍を率いている男は兜をかぶっておらず、鋭い目と縮れた髪を露にし、政治的な笑みを浮かべていた。フラマリオンの門には平時には守衛が多く駐在し、それ以前に物見櫓の兵が平原の様子を監視しているはずであるが、その機能が損なわれてルクレティウス軍が接近できてしまったのはおそらくオーガが現れてその対策に多くのフラマリオン自警団の人員が割かれているからだろう。そういえば自警団のトップのリヒトは無事だろうか、リビエラはそんなことを考えながら建物の隙間に走り込んだ。そこに身を潜めた彼が次に門の方を見ると交渉にあたっていたフラマリオンの守衛がルクレティウスの代表に殴られて地に伏せる姿が見えた。リビエラは先日のオーガとは異質の恐怖を感じ、全身の肌を粟立たせた。エレノアとレティシアも慄然としていた。彼らの目的はやはり政治的交渉ではなく侵略なのだと三人は理解した。
それからルクレティウス軍は次々と街に侵入した。軍の総数は門越しにはわからなかったが実に夥しい数だった。彼らは速やかに街に展開した。彼らの一部はリビエラたちが潜む建物の影にも近づいて来た。フラマリオンの住人たちはそれに怯え慄然としつつも、抵抗の意志がない一般市民であることをただ黙って佇立したり、諸手を挙げたりすることで示していた。三人のように物陰に隠れたり、後ずさりしたり、家に逃げ込んだりする者も多かった。ルクレティウスの代表と思しき男が声高らかに言った。先ほど守衛を殴った男だ。
「俺はルクレティウス六中騎士ゲレーロ。先日この街にオーガが現れたと聞く!」
市民たちはその言葉に黙然と耳を傾け、固唾を飲んだ。
「我々はフラマリオンの安全の確保とオーガの調査のためにルクレティウスよりやって来た!」
それを聞いた市民たちは一様に歓迎ムードに包まれた。彼らは笑顔を見せ、喝采し、ルクレティウス軍に歓迎の意思を示した。しかしリビエラと一部の市民はルクレティウス軍の意図を正しく理解していた。リビエラは呟いた。
「違う…。それはただの名目だ…」
ゲレーロと名乗った代表の口上は続いた。
「貴殿らフラマリオン市民の安全は我々が保証する! 我々の指示に従い安全確保に努められよ!」
拍手は先ほどより大きくなった。
その人垣を押し退けて恰幅の良い男がルクレティウス軍の代表の前に堂々とした立ち振る舞いで近づいた。彼はあらためて代表に進軍の意図を問い質すつもりのようだった。
「それはフラマリオンの要請によるものでしょうか?」
ゲレーロは笑って答えた。
「人助けに要請は要らない」
すると周りのルクレティウス兵たちはへらへらと笑った。男は間髪入れずに言い返した。
「そなたらの格好は人助けや調査をしに来たように見えない」
ゲレーロは相変わらず薄笑いを浮かべていた。
「武装なしではオーガに太刀打ちできない」
周りの兵たちは先ほどよりさらに露骨に笑った。男は詰問を続けた。
「さっきはフラマリオンの安全確保に来たと言いましたよね? 最優先すべきはそれでは?」
それを聞いたゲレーロは腰の剣を抜いて事も無げに男の胸を刺し貫いた。
0
あなたにおすすめの小説
チート魔力はお金のために使うもの~守銭奴転移を果たした俺にはチートな仲間が集まるらしい~
桜桃-サクランボ-
ファンタジー
金さえあれば人生はどうにでもなる――そう信じている二十八歳の守銭奴、鏡谷知里。
交通事故で意識が朦朧とする中、目を覚ますと見知らぬ異世界で、目の前には見たことがないドラゴン。
そして、なぜか“チート魔力持ち”になっていた。
その莫大な魔力は、もともと自分が持っていた付与魔力に、封印されていた冒険者の魔力が重なってしまった結果らしい。
だが、それが不幸の始まりだった。
世界を恐怖で支配する集団――「世界を束ねる管理者」。
彼らに目をつけられてしまった知里は、巻き込まれたくないのに狙われる羽目になってしまう。
さらに、人を疑うことを知らない純粋すぎる二人と行動を共にすることになり、望んでもいないのに“冒険者”として動くことになってしまった。
金を稼ごうとすれば邪魔が入り、巻き込まれたくないのに事件に引きずられる。
面倒ごとから逃げたい守銭奴と、世界の頂点に立つ管理者。
本来交わらないはずの二つが、過去の冒険者の残した魔力によってぶつかり合う、異世界ファンタジー。
※小説家になろう・カクヨムでも更新中
※表紙:あニキさん
※ ※がタイトルにある話に挿絵アリ
※月、水、金、更新予定!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
勇者召喚に巻き込まれ、異世界転移・貰えたスキルも鑑定だけ・・・・だけど、何かあるはず!
よっしぃ
ファンタジー
9月11日、12日、ファンタジー部門2位達成中です!
僕はもうすぐ25歳になる常山 順平 24歳。
つねやま じゅんぺいと読む。
何処にでもいる普通のサラリーマン。
仕事帰りの電車で、吊革に捕まりうつらうつらしていると・・・・
突然気分が悪くなり、倒れそうになる。
周りを見ると、周りの人々もどんどん倒れている。明らかな異常事態。
何が起こったか分からないまま、気を失う。
気が付けば電車ではなく、どこかの建物。
周りにも人が倒れている。
僕と同じようなリーマンから、数人の女子高生や男子学生、仕事帰りの若い女性や、定年近いおっさんとか。
気が付けば誰かがしゃべってる。
どうやらよくある勇者召喚とやらが行われ、たまたま僕は異世界転移に巻き込まれたようだ。
そして・・・・帰るには、魔王を倒してもらう必要がある・・・・と。
想定外の人数がやって来たらしく、渡すギフト・・・・スキルらしいけど、それも数が限られていて、勇者として召喚した人以外、つまり巻き込まれて転移したその他大勢は、1人1つのギフト?スキルを。あとは支度金と装備一式を渡されるらしい。
どうしても無理な人は、戻ってきたら面倒を見ると。
一方的だが、日本に戻るには、勇者が魔王を倒すしかなく、それを待つのもよし、自ら勇者に協力するもよし・・・・
ですが、ここで問題が。
スキルやギフトにはそれぞれランク、格、強さがバラバラで・・・・
より良いスキルは早い者勝ち。
我も我もと群がる人々。
そんな中突き飛ばされて倒れる1人の女性が。
僕はその女性を助け・・・同じように突き飛ばされ、またもや気を失う。
気が付けば2人だけになっていて・・・・
スキルも2つしか残っていない。
一つは鑑定。
もう一つは家事全般。
両方とも微妙だ・・・・
彼女の名は才村 友郁
さいむら ゆか。 23歳。
今年社会人になりたて。
取り残された2人が、すったもんだで生き残り、最終的には成り上がるお話。
昨今の聖女は魔法なんか使わないと言うけれど
睦月はむ
恋愛
剣と魔法の国オルランディア王国。坂下莉愛は知らぬ間に神薙として転移し、一方的にその使命を知らされた。
そこは東西南北4つの大陸からなる世界。各大陸には一人ずつ聖女がいるものの、リアが降りた東大陸だけは諸事情あって聖女がおらず、代わりに神薙がいた。
予期せぬ転移にショックを受けるリア。神薙はその職務上の理由から一妻多夫を認められており、王国は大々的にリアの夫を募集する。しかし一人だけ選ぶつもりのリアと、多くの夫を持たせたい王との思惑は初めからすれ違っていた。
リアが真実の愛を見つける異世界恋愛ファンタジー。
基本まったり時々シリアスな超長編です。複数のパースペクティブで書いています。
気に入って頂けましたら、お気に入り登録etc.で応援を頂けますと幸いです。
連載中のサイトは下記4か所です
・note(メンバー限定先読み他)
・アルファポリス
・カクヨム
・小説家になろう
※最新の更新情報などは下記のサイトで発信しています。
https://note.com/mutsukihamu
※表紙などで使われている画像は、特に記載がない場合PixAIにて作成しています
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
【本編完結済み/後日譚連載中】巻き込まれた事なかれ主義のパシリくんは争いを避けて生きていく ~生産系加護で今度こそ楽しく生きるのさ~
みやま たつむ
ファンタジー
【本編完結しました(812話)/後日譚を書くために連載中にしています。ご承知おきください】
事故死したところを別の世界に連れてかれた陽キャグループと、巻き込まれて事故死した事なかれ主義の静人。
神様から強力な加護をもらって魔物をちぎっては投げ~、ちぎっては投げ~―――なんて事をせずに、勢いで作ってしまったホムンクルスにお店を開かせて面倒な事を押し付けて自由に生きる事にした。
作った魔道具はどんな使われ方をしているのか知らないまま「のんびり気ままに好きなように生きるんだ」と魔物なんてほっといて好き勝手生きていきたい静人の物語。
「まあ、そんな平穏な生活は転移した時点で無理じゃけどな」と最高神は思うのだが―――。
※「小説家になろう」と「カクヨム」で同時掲載しております。
【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~
石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。
ありがとうございます
主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。
転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。
ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。
『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。
ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする
「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる