Beauty and Beast

高端麻羽

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Beauty and Beast ・復活・

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アルフィーネは両手をガイヤルドにかざし、『還元』の呪文を唱えた。
その目から再び涙があふれて来る。
(ガイヤルド……ごめんなさい)
伝え尽くせなかった想いを、魔法の淡い光と共に注ぐ。
(私が貴方を人間に戻してあげたかった……ううん、魔物の姿のままでもいいから、生きていて欲しかった……)
ガイヤルドの身体の輪郭がぼやけ、サラサラと砂の像が崩れるように、小山のような体が消えてゆく。
そして………
「……!?」
魔物の体内に閉じ込められていたかのように、崩れた身体の中から別の身体が現れた。
アルフィーネのみならず、その場にいる一同が驚きの瞳で注視する。
それは人間の男。長身に黒い髪、バランスよく筋肉のついた逞しい体躯。精悍な顔。
驚愕し、瞠目しているアルフィーネの目前で、男の瞳がゆっくりと開いた。
瞬間、アルフィーネと視線が合う。
「………アルフィーネ…?」
低い、だけどよく通る、聞き覚えの無い声。
しかしアルフィーネには、はっきりと確信できた。
「…ガイヤルド…っ!!」
滂沱の涙を流しながら呼びかけるアルフィーネに、ガイヤルドはまだどこか夢現のような表情で、優しく笑いかける。
「……ずっと、お前の事を考えていた。生きて…もう一度お前に会いたい…と……」
そう言った自分の声と、視点の位置とでガイヤルドは、ようやく自身の姿を自覚した。
「……!」
ゆっくりと体を起こし、自分の両手を見つめ、続いてアルフィーネを見る。
「アルフィーネ…」
目の前にいるのは、会いたくて生きる希望となった美しい女。
「オレは人間か?人間に見えるか?」
己の目だけでは信じられず、ガイヤルドは茫然と問いかける。
「…貴方は、人間よ」
アルフィーネの肯定に、ガイヤルドは呪詛の解除法を脳裏に思い浮かべた。

───姿変化の術の解除には、術者に勝る意志の力を必要とする。被術者を最も深く想う者の意志で解除されるはず。
ならばアルフィーネは、呪術師よりも深く自分を想ってくれたのだ。
そして一度、死んだ為に呪詛から解放される事ができたのだろう。

好きだと言ってくれたアルフィーネが、ガイヤルドにかけられた恐ろしい呪詛を解いてくれたのだ。
愛する者に愛され、そして命を落とした為にガイヤルドは人間の姿に戻った。

「お帰りなさい、ガイヤルド…」
涙に濡れ、それでもアルフィーネは美しい微笑を浮かべる。
ガイヤルドは手を伸ばし、アルフィーネの頬に触れた。
まるで存在を確認するかのように。
彼の手に自分の手を重ね、アルフィーネはガイヤルドに縋り付く。
そのまま二人は固く抱きしめ合う。
もう、二度と離れないとばかりに。

「死んだ魔物が人間になって生き返るなんて……」
ソロは呆然と二人を見つめ、独り言のように呟く。
「『奇跡』ってやつか?」
その言葉に、ロンド王は微笑みながら返答した。
「違うな。愛の成せる『必然』だ」


続く
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