ヴァンパイア・ハンター

高端麻羽

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ヴァンパイア・ハンター ~第四夜~

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初対面の印象は決して良くは無かった二人だが、共に暮らせば相手の内面も見えて来る。

アンバーが高慢なだけの世間知らずではない事はすぐにわかった。
態度や立ち居振る舞いに相応の高い教養と知性を持っており、高貴な出身であろう事をアズライトは確信する。
それがなぜ、従者も付けず たった一人で旅をしているのかはまるで見当がつかないが。
アズライトにとって、実に興味深い異邦人だった。

アズライトは医者という聖職の割には口が悪く、時に下品な冗談を飛ばしてアンバーをからかったが、根底には確かに優しさが在った。
何より、住民の誰もが彼を慕っている。それは彼が村に唯一の医者だからという理由ではなく、純粋に人柄だろう。
ちょっと姿が見えないと思えば、庭先で近所の子供たちと遊んでいたりする。
そんな様子を目にするたび、アンバーの心は暖かくなった。

「オレは孤児で、ガキの頃この村に流れついたところを先代の神父さんに拾われたんだよ」
ある時、他愛の無い会話がどう流れたのか、アズライトの過去話が始まってしまった。
「その時、前後して拾われたのがコイツで、兄弟みたいに育ったんだ。……10年前、病気で死んじまったけどな」
そう言ってアズライトは写真の少年を指差す。一見、平然と話してはいたが、彼の瞳はいつかと同様、沈んだ色に変わっていた。
聞きながら、アンバーは写真の少年に関する自分の推測がほぼ当たっていた事を再確認する。
「治らねえ病気じゃなかったんだけど、その時この村には医者がいなくてな。山向こうの町のヤブ医者は貧乏村に来るのを渋って、結局、手遅れになっちまった」
「……だから、君は医者になったのか?」
「まあな。先代の神父は教会の跡を継いで欲しかったらしいけど、オレは神を信じてないから、神父にはなれないさ」
途端にアンバーは目を丸くする。この地域、いや国自体、同一の信仰が浸透しているというのに。
「…信じていないのか?教会育ちなのに」
「だって、神はアイツを助けてくれなかったんだぞ」
「…………」
まるで子供のような理由に、アンバーは再び目を丸くする。
しかし、それはとても純粋かつストレートな主張だ。
「あきれた男だな。それでよく神父代行できたものだ」
「だからオレは医者なんだ。本当は、この村だけじゃなく、もっと多くの町や村で貧しい子供を無償で治してやるのが夢なんだ。───そう言うお前は敬虔な信者なのか?」
「そうとも言えるし、違うとも言える」
「……? 何だ?それは」
常に物をはっきり言うアンバーらしからぬ言い方に、アズライトは不思議そうに問い返す。
アンバーはしばし迷った後、返答した。
「───私も、君と似た理由で神への不信を抱いた。でも、我が一族が神の御許で安らかなる眠りを得ん事を願い、日々祈りを捧げているからな」
「!」
アズライトは驚きに目を見開く。
一瞬、沈黙が流れたが、アンバーはアズライトが問うより先に言葉を続ける。
「私の一族───ユルトラ族は4年前、私一人を残して滅亡したのだ」
「…………」
人が死んだり殺されたりは珍しくない世の中とはいえ、一族滅亡とは尋常ではない。
しばし言葉を失ったアズライトが思い当たったのは一つだけ。
「……魔物か?」
「ああ」
「…………」
「言っておくが、同情は必要ない」
アンバーの気丈な瞳には、悲哀も絶望も乗り越えた強さがある。
アズライトは理解した。
ロドンを救えなかった夜、ともすれば辛辣なアンバーの言葉に安っぽい慰めよりも救いを感じたのは、同じ痛みを経験していたからなのだと。
「同情なんかしないよ。オレだって、こう見えても苦労人なんだからな」
あえて軽妙な口調で、大げさに胸を張りながらアズライトは言う。
重くなりかけた空気が払拭されて、アンバーの表情も緩んだ。
「苦労人の割には、軽薄だけどな」
「明るく健気に生きてんだよ♪」
「自分で言うな」
視線をかわすと、自然に笑みがこぼれる。
二人は次第に心を開き、信頼の度を深めていった。
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