支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

文字の大きさ
1 / 102
悪役転生

しおりを挟む

「いたぞ。そっちだ」

「追え。逃がすなっ!!」
 
 タレブの騎士団の声と足音が聞こえる。
 いやああああああああああああああ。こっち来ないで!!誰か助けて!!
 そう思いながら、必死で走り続ける。

「はあ、はあ、はあ……」

 ぼたぼたと垂れてくる汗を拭う。早くどこかに隠れないと……。捕まったら、奴隷にされるだろう。植民地アームに送られるかもしれない。もしくは、殺されるかも……。ギロチンとかにかけられたら、どうしよう。
 酒樽を飛び越え、狭い裏路地に入り込む。

「うわあっ」

 ぶつかりそうになった中年男性の通行人を押しよけ、障害物を縫うように進んでいく。けれども、彼らはまだついてくる。
 ちっ。
 このままじゃつかまってしまう。
 近くにある木箱を台にして、塀を飛び越えて目の前にある家に不法侵入する。

「きゃああああああああああっ!!!!侵入者よ!!!!」

 飛び越えた先には、茶髪の女がいて箒の先を僕に向けてきた。
 降りかぶってきた箒を掴んで放り投げ、そのまま庭を抜けて入口から違う路地に行き、そのまま更に走り続ける。


 ここは、ロタン東部のタレブという都市である。ジキルは、そこでタレブの騎士団と逃亡を繰り広げている。

 なぜかというと、美少年を誘拐して逃亡犯として指名手配されているからだ。彼を隠して1人で買い物をしているときに、見つかってしまって命がけの鬼ごっこが始まった。

 誤解しないでくれ。美少年愛好者とかそういうわけじゃない。処刑されかけた彼をかわいそうに思って、つい助けてしまっただけだ。

 その結果、めでたく指名手配犯デビューをしてしまったのだ。
 あああああああああ。見つかったら、殺されるかもしれない。


 日が沈みかけた頃、騎士団を何とかまけた。
 空は、不気味な紫色に染まり始めていた。

「はあ、はあ、はあ……。何とかあいつらをまけた」

 壁に寄りかかって、息を整える。心臓は壊れてしまいそうなくらいバクバクと大きな音を立てていた。
 エリュシオンは、お腹を空かせて待っているだろう。早く戻らないと……。
 再びパンを購入して、彼がいるはずの倉庫に戻る。
 重たい倉庫のドアを開けると、倉庫の隅っこで木箱の上に座っていた薄汚れた少年が僕の気配に気がついた。少年は、ゆっくりと振り返り立ち上がる。

「エリュシオンお待たせ。お腹が空いただろう」 

 彼の名前は、エリュシオン・リジル。透き通るような銀色の髪に、アメジストの瞳をした妖精みたいに綺麗な少年である。確か13歳くらいだっただろうか。年齢の割には細く、小枝みたいな手足をしている。
 昨日と同じ薄汚れた灰色の服を着ている。早く新しい服も買ってあげないといけない。

「……」

 彼は、今にも死にそうな顔をしていた。そして、彼の瞳は、この世の終わりを思わせるくらい暗く染まっていた。

「そんな顔をして、どうしたんだよ」

 何故か彼の手には、白い剣が握られていた。剣の柄には、金の竜みたいな紋章が刻まれている。おかしいな。そんな立派なものは持っていなかったはずなのに、どこで手に入れたんだ。

 嫌な予感がして後ずさるが、遅かった。
 電光石火のようなスピードで彼が近づいてくる。

「どうして……」

 怯えながら彼を見るが、彼は止まろうとしなかった。
 ためらうことなく、ザクリと心臓を刺された。


「がはっ」


 口から血が流れる。
 苦しい。息ができない。
 身体が冷たい。
 視界が徐々に暗くなっていく。
 力尽きてその場に倒れていく。

 僕は、死ぬ……。

 なんてあっけない人生の終わりだろうか。
 いつか死ぬことはわかっていたけれども、こんな人生の終わりを迎えるなんて想像していなかった。
 こんなことなら、彼を助けなければよかった……。

 閉じていく視界の向こう側で、僕を殺した少年のアメジストの瞳が泣き出しそうに歪んだ気がした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

魔界最強に転生した社畜は、イケメン王子に奪い合われることになりました

タタミ
BL
ブラック企業に務める社畜・佐藤流嘉。 クリスマスも残業確定の非リア人生は、トラックの激突により突然終了する。 死後目覚めると、目の前で見目麗しい天使が微笑んでいた。 「ここは天国ではなく魔界です」 天使に会えたと喜んだのもつかの間、そこは天国などではなく魔法が当たり前にある世界・魔界だと知らされる。そして流嘉は、魔界に君臨する最強の支配者『至上様』に転生していたのだった。 「至上様、私に接吻を」 「あっ。ああ、接吻か……って、接吻!?なんだそれ、まさかキスですか!?」 何が起こっているのかわからないうちに、流嘉の前に現れたのは美しい4人の王子。この4王子にキスをして、結婚相手を選ばなければならないと言われて──!?

過労死転生した公務員、魔力がないだけで辺境に追放されたので、忠犬騎士と知識チートでざまぁしながら領地経営はじめます

水凪しおん
BL
過労死した元公務員の俺が転生したのは、魔法と剣が存在する異世界の、どうしようもない貧乏貴族の三男だった。 家族からは能無しと蔑まれ、与えられたのは「ゴミ捨て場」と揶揄される荒れ果てた辺境の領地。これは、事実上の追放だ。 絶望的な状況の中、俺に付き従ったのは、無口で無骨だが、その瞳に確かな忠誠を宿す一人の護衛騎士だけだった。 「大丈夫だ。俺がいる」 彼の言葉を胸に、俺は決意する。公務員として培った知識と経験、そして持ち前のしぶとさで、この最悪な領地を最高の楽園に変えてみせると。 これは、不遇な貴族と忠実な騎士が織りなす、絶望の淵から始まる領地改革ファンタジー。そして、固い絆で結ばれた二人が、やがて王国を揺るがす運命に立ち向かう物語。 無能と罵った家族に、見て見ぬふりをした者たちに、最高の「ざまぁ」をお見舞いしてやろうじゃないか!

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで

二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

処理中です...