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悪役転生
死
しおりを挟む「いたぞ。そっちだ」
「追え。逃がすなっ!!」
タレブの騎士団の声と足音が聞こえる。
いやああああああああああああああ。こっち来ないで!!誰か助けて!!
そう思いながら、必死で走り続ける。
「はあ、はあ、はあ……」
ぼたぼたと垂れてくる汗を拭う。早くどこかに隠れないと……。捕まったら、奴隷にされるだろう。植民地アームに送られるかもしれない。もしくは、殺されるかも……。ギロチンとかにかけられたら、どうしよう。
酒樽を飛び越え、狭い裏路地に入り込む。
「うわあっ」
ぶつかりそうになった中年男性の通行人を押しよけ、障害物を縫うように進んでいく。けれども、彼らはまだついてくる。
ちっ。
このままじゃつかまってしまう。
近くにある木箱を台にして、塀を飛び越えて目の前にある家に不法侵入する。
「きゃああああああああああっ!!!!侵入者よ!!!!」
飛び越えた先には、茶髪の女がいて箒の先を僕に向けてきた。
降りかぶってきた箒を掴んで放り投げ、そのまま庭を抜けて入口から違う路地に行き、そのまま更に走り続ける。
ここは、ロタン東部のタレブという都市である。ジキルは、そこでタレブの騎士団と逃亡を繰り広げている。
なぜかというと、美少年を誘拐して逃亡犯として指名手配されているからだ。彼を隠して1人で買い物をしているときに、見つかってしまって命がけの鬼ごっこが始まった。
誤解しないでくれ。美少年愛好者とかそういうわけじゃない。処刑されかけた彼をかわいそうに思って、つい助けてしまっただけだ。
その結果、めでたく指名手配犯デビューをしてしまったのだ。
あああああああああ。見つかったら、殺されるかもしれない。
日が沈みかけた頃、騎士団を何とかまけた。
空は、不気味な紫色に染まり始めていた。
「はあ、はあ、はあ……。何とかあいつらをまけた」
壁に寄りかかって、息を整える。心臓は壊れてしまいそうなくらいバクバクと大きな音を立てていた。
エリュシオンは、お腹を空かせて待っているだろう。早く戻らないと……。
再びパンを購入して、彼がいるはずの倉庫に戻る。
重たい倉庫のドアを開けると、倉庫の隅っこで木箱の上に座っていた薄汚れた少年が僕の気配に気がついた。少年は、ゆっくりと振り返り立ち上がる。
「エリュシオンお待たせ。お腹が空いただろう」
彼の名前は、エリュシオン・リジル。透き通るような銀色の髪に、アメジストの瞳をした妖精みたいに綺麗な少年である。確か13歳くらいだっただろうか。年齢の割には細く、小枝みたいな手足をしている。
昨日と同じ薄汚れた灰色の服を着ている。早く新しい服も買ってあげないといけない。
「……」
彼は、今にも死にそうな顔をしていた。そして、彼の瞳は、この世の終わりを思わせるくらい暗く染まっていた。
「そんな顔をして、どうしたんだよ」
何故か彼の手には、白い剣が握られていた。剣の柄には、金の竜みたいな紋章が刻まれている。おかしいな。そんな立派なものは持っていなかったはずなのに、どこで手に入れたんだ。
嫌な予感がして後ずさるが、遅かった。
電光石火のようなスピードで彼が近づいてくる。
「どうして……」
怯えながら彼を見るが、彼は止まろうとしなかった。
ためらうことなく、ザクリと心臓を刺された。
「がはっ」
口から血が流れる。
苦しい。息ができない。
身体が冷たい。
視界が徐々に暗くなっていく。
力尽きてその場に倒れていく。
僕は、死ぬ……。
なんてあっけない人生の終わりだろうか。
いつか死ぬことはわかっていたけれども、こんな人生の終わりを迎えるなんて想像していなかった。
こんなことなら、彼を助けなければよかった……。
閉じていく視界の向こう側で、僕を殺した少年のアメジストの瞳が泣き出しそうに歪んだ気がした。
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