支配の王冠~余命一年の悪役転生から始まるバトルロワイアル~

夜刀神さつき

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ロタン

エリュシオンとギャレット  エリュシオン視点

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 夜になると、エリュシオンは、ハデスを宿屋で休ませた後、ギャレットと共に、ロタンの中心部にある鶏の唐揚げが有名である居酒屋オアシスを訪れた。ここは、ギャレットのお気に入りの店で、看板娘のタチアナも彼のお気に入りの一人らしい。

「じゃあ、お前との再会を祈って乾杯!!!」

 まずは、二人とも生ビールで乾杯をした。

「俺は、お前に会いたくなかったけれど」
「またまた~。照れちゃって。でも、ルキフェルがカラス城を襲撃した時はもうダメかと思ったよ」

「ふん。ルキフェルもお前に比べたら生ぬるいな」

「え、え、えっと……何のことだっけ?」

「毒ガスを充満させて、銃を乱射して、部屋に火を放ったっけ?それでよく親友だなんて名乗れるよな」

「それで生きているお前って本当にすごいよ。さすが俺の親友だな」

「……ただの情報共有者が調子に乗るな」

 エリュシオンは、必要に応じて欲しい情報をギャレットから買っていた。ギャレットは、殺し屋でもあるが、超一流の情報屋でもある。しかし、彼の情報は高い。どう考えても、ぼったくりだ。ターゲットの情報に、半月分の給料を請求されたこともある。

「いやいや、俺の親友はお前だけだと決めているから」

「お前みたいなクズとこの俺が親友だと?笑わせるな」

「またまた、照れちゃって……。お前、本当にかわいげがないよな」

 本当にこの男は人の神経を逆なですることがうますぎる。

「ああ、そうだ。お前の母親についての情報も分かったぜ」

「興味ない」

「まあ、いいから聞いとけって。何かの役に立つかもしれないから」

 そうギャレットは、他の人間に聞こえないようにエリュシオンの耳元に近づけて「……の娘らしいな」と囁いた。
 それを聞いたエリュシオンは、苦虫を嚙み潰したような顔になった。

「どうせそんなことだと思ったよ」

 生まれた感情を誤魔化すように、生ビールを喉の奥に流し込む。

「お待たせしました。ハイボールです」

 黒縁メガネの地味な従業員がハイボール2杯を机に置いてきた。

「え?そんなもの頼んでいないんだけど」
「ご、ごめんなさい」

 男は、焦ったように謝った。

「あらあら、リタまたやったの!!このバカ者が!!!うちの定員がご迷惑をおかけして申し訳ありません。これからは別のものに対応させます」

 女将さんも出てきて焦ったように謝った。
 ハイボールはすぐにひっこめられたが、妙な違和感は消えなかった。

「なあ、お前、さっきのリタと呼ばれていた男を知っているか。何故か見覚えがある気がして」
「さあ。ただの何のオーラもないどんくさい男にしか見えなかったが……」
「そうか」

 さっきの彼の瞳のせいだろうか。ヘーゼルアイ……。どこかで見た気がするが、わからない。どこだろうか……。
 必死で考えていると、お酒を一気に飲み干したギャレットは、エリュシオンに絡みだした。

「それにしても、お前……ひどいな。俺と似たような欠陥品だと思っていたのに……。あんなにかわいい彼女と駆け落ちだなんて」

「勝手に仲間にするな。クズはお前だけだろう」

「何でお前だけ変わったんだよ。恋人ができて、守る理由ができて、一人じゃなくなってずるいじゃないか」

「俺は……」

「なあ、ハデザベスを俺にくれないか」

 口説くように甘えた声でギャレットは、とんでもないことを言ってきた。

「殺されたいのか」

「……冗談だよ。ただお前が羨ましいんだよ。ハデザベスは、強くて死ななさそうで」

「いや……。俺は、あいつから目を離せないよ」

「お前……。かわいいな……」

 ふっと笑われ、わしゃわしゃと髪を撫でられぐちゃぐちゃにされた。ああ。これだから、酔っ払いは嫌いだ。

「そういえば、お前に教えてほしいことがある。ナサニエルという何でも病気を治せる少年を知っているか」

 そう尋ねると、ギャレットは一瞬で真面目な顔つきになって声をひそめた。

「どこでその話を聞いたんだ?」

「まあ、どうでもいいだろう。ハデ……ハデザベスが知りたがっているんだ。教えてくれ」

「お前がここの支払いをしてくれるなら教えてやろう」

「……わかった」

「おねーさん、焼酎2本!」

 ギャレットは、美女に向かって話しかける。

「はーい!!」

 美女は、気持ちいい返事をして厨房にむかっていく。

「ちょっと待った。俺は、明日、大会に参加する予定だから、あまり飲みたくない」

「そう冷たいことを言うなって。いろいろ教えてあげるから付き合えよ」

 そうして、届けられた焼酎で乾杯をしてから、ギャレットは話し出した。

「ナサニエルは、本名はヨシュカ・グンフィエズルという光の魔術師だ。幼い頃に、治療能力のため親に売られ、コピック・オズモールの家で暮らしていたが、隙を見て逃走した。懸賞金がかけられ、ミゲル・クリューサーオールが目撃情報をもとに見つけたらしい」

「ナサニエルという名前は、どこでつけられたんだ?」

「恐らく逃走中にそう名乗っていたんだろう。赤の騎士団員の家でかくまわれていたという話だ」

「そのかくまっていた騎士団員って……」

「ジ……ジジじゃなくて誰だっけな」

「ジキル。ジキル・ヴェンデッタじゃないか」

 興奮のあまり、ギャレットの肩をガシッとつかむ。

「ああ、そうだ。お前の王子様じゃないか」

「……それで二人はどうなったんだ?」

「ミゲルは、今度は、彼をセレネーに売ったらしい。だけど、その後に、ルキフェルが彼を手に入れたという情報が手に入った。どういう手段を使ったのかは不明だ」

「ルキフェルはどうして彼を手に入れたいんだ?」

「さあ。光の魔術師がいると便利だからじゃないか。どんな病気でも治せるし」

 ヨシュカをナサニエルと呼ぶハデス。そして、ナサニエルと名乗っていた期間、彼は、ジキルにかくまわれていた。

 ハデスは、ジキルじゃないか。
 心臓がドクリ、ドクリ、ドクリと音を立て早鐘みたいに鳴り響く。
 指先がブルブルと震える。
 そうだ。ずっと前から、違和感があった。
 まるでハデスがジキルみたいだと。
 あの日から、ハデスは変わってしまった。そして、ジキルみたいなことを言って、ジキルみたいに瞳をきらめかせるようになった。

 そして……そんなハデスに俺は……。

「しかし、恋人の身辺調査をこっそりとするなんて、お前もむっつりすけべだな」

「黙れ。そういえば、お前こそアイラとはどうなった?」

 アイラは、ギャレットのお気に入りの娼館で働く女である。

「いいようにあしらわられているだけさ。だけど……その関係が楽だ」

 気に入ったら女を口説きまくるくせに、ちゃんと守れる保証がないから本気で彼女や妻が欲しいわけではない。
 こいつは、最低最悪のろくでなしだ。だけど、傷つけて傷ついてばかりいるかわいそうな奴だ。

「アイラといえば、お願いされていたことがあったな……。バカな女だよ。ああ、むしゃくしゃする。おねーさん、テキーラ!!二人分!」

 今夜は遅くなると思いながら、エリュシオンも酒を飲み続けた。
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